93-15 迎撃、そして
『賊が襲ってくる』。
老君は『覗き見望遠鏡』でいち早くそれを感知し、礼子に知らせていたのである。
礼子がそばにいて、『ランド』隊5体、『職人』5体、そしてホープと『ハリケーン改』。
しかも老君が『覗き見望遠鏡』で仁を見守っており、その仁の腕には新『仲間の腕輪』が。
であるから老君は仁の安全については心配していない。
ただ、せっかく掘り出した『ピスティ』を壊されたり奪われたりすることだけは避けたかったのである。
「賊だと! ……レーコ卿、それは誠ですか!?」
「ええ。麓から10人、山上から10人。全員馬に乗っており、そこにゴーレムが3体ずつ加わっています。飛び道具は持っておらず、剣か槍を手にしています。そして『風力式浮揚機』らしき機影も1つ、上空100メートルに見えます」
「目的はわかるか、礼子?」
「おそらく、掘り出したゴーレムの強奪かと」
「何のためだろうな……」
「解析して技術を横取りするつもりではないでしょうか」
「そうか」
「ジン殿、我らは迎え撃つが、貴殿はどうする!?」
「加勢しますよ」
目的が掘り出したゴーレムなら、『ピスティ』もその対象だろうから、仁としては迎撃するつもりだ。
それ以上に、最近各国に出没するという賊に対し、いろいろと問いただしたいことがあったのだ。
この賊がそれらと同じとは限らないが、何らかの情報が得られるのではないか、と仁は考えていた。
* * *
老君が礼子に連絡をしてから4分後、フラット鉱山に駐屯していたトヴェス州領主、エラルド・ド・セネカ・アルベルティ侯爵の配下20名も賊の接近に気が付いた。
「賊と思われる一団が上方より接近中!」
「麓からも来ている その数、およそ10!」
「ゴーレムがいる! 注意せよ!!」
陣中が慌ただしくなり、軽鎧を着け兜を被り、盾を腕に装着し、馬に乗ってショートソードを佩いて整列すれば、賊の一団はもう目の前。
賊なのかそうでないのか、攻撃すべきかすべきでないのか、その判断を下すべき隊長の判断が遅れたのがまずかった。
「止まれ! 止まらなければ賊と見なし、討伐対象とする!」
と命令しても賊は止まることはない。
山の上からの10人の方が若干早く侯爵の兵と激突……しなかった。
「ぐわあああ!」
「!?」
山の上からの賊を迎え撃ったのは『ランド111』以下5体。
元々、一般とは隔絶した性能だった『ランド隊』だが、それが先日、さらに500倍の性能となったのである。
賊の10名にゴーレム3体が加わろうと敵ではなかった。
かなりの速度で接近してきた彼らは、そのまま『ランド113』1体が展開した『物理障壁』に激突したのである。
馬ごと横転し、当然落馬、全身を強く打ち、気を失う者がほとんど。
気絶しなかった者も3人いたが、脚か腕を骨折したようで、戦闘不能となっていた。
しかし、3体のゴーレムはそうではなかった。
激突して転倒はしたが、すぐに立ち上がって『物理障壁』に攻撃を加える。
手にしているのは槍の穂先が付いた槌である。
が、『ランド113』が張った『物理障壁』は揺らぎもしない。
3度槌を振り下ろし、4度目に振り上げた時、『ランド112』『ランド114』『ランド115』が飛び出し、3体を取り押さえた。
* * *
麓方面から駆け上がってくる10騎の賊と、並走する3体のゴーレム。
下りと上りの差か、5秒ほどのズレで侯爵兵と激突……ではなく、こちらも『職人』5体と接触……否、接触できずに『穴』に落ちた。
『掘削』によって瞬時に穿たれた落とし穴である。
深さ5メートル、横20メートル、縦5メートルの大穴だ。
10騎の賊は馬もろとも穴に落下。
ゴーレムも2体はそのまま落下したが、一番後方を走っていた1体だけはジャンプして穴を飛び越えた。
……が。
「落ちなさい」
『職人211』が、穴を飛び越えようとしていた賊ゴーレム目掛け、工学魔法『圧力風』を放ったのである。
本来は作業場や作品のゴミや埃などを吹き飛ばす時に用いる工学魔法であるが、100倍に強化された『職人』が使えば、1パーセントほどの出力でも台風並みの威力が出る。
3体目のゴーレムもまた、穴の中へと落下したのである。
10頭の馬と10人の賊は穴の中でもがいていたが、3体のゴーレムはほとんどダメージらしいダメージを受けてはおらず、這い上がろうとしていた。
穴の底は人と馬がひしめいていて、さすがに彼らを踏みつけてのジャンプはできないようだ。
行動が制限されているゴーレムは扱いやすい。
『職人』5体は、賊ゴーレム3体を楽々取り押さえたのである。
* * *
「おお……」
「これが『魔法工学師』のゴーレムか……」
「凄まじい性能だな……」
「あ、あの取り押さえ方は!?」
「工学魔法で手足を『変形』させて動かなくしているようだな」
「知っているのか、ライボン!?」
『ランド』や『職人』たちの活躍を目の当たりにした侯爵の兵たちは驚異の念を覚えていた。
* * *
だが、まだ終わりではない。
上空100メートルに『風力式浮揚機』が1機飛んでいるのだ。
それは、地上の様子を確認すると、高度を上げつつ北へと向かって飛び始めた。
『おそらく拠点へ帰るのでしょうね』
だが、それは老君が『覗き見望遠鏡』で追跡していることを知らない……。
* * *
仁はエラルド・ド・セネカ・アルベルティ侯爵に絶賛されていた。
奇襲を受けたにも関わらず、自軍は全くの無傷で賊20名を生け捕りにしたのだから。
「ジン殿、お見事だった」
「『風力式浮揚機』は取り逃がしてしまいましたが」
「いや、捕らえた賊を尋問すれば拠点の情報も得られるであろう」
「そうですね。……自分は一旦戻りますので、賊の情報は『アヴァロン』へお送りください」
「承知した。『世界警備隊』宛に送るとしよう」
「お願い致します」
そして仁は『ピスティ』を『ハリケーン改』に積み込んだ。
そして捕らえた賊ゴーレムも2体、『アヴァロン』で解析するからと侯爵に断って積み込む。
こちらの解析結果は出次第『世界会議』を通じて各国に連絡すると約束して。
そして現地時間午後5時10分、『ハリケーン改』は『アヴァロン』へ向けて飛び立ったのである。
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本日6月8日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
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20230608 修正
(誤)そして現地時間午後5時10分、『ハリケーン改』は『アヴァロン』向けて飛び立ったのである。
(正)そして現地時間午後5時10分、『ハリケーン改』は『アヴァロン』へ向けて飛び立ったのである。
20230608 修正
(誤)元々、一般とは隔絶した性能だった『ランド隊』だが、それが先日、さらに100倍の性能となったのである。
(正)元々、一般とは隔絶した性能だった『ランド隊』だが、それが先日、さらに500倍の性能となったのである。
20230610 修正
(誤)奇襲を受けたにも関わらず、全くの無傷で賊20名を生け捕りにしたのだから。
(正)奇襲を受けたにも関わらず、自軍は全くの無傷で賊20名を生け捕りにしたのだから。




