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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
93 アヴァロン改革篇
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93-14 掘り出し

 時刻はもう午後4時を回っているが、仁は構わず作業を続ける。


「老君、このまま掘り出して行って大丈夫だな?」

『はい、御主人様(マイロード)。『ピスティ』はほぼ最下層に埋もれていますので、むしろ掘り出す必要があります』

「やはりな……」


 仁は縦坑をちらと見た。

 そこからは岩塊が文字どおり『飛び出して』きている。


 縦坑内には2体の『ランド』が入っており、溜まった瓦礫を『重力魔法』を使って外へ放り出しているのだ。

 それを、外で待ち構えていた3体の『ランド』が『力の長杖(フォースロッド)』を使って受け取り、少し離れた場所に積み重ねていく。

 『職人(スミス)』3体が縦坑の壁面を固着させ、強化して崩落を防ぐ。


 これを繰り返し、縦坑を掘り返しながら下りていくわけだ。

 ちなみに残った『職人(スミス)』2体は、既に掘り出された縦坑350メートル分の側壁強化を担当している。


「よし、これで半分だな」


 2分ほどの作業で、中継点までの再整備は完了した。

 先日、ランド隊は500倍、職人(スミス)は100倍の性能アップが行われたわけだが、全力には程遠い出力……それぞれ0.1パーセントと0.5パーセントでこれである……。


 リフト(エレベーター)も再稼働。ワイヤー部分は仁が点検し、『強靱化(タフン)』を掛けてある。


 とはいえ『ランド』も『職人(スミス)』も『力場発生器フォースジェネレーター』で縦坑を移動しているのだが。


「中継点に犠牲者はいないな。事前調査どおりだ。ゴーレムの残骸は回収しておいてやろう」


 作業者を守った2体のゴーレム。

 防水シートを広げ、その上に横たえさせた仁はまず目視確認をする。

 大破してはいるが、かろうじて原型が保たれていた。


「……『分析(アナライズ)』」


 目視の次に、仁は運び出されてきた2体をざっと解析。


「『アヴァロン』製だな」


 構造と使われている素材から、仁はそう判断した。

 とはいえ、現在の所有者はエリアス王国の誰かであろうから、勝手に持ち帰るわけにはいかないだろうと、簡易担架に乗せておくにとどめた。


 そして、仁が2体を見ていた間に、縦坑はさらに200メートル……計600メートル掘り下げられていた。


「底にはゴーレム4体と『ピスティ』があるわけだな……」


 今の発掘速度は1分で60メートル。1秒で1メートル進んでいるという超高速だ。

 これも、とりあえずの発掘がなされていたからな、と仁は思っている……が、実際にはパワーアップの賜物である。


 そして。


「おお、出てきたか」


 最後の岩塊が取り除かれ、大破したゴーレム5体が見つかった。

 とりあえず、全部を地上へ運び上げさせた。

 そしてシート上に並べていく。


「これが『ピスティ』か」


 5体とも原型を留めないほど破損しており、素人が見たらどれがどうなのか判別できそうもない……が、仁は違った。


「この腕はこいつ、この脚はこいつのだな」


 きっちりと分類できている。

 ちぎれた腕、脚も間違えない。

 そして『ピスティ』。


「うーむ……破損が酷いな……だが『制御核(コントロールコア)』は奇跡的に破損が少ない」


 『少ない』だけで、破損していないわけではない。肝心な『魔結晶(マギクリスタル)』に、ほんの僅かだが『欠け』が見られたのだ。

 とはいえ、欠けは表面だけで、内部の記憶領域に及んではいないようなので、データは9割方無事と思われる。


「一応バックアップを取っておくか」


 目には見えなくとも、分子構造レベルで破損している可能性もあるからだ。

 仁は急ぎ『魔結晶(マギクリスタル)』を取り寄せ、バックアップを行った。


「『知識転写(トランスインフォ)』……これでよし」


 バックアップを取った『魔結晶(マギクリスタル)』は蓬莱島に送り、破損したデータがないか、また、そうしたデータの修復は可能か、を老君にチェックをさせる。


「頼むぞ、老君」

『はい、御主人様(マイロード)。お任せください』


 『ハリケーン改』の小型転移門(ワープゲート)で送り出して30秒後、『転送機』を使ってその『魔結晶(マギクリスタル)』が送り返されてきた。


御主人様(マイロード)、データ保持率99.4パーセントです。7.5パーセントのデータが破損しており、6.9パーセントのデータを修復した結果です』

「早かったな」

『これも、御主人様(マイロード)に改良していただいたおかげです』


 従来の何百倍もの処理能力を持った老君の作業は速く確実であった。


*   *   *


「これでよし」


 『ピスティ』以下、大破した6体のゴーレムの部品を仕分けし終えた仁は、帰り支度を始めた。

 現地時間で午後4時35分、作業時間は実質15分に満たない。

 驚異的な作業速度であった。


 そしてトヴェス州領主、エラルド・ド・セネカ・アルベルティ侯爵との約束どおり面会を申し込む。

 ……その直前に、老君から礼子に何やら連絡が入ったことに仁は気が付いた。

 が、おりしく侯爵との面会が始まってしまったのである。


*   *   *


「ジン殿、もう作業が終わったのか!?」


 驚いた顔で侯爵が尋ねた。


「ええ、終わりましたよ」

「30……いや、20分足らずでか……さ、さすが『魔法工学師マギクラフト・マイスター』であるな」

「ええ、全力を尽くさせていただきました」

「それに関しては素直に礼を言おう。感謝する、ジン殿」

「いえいえ。……で、壊れたゴーレムも掘り出して、分類してありますから、直すにせよ廃棄するにせよ、使える部品や素材は生かせると思います」

「そこまでしてくれたのか、この短時間に……」

「できることをしただけです」

「いやいや、その『できること』というのが尋常ではない。まさに、脱帽である」


 そう言って侯爵は頭を下げたのだった。


「それで、借りたゴーレムも掘り出せたのだな?」

「はい」

「それはよかった。持ち主の方にも、私が謝っていた、と伝えてくれぬか?」

「間違いなく伝えます」

「慰謝料は州都に戻り次第、詫び状とともに送る、と伝えてくれ」

「承りました」


 これで重要な話は終わった。

 そのタイミングで、礼子が報告を行う。


「お父さま、閣下、賊が襲ってきます」

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20230607 修正

(誤)そしてシート状に並べていく。

(正)そしてシート上に並べていく。


 20230608 修正

(誤)先日100倍の性能アップが行われたわけだが、全力には程遠い出力……0.5パーセントでこれである……。

(正)先日、ランド隊は500倍、職人(スミス)は100倍の性能アップが行われたわけだが、全力には程遠い出力……それぞれ0.1パーセントと0.5パーセントでこれである……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「ええ、終わりましたよ」 >「30……いや、20分足らずでか……さ、さすが『魔法工学師マギクラフト・マイスター』であるな」 >「ええ、全力を尽くさせていただきました」 すごい! 主人公…
[一言] 「投稿者: すりっぱ」さんが指摘した侯爵の上から目線のセリフですけど、私には違和感を感じなかったのですけどね。 世界的に影響力を持つとはいえ仁は民間人なのだから、身分が絶対の王制の国の貴族…
[一言] 襲ってきた賊は、礼子嬢が返り討ち。
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