93-13 仁、出向く
ゴウのゴーレム『ピスティ』が埋もれてしまったエリアス王国西部の鉱山へ、仁は赴くことにした。
その前に情報収集だ。
まずは準備。情報収集である。
最高管理官トマックス・バートマン経由で、当時現場にいた『世界警備隊』の隊員から話を聞けることになった。
「ジュネ・リキタンスです。飛行隊副隊長を務めております。ジン殿と対面できて光栄です」
ジュネ・リキタンスは飛行隊ということで、やや小柄な軍人だった。
「さっそくですが、エリアス王国西部の鉱山の話をお伺いしたいのです」
「わかりました。あれは10月5日のことでした。西部のトヴェス州東部山岳地帯にある鉱山で、名称は『フラット鉱山』です」
「フラットヘッド山の近くですか?」
「そうです。フラットヘッド山はトヴェス州と南部のザウス州の州境にありますが、『フラット鉱山』はその北西、トヴェス州にある鉱山です」
「位置はわかりました」
「そこで発生したのが……」
……と、ジュネは仁に状況を説明してくれた。
「今現在、エリアス王国の工兵隊が出て、後始末を行っているはずです」
「わかりました」
仁は頷いた。
そして、まずはエリアス王国の上層部に断りを入れる必要があるな、とも。
* * *
「老君、この場合は国王かな?」
『いえ、御主人様。準緊急事態ということでトヴェス州の領主、エラルド・ド・セネカ・アルベルティ侯爵に、でよろしいでしょう』
「それでいいかな?」
『はい。国王には『世界警備隊』から断りを入れてもらえばよろしいかと』
「それでいくか」
何でもかんでも国王へ持っていくというわけにもいかないということで、州の最高責任者であるエラルド・ド・セネカ・アルベルティ侯爵に話をつけることにした仁である。
* * *
方針が決まれば、仁の行動は速い。
「よし、細かい検討は『ハリケーン改』の中でしよう」
と決め、後のことはエルザに託して『アヴァロン』を発った。
「老君、現地の様子は?」
『はい、御主人様。同じような事故が起きないよう、採掘は一時中断しています。そして他の縦坑の側壁の強化を行っています』
「崩壊した縦坑の掘り出しは?」
『しておりません』
「あそこには『ピスティ』だけでなく、6体のゴーレムが埋もれているはずだよな?」
『はい、御主人様』
「それを掘り出すのも後回しか?」
『そのようです』
「……なら、俺がやっても問題ないな」
『それは大丈夫でしょう』
「よし。……ランド5体と職人5体をこっちへ送ってくれ」
『承りました』
時を置かず、『ハリケーン改』にゴーレムが転送されてきた。
『ランド』111〜115と『職人』211〜215の10体だ。
「ご苦労。これからやるべきことはわかっているな?」
「はい、老君から聞いています」
「よし」
老君の手際のよさに満足しつつ、仁は『ハリケーン改』の中でこの先のやり方を考えていた。
そこに老君から連絡が入る。
『御主人様、朗報です。……トヴェス州領主、エラルド・ド・セネカ・アルベルティ侯爵は今現在現地に滞在中です』
「お、それはいい」
州都に寄り道する手間が省けた、と仁は喜んだ。
それで、心置きなく『フラット鉱山』を目指したのである。
* * *
「何!? 『魔法工学師』がここへ来る!?」
「はっ、御本人から連絡が入りました」
フラット鉱山へは、先触れとして『ランド111』を『タウベ改3』で派遣していた。
まだ通信による連絡が普及していないのでこういう方法になる。
「目的は……事故現場の検証であろうな」
「は、そう考えます」
「聞くところによると、ジン殿縁の者が所有するゴーレムが人命を救ってくれたとか」
「はっ。そしてそのゴーレムは坑道に埋もれてしまったそうであります」
「まったくもって遺憾であるな」
「御意」
「しかもその縁者というのは、ショウロ皇国伯爵家の嫡男だというではないか」
「そのとおりであります」
「まずは礼を尽くし、謝罪せんとな」
エラルド・ド・セネカ・アルベルティ侯爵は身支度を整え、仁の到着を待ったのである。
* * *
程なくして仁の『ハリケーン改』はフラット鉱山の平坦部に着陸した。
ちなみに今更だが、飛行船の場合は地面に接地することはほとんどない。
元々『浮く』機能があるため、地表スレスレに浮いた状態で係留索を使って飛行場に固定されるのだ。
なので強風時に流されて格納庫や他の飛行船にぶつかる事故には要注意である。
「ようこそ、『魔法工学師』ジン殿」
エラルド・ド・セネカ・アルベルティ侯爵自ら仁を出迎えた。
「いたみいります。本日来訪した目的は……」
「先触れから聞いておる。当方としては何の問題もない。むしろこちらの落ち度をフォローしていただけるなら大歓迎だ」
「ありがとうございます。それでは早速始めさせてもらいたいと思います」
「うむ。……ああジン殿、お帰りになるのも自由だが、帰る前にもう一度話をさせてもらえるかな?」
「わかりました、閣下」
場所が場所だけに、長々と話をしているわけにもいかず、エラルド・ド・セネカ・アルベルティ侯爵は仁との対談を打ち切った。
そして仁は、礼子と9体のゴーレムを引き連れ、崩落した縦坑へと向かったのである。
* * *
「お待ちしておりました」
先行した『ランド111』は、先に縦坑に行き、仁たちを待っていた。
これでランド隊5体が揃ったわけである。
「ここか……」
崩落した縦坑は、フラット鉱山の北の外れにあった。
周囲には取り除いた瓦礫が山と積まれていたが、まだまだ坑道内には岩塊が溜まっている。
なにしろ800メートルという深さなのだから。
「お父さま、危険ですから距離を取ってください。そして対物用の『物理障壁』も展開してください」
もちろんわたくしがお守りしますが、という礼子の言葉を素直に聞き、仁は縦坑から300メートルの距離を取り、『物理障壁』を展開した。
もちろん礼子はそばに付き従っている。
「よし、それでは始めよう。ランド、職人、頼むぞ」
「はい」
事前の打ち合わせに沿って、蓬莱島クオリティの作業が開始された……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20230606 修正
(誤)「さっそくですが、エリアス王国西部の鉱山の話を窺いたいんですが」
(正)「さっそくですが、エリアス王国西部の鉱山の話をお伺いしたいのです」
(誤)「お待ちして入りました」
(正)「お待ちしておりました」
20230608 修正
(旧)
「よし、早速始めよう。ランド、職人、頼むぞ」
(新)
「お父さま、危険ですから距離を取ってください。そして対物用の『物理障壁』も展開してください」
もちろんわたくしがお守りしますが、という礼子の言葉を素直に聞き、仁は縦坑から300メートルの距離を取り、『物理障壁』を展開した。
もちろん礼子はそばに付き従っている。
「よし、それでは始めよう。ランド、職人、頼むぞ」




