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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
93 アヴァロン改革篇
3691/4353

93-12 裏方として

 さて、ゴウとルビーナは、固まったスペックを踏まえ、助手ゴーレムを作り始めた。

 彼ら専用、ということで、位置づけは蓬莱島の『職人(スミス)』といったところだろう。

 仁からの助言により、彼らが作った『設計基(テンプレート)』は一般公開されることになる。

 つまり、誰でも同じものを作ることができるのだ。


 こうすることで『私物』として助手ゴーレムを作る許可が出やすくなる。

 そして、ゴウとルビーナにも恩恵がある。

 『設計基(テンプレート)』の公開によって、幾ばくかではあるが『見返り』もあるのだ。

 今回、それは『素材』となる。

 要は助手ゴーレムを作るための軽銀を格安で購入できるということである。


「そういう意味では助かるわよね」

「うん」

「ジン様もレア素材を分けてくれたし」


 軽銀を64軽銀にするためのアルミニウムとバナジウムは仁がくれたものだ。

 その他に、高品質な『魔結晶(マギクリスタル)』もくれた。

 これらを使えば、同じ『設計基(テンプレート)』で作っても、別格の性能のゴーレムとなるだろう。

 私物扱いなのでルール違反ではない。


「あとはあたしたちの腕次第ね」

「頑張るぞ」


 そんなゴウとルビーナの様子を確認した仁は、一旦第5工房を後にしたのである。


*   *   *


 エルザとリシアが打ち合わせを行っている小会議室に、仁は顔を出した。礼子も一緒である。


「どんな具合だ?」

「あ、ジン兄。……ん、打ち合わせはまあまあ順調」

「ジンさんの方はいかがですか?」

「ゴウとルビーナの方は当分心配はなさそうだな」

「それはよかった」

「で、こっちは?」

「それが……」


 リシアが語ったのは、『アカデミー』における医療教育の実態である。


「公衆衛生に関しては、ほぼ守られてます」


 手洗い、うがいの徹底や、殺菌消毒の概念は根付いている、とリシアは言った。


「ですが、その先が問題でして」

「問題?」

「はい。まず第一に、今の体制では『引き抜き』が簡単にできてしまうこと」

「ああ、そうだな」


 今『アヴァロン』全体を見て『治癒師(ドクトル)』や『治癒士(アルツト)』が不足しているのは、そこそこ育った者が『引き抜き』にあっているからである。

 それというのも、『アヴァロン』の影響力と言うか信用と言うか、権威が低下している……といえばいいか……。


「まあとにかく、『世界会議』参加国に詰め寄られたら断りきれない、ということか?」

「そう、ジンさんのいうとおりです」

「なるほどな……それは少々問題だな……」


 おそらくは『魔法連盟』の事件を通じ、『アヴァロン』というよりも『アカデミー』の権威が失墜しているのだろうと仁は考えた。


「ならば、有名な講師を呼んで、特別講義をさせることも考えたらいいかもしれないな」

「あ、それ、いいですね。ジンさん、是非お願い致します」

「俺!?」


 リシアに請われて仁は面食らった。

 そんな仁に、エルザが少し呆れ顔で言う。


「ジン兄、『3代目魔法工学師マギクラフト・マイスター』以上に適任は、いない」

「そうですよ、ジンさん」

「それはそうか……うん、やるよ」


 言い出したのは自分であるから、無下むげに断るわけにもいかず、仁は渋々ながら承知した。


「他にも何人か講義をさせたいな……」

「『ファミリー』から誰か、呼ぶ?」

「それはいいな。……誰が適任だろう?」

「こういうところで、とすると、ビーナ、マルシア、ロドリゴさん、ロロナさん、ハンナちゃん、サキ姉あたり?」

「まあ全員は無理にしても、何人かには講義してもらいたいな」

「ん」


 仁とエルザ、リシアらは誰に頼むか相談した。


「明日か明後日には『クラフトクイーン工房』がこっちに来るらしいから、ビーナを呼ぼうか。講師としてじゃなく、純粋に、自分の作った工房がどうなっているのか興味あるだろうから」

「ん、それはいいと、思う」

「よし。……あと、ロロナさんに農学の講義をしてもらう、というのは?」

「アリだと思います。ロロナさんは世界的に有名ですから」

「だよな。他に誰か呼べそうな人はいないかな?」


 『仁ファミリー』のメンバーはほとんどがヘールで隠遁生活を送っているのでこの時代では知名度が低い。


「それがこんなところで問題になるとは思わなかったなあ……」

「工学系の技術力の高さは、広く認められていますけど……」

「医療系が、今ひとつ」

「だよなあ。……そういえば、去年だったか? エルザが特訓した、フランツ王国の治癒士(アルツト)見習い……」

「ナージャス?」

「ああ、そうそう。……彼女はどうしてる?」

「引き抜きが掛かったけど、断って残っている、らしい」

「そっか、ならいずれ会えるな」

「うん」


 ナージャス・カーン。

 フランツ王国のカーン子爵家4女で、妾腹のため継承権がなく、『ド』を付けることを許されていない。

 本来ならナージャス・ド・カーン子爵令嬢、となるはずだが、実家で疎まれているため、『アヴァロン』の『アカデミー』で『治癒士(アルツト)』になるため学んでいる。

 そのような出自からも、国に帰ることを拒んだと推測される。


「あとは、落盤の半日前にショウロ皇国南海上で起きた船舶事故と、1日前にセルロア王国東部で起きた飛行船の墜落事故が気になる」

「ん、間隔が短すぎる」

「エルザもそう思うか」

「本当ですね。その後は事故の話がないあたり、偶然で片付けるにはちょっと無理がある気もします」


 ここで礼子が発言。


「お父さま、その件は第5列(クインタ)が調査中とのことです」

「お、そうか。老君は手を打っていたんだな」

「はい」


 その調査結果が出るまでは、この話題は保留となった。


*   *   *


「……やっぱり気になるのはピスティ」

「うん……ゴウのトラウマをえぐりそうだからな」


 ゴウの両親は、土砂崩れに巻き込まれで亡くなった。

 その時に、ゴウ一家……アガート家に仕えていた自動人形(オートマタ)が『アミィ78』。

 『アミィ78』は辛うじてゴウを守ったが、ゴウの両親は守りきれなかったのだ。

 そのアミィ78もまた事故で深刻なダメージを受けており、ゴウをオノゴロ島へ連れ帰った後、機能停止してしまったのだ。


「その土砂崩れの起きたのもエリアス王国だったな。偶然の一致だろうけれど」

「ん」


「……これから行ってみるか……エルザとリシアはこっちに残ってくれるか?」

「ん、そのつもり」

「頼む」


 という風に話がまとまり、仁はエリアス王国西部の事故現場へおもむくことになったのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20230605 修正

(誤)「それがこんなところで問題になるは思わなかったなあ……」

(正)「それがこんなところで問題になるとは思わなかったなあ……」

(誤)「工学系の技術料の高さは、広く認められていますけど……」

(正)「工学系の技術力の高さは、広く認められていますけど……」

(誤)その時に、ゴウ一家……アガート家に仕えていたゴーレムが『アミィ78』。

(正)その時に、ゴウ一家……アガート家に仕えていた自動人形(オートマタ)が『アミィ78』。

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[良い点] >「だよなあ。……そういえば、去年だったか? エルザが特訓した、フランツ王国の治癒士アルツト見習い……」 >「ナージャス?」 >「ああ、そうそう。……彼女はどうしてる?」 >「引き抜きが掛…
[良い点] >「あ、それ、いいですね。ジンさん、是非お願い致します」 これほど適任な言い出しっぺも早々……。 [気になる点] >『アヴァロン』の影響力と言うか信用と言うか、権威が低下している 仁「『坊…
[一言] >>蓬莱島の『職人』といったところ ハ「とは言えその性能は月とすっぽん所では・・・・」 エ「人と亜神くらい?」 >>顔を出した ハ「そして顔の無くなった本体は・・・・」 胃「!?」死~ん …
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