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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
93 アヴァロン改革篇
3687/4357

93-08 聴講

 『ピスティ』がなぜ戻ってこなかったか、その説明は終わった。


「そうだったのか……。怪我人を救助し、その際に……」

「はい」

「残念だったな……」


 かつて『アミィ78』が遭遇した事故と状況が被るため、仁も掛ける言葉が咄嗟とっさには出てこなかった。


「戻ってきた『世界警備隊』の方たちからは丁寧な謝罪と感謝をもらいました」

「それが筋だものな」

「エリアス王国からは近いうちに慰謝料を貰えるそうです」

「近いうち、か。まあ、事故直後だとすぐには無理だろうからな……」

「そして、崩落した縦坑はこのまま放置するということも聞きました」

「そうか。今更再開発するだけの価値はないと判断したんだな」

「そうらしいです」


 つまり、おそらくは地下800メートルで瓦礫に埋もれている『ピスティ』はこのまま、ということだ。

 素材的に言っても、『ピスティ』が無事な可能性は限りなく0に近い。


「……ゴウ、『ピスティ』はよくやったよ」

「はい……」

「ん、誉めてあげたい」

「ありがとうございます」


 仁もエルザもリシアも、ありきたりの言葉しか掛けることができなかった……。


*   *   *


 仁たちはいつもの客室に泊まった。


 そして仁はエルザと現状での問題点を話し合っている。


「一番の問題は、まだまだ実用的なゴーレムが足りないこと」


 エルザが持論を述べる。


「そうだな。だからゴウとルビーナにゴーレム製作の依頼が来るんだろうな」


 仁も現状をそう分析した。


「……でも、単純にゴーレムを増やせばいい、というわけでは、ないみたい」

「え?」

「人によっては、ゴーレムに教わることに抵抗がある人も、いる」


 エルザは昼間聞いた話を仁にも説明した。


「なるほどな……共感はできないが、そういう人もいることはわかる気がする。偏見を持つな、と言ってやりたいが」

「同感。なら教科書も読むな、って」

「はは、本は人間じゃないもんな」

「……ジン兄なら、人間そっくりの自動人形(オートマタ)を作れるから、1つの解決にはなると、思う」

「それはできるな。現にアーノルトがそうだし」

「それは最終手段ということで、まずは10人ほどいるという研究生を一人前に育てて、今度は指導する側にしたい」

「そうだな。……『知識転写(トランスインフォ)』……いや、『知識送信(センドインフォ)』を使うか?」

「必要そうなら。でもまずは実際に講義をしてみないと」

「わかった」


 エルザの言い分はよく分かるので、仁は頷いた。

 そのエルザが、今度は仁に質問する。


「『ピスティ』はどうするの?」

「普通ならこのまま瓦礫に埋もれたままだが……」


 だが、仁は『魔法工学師マギクラフト・マイスター』である。

 他の誰にもできないことを可能にする。それが仁、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』なのだ。


「折を見て掘り出すよ。ゴウのためにも」

「ん、そうしてあげて」


 それからはリシアの話になる。


「どうかな? 明日からやっていけそうかな?」

「ん、明日はお披露目の講義みたいなものだから、その出来次第だと思う」

「リシアなら大丈夫さ」

「ん、そう思う」


 『アヴァロン』の夜は静かに更けていく……。


*   *   *


「うう、明日のことが気になって眠れません……」


 リシアは寝床でゴロゴロしていた。


 まあ、人造人間(ホムンクルス)なので眠らなくても体調に影響がないのが救いである……。


*   *   *


 明けて10月12日。


「おはよう」

「おはようございます」

「よく眠れた?」

「それが、全然……」

「ありゃ」


 そんな会話をしつつ、仁、エルザ、リシアは朝食を済ませた。


「今日は挨拶代わりの講義だって?」

「はい。午前と午後、2回やります」


 内容は同じだという。


「それじゃあ午前の部、ゴウとルビーナにも声を掛けて聞きに行くよ」

「えっ……」

「何だよ、その顔」

「い、いえ、ジンさんが聞きに来てくれると思わなかったので驚いて緊張して」

「今更だろ」

「そうなんですけど……」

「大丈夫。リシアさんなら、ちゃんと、やれる」

「ほら、エルザもこう言ってるし。……何時からだ?」

「10時と15時から、1時間を予定してます。場所は中会議室です」

「わかった」


 中会議室の最大定員は100名。通常は50名用だ。

 大会議室は最大定員が300名と多すぎ、小会議室は20名なので小さすぎると判断されたようである。


*   *   *


「というわけだから、10時前に中会議室へ行くぞ」

「はい!」

「はーい」


 第5工房へ顔を出した仁は、ゴウとルビーナに説明した。


「医療に関する基礎知識は持っていて損はない。自分や他人、拡大解釈すれば世の中の役に立つからな」

「はい!」

「まだまだゴウもルビーナも、いろいろな知識と経験を蓄える時期だ。それがどんな場面で役立つかわからないからな」

「わかりました」

「よし。時間までは『助手ゴーレム』の詳細を詰めていこう」

「はい」


 講義開始時間までの2時間弱、ゴウとルビーナは仁の指導の下、『助手ゴーレム』の詳細仕様を煮詰めていくのだった。


*   *   *


 午前9時50分。

 仁、ゴウ、ルビーナ、礼子らは中会議室にやって来ていた。


「思ったより人がいるなあ」

「座れてよかったですね」

「補助席は座り心地が悪いものね」


 通常定員の50名を超え、70名ほどが講義を聞きに来ていた。

 通常定員超えの20名は補助席である。


 また、通常定員の前にはテーブルがあるが、補助席にはテーブルがない。

 そのためテキストを読んだりノートを取ったりするにはやや不便である。


「でも、今年から補助席がよくなったんだよ」

「え?」


 ゴウの説明にルビーナは振り向き、後ろの方に並ぶ補助席を見た。


「あ、ほんと」


 補助席とはいえ左側に肘掛けが付いており、そこから折りたたみ式のアームが伸びて簡易テーブルを展開できるようになっていた。

 座面の座り心地も、パイプ椅子よりはよさそうである。


「あれならかなりマシね」

「だろう?」


 ちなみに、礼子は椅子に座っていないので定員数を圧迫してはいない。


 午前10時になった。

 最終的に80名ほどが聴講するようだ……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日6月1日(木)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20230601 修正

(誤)そのためテキストを呼んだりノートを取ったりするにはやや不便である。

(正)そのためテキストを読んだりノートを取ったりするにはやや不便である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「戻ってきた『世界警備隊』の方たちからは丁寧な謝罪と感謝をもらいました」 >「それが筋だものな」 >「エリアス王国からは近いうちに慰謝料を貰えるそうです」 >「近いうち、か。まあ、事故直…
[一言] 教師役が人型だからダメなんだ!ここはペンギン型や熊型などのアニマル(獣人ではない)にしよう、喜んで教えを乞うぞ。  まあ現実でも特定の人種を毛嫌いする人はいるなぁそれも国柄として日本は外国…
[一言] そう言えば、前の馬車事故の時にゴウ君はエルザから治癒魔法の初歩を受けてましたね。 彼は魔法工学師には、なれなかったけども 逆に、工学•治癒•自然(現象)魔法の全てと蓬莱島の学問をハイレベル…
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