92-82 閑話154 10月9日の蓬莱島
大陸暦3902年10月9日、つまりマルシアとシオンの誕生日の前日、午後9時。
『システムチェック開始』
蓬莱島の頭脳、『老君』は改良された全システムのチェックを開始した。
この日は、仁が朝から蓬莱島勢のグレードアップを行っていたのである。
朝から始めて終わったのが先程。
『新型魔力反応炉』『ヌラ・ミスリル』『ヴァジュリウム』等々、新技術を惜しげもなく注ぎ込んでの改良である。
『記録装置チェック……問題なし』
『記憶装置チェック……問題なし』
自分のシステムの動作確認を終えた老君は、さっそく蓬莱島の現状確認を開始した……。
* * *
この日の朝、仁がまず行ったのはさらなるオリジナル工学魔法の開発である。
『不動』では、対象は『剛体化』してしまい、弾性や伸縮性がなくなる。
つまり筋肉組織や皮膚には使えないのだ。
この問題に対し、仁は掛けた魔法が劣化していくのは、空間に存在する『自由魔力素』が衝突するからであることを突き止め、それを防ぐ工学魔法を作り出す。
それが『保護』である。
これは工学魔法を保護する魔法であり、素材を保護する魔法ではない。
この『保護』を使えば、初心者が掛けた『強靱化』でさえ、永続的な効果を発揮するであろう。
* * *
次が『職人』1と2の改造。『新型魔力反応炉』『人為的魔術変異元素』化した『ヴァジュリウム』『人為的魔術変異元素』化した『ベネマライト』などが使われた。
『人為的魔術変異元素』化には20時間という処理時間が必要なので、前日には行えず、この日の作業になったわけだ。
『職人』の性能向上率は100倍に抑えた。『制御核』も同様。
骨格や筋肉組織もそれに合わせて強化。もちろん開発したばかりの『保護』で防護する。
当然、『職人』もこの『保護』を使うことができるよう装置を追加されている。
この改良により、『職人』は100倍の性能を発揮できるようになったのである。
* * *
『職人』1、2の2体が性能アップしたからには、作業は加速する。
1体が1体を改良していく。
2体が4体になるのに2分。4体が8体になるのに2分。8体が16体になるのに2分……。
1000体全てが改良を終えるのに30分も掛からなかった。
改良を終えた『職人』たちは、まず『陸軍』ランド隊1000体の改良を行う。
性能向上率は500倍。もちろん骨格や筋肉組織もそれに合わせて強化、『制御核』も同様だ。
続いてスカイ隊、マリン隊、マーメイド隊、アストロ隊など、順次改良していくことになる。性能向上率は皆500倍だ。
蓬莱島の外で任務についている者もいるので、これは1日では終わらないが。
* * *
次に仁は、礼子のパワーアップを手掛けていた。
助手は『職人1』と『職人2』。
『新型魔力反応炉』は5000倍の出力を誇る。……が、普段はこれまでの100倍にとどめておく。
リミッターを解除するには仁の指示が必要。
もしくは必要なときである、と老君と礼子の意見が一致した時に解除できる。
骨格は『人為的魔術変異元素』化した『ヴァジュリウム』を使い、体重増加しないよう発泡構造や肉抜きも交えてグレードアップ。
『補強』を重ねがけすることで5000倍の出力にも耐えられる強度を持つ。
筋肉組織や皮膚、頭髪は『人為的魔術変異元素』化した『竜革』や『地底蜘蛛糸』を使う。もちろん『保護』を掛けておくことも忘れない。
衣服も同様。
重要なパーツは全て『ヌラ・ミスリル』でシールドされた。
もちろん、『制御核』も5000倍の高速化を行う。
これにより、フルパワーを出している時でも卵を割らずに持つという繊細なパワーコントロールが可能になるのだ。
また、以前実験を行った『消滅系魔法陣』……3つ以上の『転移魔法陣』の組み合わせによる『ロスト』を仕掛けようとしても、魔法陣の起動よりも速く反応できるだろう、と老君はそう認識した。
『礼子さんのフルパワーはもはや天変地異を起こせますね……仮に、礼子さんを止めようとするなら、蓬莱島の全戦力を投入する必要があるでしょうね』
老君はそう結論づけた。
『もっとも、御主人様がいらっしゃる限り、その可能性はゼロですが』
* * *
そして仁は老君の改良を開始した。
メインの情報処理装置はそのままに、並列処理できるサブユニットを増設する。
こちらも『新型魔力反応炉』の潤沢なエネルギーを使い、これまでの5000倍の処理能力を持つ。
もちろん全体は『ヌラ・ミスリル』でシールドするので、保護は万全だ。
メインユニットはそのままであるが、こちらは情報処理の指令を出すのみで、実際の処理はサブユニットが行うため、このメインユニットがネックになることはない。
同時に記憶容量も50倍に増やしており、十二分な余裕をもたせた。
外部へのインターフェースも30倍に増設したため、同時に行える実務も飛躍的に増加。
いざという時の防御装置も、これまでの『物理障壁』を5重に展開できるように増強したし、『防御盾』も全方位に展開できる。
もちろん、半球状にも。
仁はこれらの改造を、老君を停止させることなく済ませてしまった。
そして、老君の移動用端末である『老子』も、ランド隊に準じて500倍のパワーアップ改造が行われたのである。
『これで、これまで以上に御主人様のお役に立つことができます』
老君は大満足であった。
そしてさらに現状把握を進めていく。
* * *
性能アップした魔導頭脳は老君だけではなかった。
蓬莱島の中心にある『蓬莱山』山頂に埋設されている『衛星管理専用魔導頭脳』の『小老君』もまた500倍にパワーアップ。
『ウォッチャー』をはじめとする衛星のより精密な操作が可能となった。
蓬莱島やカイナ村などの警備監視を専任とする魔導頭脳『庚申』。
蓬莱島の幻影結界・通過結界を司る魔導頭脳『陽炎』。
マキナ専用の魔導頭脳『導師』。
こういった魔導頭脳も大幅な性能アップとなる。
* * *
『仁ファミリー』の『分身人形』も強化された。
あくまでも身代わりなので、リミッターを解除した際の最大パワーは10倍に抑えているが、素材は『ヴァジュリウム』をふんだんに使い、100倍の強度に仕上げている。
当然デウス・エクス・マキナ3世も同じレベルの改良を行った。
* * *
小型ゴーレムも強化している。
リトル職人、ミニ職人、インチ職人、ミリ職人らも順次ボディ強度100倍、出力100倍に。
フィンガー1〜5、サム1〜10、『忍部隊』壱〜拾、コマンド1〜10もボディ強度100倍、出力100倍に改良。
もちろん侍女ゴーレムたちも例外ではない。
礼子の配下であるソレイユとルーナもボディ強度100倍、出力100倍。服も強化済み。
ソレイユの配下プラネ1〜5、ルーナの配下サテラ1〜5も同様だ。
五色ゴーレムメイドたちもまたボディ強度100倍、出力100倍。
バトラー1〜50もまたボディ強度100倍、出力100倍。以降、これを標準強化とする。
各ゴーレム・自動人形に内蔵した緊急避難用の『転送装置』(自分自身を特定の場所へ転移できる)もパワーアップし、アルス上ならどこからでも『しんかい』へ転移することができるようになった。
* * *
など、枚挙に暇がないほどの改造・強化がこの1日で行われた。
また、『第5列』のように蓬莱島にいないメンバーも、交代で呼び戻し、改装していく予定である。
その他、航空機や宇宙船、船舶なども順次改装されるであろう。
『全ては御主人様の御為に』
パワーアップした老君は、途切れることなく活動を続けていくのである……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日5月25日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20230525 修正
(誤)『『人為的魔術変異元素』
(正)『人為的魔術変異元素』
2箇所修正。
(誤) そしれさらに現状把握を進めていく。
(正) そしてさらに現状把握を進めていく。
(誤)まず『陸軍』ランド隊1000隊の改良を行う。
(正)まず『陸軍』ランド隊1000体の改良を行う。
(誤)『人為的魔術変異元素』化したヴァジュリウム』
(正)『人為的魔術変異元素』化した『ヴァジュリウム』
(誤)『人為的魔術変異元素』化したベネマライト』
(正)『人為的魔術変異元素』化した『ベネマライト』
(誤)骨格は『『人為的魔術変異元素』化したヴァジュリウム』
(正)骨格は『人為的魔術変異元素』化した『ヴァジュリウム』
20230608 修正
(誤)もちろん侍女自動人形たちも例外ではない。
(正)もちろん侍女ゴーレムたちも例外ではない。




