92-80 誕生会と報告 前編
10月10日はマルシアとシオンの誕生日である。
例によって、蓬莱島には『仁ファミリー』全員が集まっていた(アーノルトも)。
「誕生日おめでとう、シオン」
「誕生日おめでとう、マルシア」
「おめでとう」
「おめでとう」
「ありがとう、みんな」
「ありがとう!」
もはや恒例となった花束贈呈の後、仁はまず今日の主役2人に新『仲間の腕輪』を渡した。
「これはさらに性能アップしているんだ。ああ、全員の分あるからな?」
そして残りのメンバーにも腕輪を手渡したのである。
「お、ありがとう、ジン」
「これは何が変わったのかな?」
「今説明するよ」
今日の主人公2人をあくまでも立てつつ、仁は説明を始めた。
「まずはエネルギー源が『新型魔力反応炉』になっているから、これまでの10倍以上の魔力素を使えるんだ」
「話には聞いていたけど、すごいわね」
シオンが感心半分呆れ半分といった顔で言った。
「で、機能として一番強化したのが障壁系だな。『物理障壁』は3重展開できる」
「すごい……」
「場合によっては『防御盾』も展開可能だ」
「使う場面が思いつかないね」
マルシアも少し呆れ顔だ。
「で、追加した機能が『転送装置』だ」
「自分自身を転送できるというやつね」
「そう、シオンの言うとおり。転移先は『しんかい』の中だ。必要に応じて老君に見守っていてもらうことで、危険が迫った時点で自動でも発動する」
「至れり尽くせりだな」
「で、『明かり』の機能や『魔素通信機』機能はそのままだ。……治癒魔法は『解毒』『癒し』『快復』『滅菌』が使える」
「それは凄いわね。一般的な治癒士以上だわ。ありがたいわね」
シオンは嬉しそうである。
「それから、『麻痺』『掘削』『水弾』『風の弾丸』も使える。非殺傷魔法だな」
敵を牽制、足止めできるレベルの魔法である。
その間に転移で逃げればいい、というわけだ。
「それもいいわね。使う機会があるかどうかは別として」
「使う機会なんてないほうがいいに決まってるよ」
シオンはまだ現役だが、マルシアはヘールで好きなことを研究している。当分使う機会はないだろうと思われた。
それならそれでいい、と仁は思っている。
あくまでも非常用の付加機能だからだ。
* * *
そして宴会である。
和気あいあいとした時間が過ぎていく。
昼食時間が過ぎ、皆、宴会に少し疲れた頃。
「ジン、最近すごい発見をしたんだって?」
「なんでも、これまでの数千倍の魔力反応炉ができたと言ってたよね」
「今回の『腕輪』もその応用なんでしょう?」
と、興味を持ったメンバーが次々と仁に質問を浴びせかけた。
「ああ、そろそろ時間的にもいいかな?」
仁としても、全員揃ったこの機会に説明をしておきたいと思っていたのである。
「それじゃあ説明しよう」
「ぜひ聞かせてほしいわね」
「よし。……きっかけは礼子の強化を考えていた時なんだ」
ああ、やっぱり、という呟きが誰かの口から漏れた。
「え、ええとだな、まず思いついたのが『エルラドライト』と『マライト』だった」
「ああ、どちらも『増幅』と縁が深いからね」
「そういうことだな。そしてハンナとサキに相談し、その後『長老』ターレスさんにも相談したわけだ……」
「ふむ、そうであったな」
「その後、『紛い物』にも相談したら、北極海の海底6000メートルに、資材庫みたいな施設があると教わって……」
「なるほど」
「その過程で深海用ゴーレムを開発したわけだ」
「バチス、といったかな」
そのようにして、仁は経緯を簡単に説明していった。
「……そんなわけで、まずは『精神触媒』の応用をいろいろと研究したわけだな」
その結果、大きな技術の進歩……ブレイクスルーと言える改革が可能になった、と仁は言った。
1.改良マライトである『ベネマライト』。マライトを純粋結晶化したものを開発。
2.新型魔力反応炉は積層型の組み合わせ。
3.『エルラドライト』部分で『自由魔力素』を取り込み、『魔結晶』で『魔力素』に変え、『ベネマライト』部分で増幅する。
4.『精神触媒』を重量比で1000万分の1添加することで、これまでの5120倍の最大出力が得られるようになった。おそらく『亜自由魔力素』も利用していると思われる。
「これはすごいなあ」
「うむ、ジン殿、見事である」
「ありがとう」
そして仁は次の説明を開始。
「これだけのエネルギーは、今の素材では受け止められない。だから素材も強化しなければならなかったし、制御する『制御核』も改良が必要だと思った」
「うむ、道理であるな」
「それはそうだよなあ」
「そこでハンナとサキに依頼して……」
結果が出るまでの間、10倍レベルの『新型魔力反応炉』を礼子やレイに搭載してチェックしていたと説明。
「それができるまでの間に『仲間の腕輪』を作ったんだよ」
ちょっと寄り道して『ワープロ』や『プリンター』を作ったりもした、と話す仁。
「そうそう、『アヴァロン』の制服の話もしたっけなあ」
これは本筋とは関係ないけど、と詳しい話は割愛した。
「で、『人為的魔術変異元素』のお披露目となったわけだ」
鉛に『亜自由魔力素波』を照射することで『魔力子』を発生させ、それを素材に20時間浴びせる処理をすると説明。
「『人為的魔術変異元素』化した『ヴァジュリウム』は、5000倍の出力を受け止められる程の強化が可能なんだ。『強靱化』や『補強』の効果が大なんだよ」
同様に、『竜革』『地底蜘蛛樹脂』などもまた、工学魔法による強化度合いが著しい、ということも説明。
「そして、この驚異のパワーアップを制御するために『制御核』の処理速度も向上させたんだ」
『人為的魔術変異元素』化した『ベネマライト』は7000倍以上の演算速度になることも仁は説明。
「凄いもんだな」
「凄まじいわね……」
仁の説明はまだまだ続く……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20230523 修正
(誤)「その過程で潜水艇を開発したわけだ」
(正)「その過程で深海用ゴーレムを開発したわけだ」
(誤)「……そんなわけで、まずは『精神触媒」の応用をいろいろと研究したわけだな」
(正)「……そんなわけで、まずは『精神触媒』の応用をいろいろと研究したわけだな」
(誤)3.『エルラドライト』部分で『自由魔力素』を取り込み、『魔結晶マギクリスタル』で
(正)3.『エルラドライト』部分で『自由魔力素』を取り込み、『魔結晶』で




