92-75 データ通信
仁は『ワープロ』の量産試作を完成させるべくいろいろと手を加えている。
「あとは着脱式記憶装置だな」
セキュリティを考えないといけない、と気付かされたのだ。
「……そうだよな……『読み出し』が使える技術者なら、記録内容を直接読み取れるものな」
プロテクトを講じる必要がある、と仁は考えた。
「あるいはシールドケースに入れて使うか……」
その場合はコストが跳ね上がる。が、
「重要データはそうした『ちょっと高い』着脱式記憶装置を使い、さほど重要でもない、あるいは人に見られてもいいデータはむき出しの着脱式記憶装置、と使い分けるのも手だな」
と考え直した。
そこで、重要データ用の着脱式記憶装置はミスリル銀のケースで覆い、加えてパスワードを使わないと読み出しができないようにした。
魔力パターンによる認証にしなかったのは、第三者にデータを渡す可能性を考慮してのことである。
銀色のケースに入れた着脱式記憶装置を見て、仁は別の懸念を抱いた。
「あと……『ワープロ』に挿したまま、大きな力が加わったら『折れる』かな? いや、そっちは大丈夫か……」
直径1センチ、長さ5センチの円柱なら、素材が『魔結晶』であるから、そう簡単には折れそうもない。
しかも、メモリーとして使う場合は5センチの長さの半分を挿し込むことになるので、強度的に弱くなることはないだろうと仁は判断したのだった。
「よし、こんなものか」
『ワープロ』の量産試作はとりあえずこれでいいかなと、仁は納得した上で作業を完了した。
「さて、残る懸念事項は……ああ、『プリンター』があったか……」
今のところ『ワープロ』とオフラインでの接続しかできない状態である。
「まずは入力に着脱式記憶装置も使えるようにして」
30秒で仁は追加工を終える。
「有線じゃなく無線で『ワープロ』と『プリンター』を接続できるようにしよう。……それには……」
しばし考える仁。
「そうだ、データ通信用のアダプターを作ろう」
着脱式記憶装置と同じ大きさで、対になる受信機へ魔力波でデータを飛ばせるようなものを仁はイメージした。
『転移門』のペアリングと同じ考え方だ。
「うん、作れるな」
5秒後に仁は製作可能と判断し、10秒後には必要な素材である『魔結晶』を手に取り、15秒後には送信側を作り終え、20秒後には受信側を作り終えていた。
送信側と受信側はペアになっている。
「色で……いや、やっぱりナンバーではっきりさせたほうがいいな」
通し番号を振って、同じでないものは基本的にデータをやり取りできないことにすればいいと仁は考えた。
「まずは00001と00002の2組を用意しておくか」
最初に作ったペアには00001。
もう1組を15秒で作った仁は、そちらには00002の番号を割り振ったのだった。
「これで必要な機器は揃ったかな」
ということで、システム的にも『ワープロ』量産試作完成。
時刻は午前9時55分。10時休み直前であった。
* * *
10時休みの後、エルザとリシアだけでなく、ハンナとサキ、ラインハルトにも『ワープロ』量産試作を見てもらった。
(……というより、量産試作にする前に見てもらうべきだったな……)
などと思っている仁である。
それはともかく、彼らの感想はというと。
「思ったより使いやすいな。慣れれば便利なんじゃないか?」
「手書きだと修正が面倒だけど、これはいいかもね。音声入力があるともっといいな」
「くふ、自分で書かなくても声でメモできたらもっといいよ」
ラインハルトはほぼこのままでいいと言ったが、ハンナとサキは音声入力を欲している。
「なるほど、実験途中でメモできるというのは便利なんだな」
「うん、手が離せない時は特にね」
確かに、忙しいときにはいちいちメモ用紙を探さずに手の甲にメモする者もいる。
そういう業種・職種のために音声入力の『ワープロ』は必要なのかもしれない、と仁は感じた。
「助手ゴーレムや自動人形に記憶してもらうんじゃ駄目なのか?」
一応代替案を提示してみる……が。
「うーん、目視ですぐ確認し、見返せるっていうのが重要なんだよね」
とハンナに言われてしまった。
「だから、A4サイズでなくてもいいと思うの。『温度24度』とか『多すぎると反応に時間が掛かる』程度の言葉をメモできればいいから」
「でもたくさんメモできたほうがいいんじゃないのか?」
「それじゃメモじゃなくなっちゃうから。5つも6つも1枚のメモ用紙に書き込まないでしょ」
「それもそうか」
「あ、あったらいいなと思うレベルだから、すぐに用意しようとしないでいいよ、おにーちゃん」
「うーん……わかった」
作業中のメモは難しい。
メモした付箋を(ふせん)をテーブルやモニタにペタペタ貼っていく人もいるが、それが増えすぎるとどれが何のメモかわからなくなる。
メモもいいが、増えすぎると意味がなくなることがあるので要注意だ。
閑話休題。
そうした意見もあると仁は『頭の隅にメモ』しておいたのである。
* * *
それから昼食時間まで、仁は1つの懸念事項についての対策を考えることにした。
それは『強靱化の解除』。
驚異の強度を誇る『人為的魔術変異元素』であるが、それは『強靱化』を掛けてこそ。
もしもその効果をキャンセルするような魔法を使われたら……と仁は危惧したわけだ。
もちろん、仁が本気で掛けた『強靱化』をキャンセルするのは並大抵のことではできない。
しかし『不可能ではない』。
「うーん、掛けた工学魔法を安定化するというか固定化するというか……」
そういう工学魔法はない。ならば作ればいい。
……と考えた仁は、考えを巡らせていくのであった。
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本日5月18日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
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20230518 修正
(誤)「あと……『ワープロ』に指したまま、大きな力が加わったら
(正)「あと……『ワープロ』に挿したまま、大きな力が加わったら
(誤)しかも、メモリーとして使う場合は5センチの長さの半分を差し込むことになるので
(正)しかも、メモリーとして使う場合は5センチの長さの半分を挿し込むことになるので
(旧)メモリー*ティック
(新)着脱式記憶装置
7箇所変更。




