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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
91 新たな技術篇
3585/4413

91-33 次の開発目標

 『重力魔法機関』を推進機に使うという試みは大成功であった。

 大きな改善の必要がないほどに使い勝手はよかったのである。


「では、『重力魔法機関』の量産試作を作るということでいいかな?」

「はい」

「異議なし!」


 大きな改善点はないが、小さな改善点はある。

 量産試作として必要になるのは、取り付け用のマウント部とか、形状の規格化、部品の標準化などだ。

 このあたりはアイデアというより経験、慣れなので、グローマやタイナーが活躍する。

 その日のうちに『重力魔法機関』の『量産試作』の設計は終了したのであった。


*   *   *


 ゴウとルビーナは食堂にいた。

 メルツェは少し仕事が長引いているようで、まだ来ていない。

 

「ああ、随分とはかどったな」

「ほんとね。明日は浮遊機関への応用かしら?」

「そうなるんじゃないかな?」

「ちょっと考えておいたほうがいいかしらね」

「うーん、休む時は休んだ方がいいと思う」

「そっかー」


 そこへメルツェがやってくる。


「遅くなってごめんなさい」

「いや、待ってないから大丈夫」


 ということで3人一緒に夕食を食べることになった。

 今夜は3人共『夕食セットA』。

 白いご飯に焼き魚、肉トポポ(じゃが)、野菜炒め、ハムエッグ、お新香。ご飯はおかわり自由だ。


「今日は大変だったみたいね、メルちゃん」

「うーん、大変、というか……原因はゴウさんとルビちゃんたちですよ」

「え?」

「えっ?」

「今日、新しい何かを成功させたでしょう?」

「うん、『重力魔法機関』を」

「それの『量産試作』をする申請書が受付時間終了間際に出されたんです」

「あー……」

「受付を終了しても、業務時間は30分あるんですけど、なんていうか、申請内容がかなり厳しかったんですよね」

「……」

「それで、各部署に確認したり調整をとったりで時間が取られちゃって、業務終了時間を20分オーバーしちゃったんです」

「なんていうか、ごめん」

「いえ、ゴウさんが謝る必要はないですよ」


 こうした事務処理の効率化はこれからの課題だとメルツェは言った。


「うーん……事務仕事についてのお手伝いはできそうにないけど、効率を上げるための魔導具なら作れるかも」


 ルビーナが言った。


「だからメルちゃん、何かそういうアイデアがあったら言ってね!」

「うん、ありがとう、ルビちゃん」


 そんな口約束が交わされた。

 その約束が果たされるのも、遠い未来のことではないのかもしれない……。


*   *   *


 明けて9月3日。

 仁は蓬莱島に戻っていた。

 『オノゴロ島』とは12時間の時差があるので、時差ボケ対策が必須だ。

 仁の場合は、社会人時代の徹夜経験を生かし、寝不足を承知で本来の就寝時刻まで起きたまま、という方法をとる。

 

 オノゴロ島での9月1日午後8時は蓬莱島では9月2日の午前8時である。

 その時刻に『転移門(ワープゲート)』で蓬莱島に戻り、日中一杯起きていて、午後8時に就寝。

 そうしてぐっすり眠り、蓬莱島時間午前6時に目覚めている。


 エルザとともに少し早い朝食を摂り、老君から報告を聞いた。


「そうか、『重力魔法機関』を、そういう形で推進機にしたんだな」

『はい、御主人様(マイロード)

「で、成功している、と」

『そうです』

「ゴウとルビーナも頑張っているな」

『はい。マキナからの報告でもそうなっています』

「細かい仕様を教えてくれ」

『わかりました』


 老君は映像も交えて、仁に推進機としての『重力魔法機関』、それを搭載した『フリューゲル1』について報告した。


「なるほど。なかなかいいじゃないか」

『はい、御主人様(マイロード)

「それに、墜落事故防止用の『重力魔法の魔法陣』について気が付いたのも大したものだ」

『そうですね、御主人様(マイロード)

「そうすると、次は『浮遊用』かな?」

『そうなると思います』

「ゴウとルビーナがどんなアイデアを見せてくれるか楽しみだな」


*   *   *


 同日、『アヴァロン』。

 仁が予想したとおり、アーノルト率いる『改良型重力魔法機関開発プロジェクト』は浮遊機関への転用を検討していた。


「使用する対象は飛行機じゃなくて飛行船や気球だと思うんです」

「うん、ゴウの意見に僕も賛成だね」

「あたしも!」


 これに関して異議は出なかった。


「そうすると議論の焦点は浮遊機関の支持方法ということになるのかな?」

「そう思うぞ」


 そうエイラが言い、グローマもそれに賛成した。


「ちょっと待って下さい。それって、常に重力と反対方向に働かせるための機構ですよね? だとしたら……」


 ゴウが異を唱えた。


「うん? ゴウ、何か別の意見が?」

「はい。……『浮遊機関』そのものに重力を検知する機能を付け、それによって浮遊力の向きを変えていく、という方法もあると思います」

「なるほど、確かにそうだ」

「どちらがより使いやすいか、コストも含めて検討すべきでしょう」

「そのとおりだ」


 ここでリーダーのアーノルトが場を取りまとめる。


「おそらく双方、メリットデメリットがあるだろう。それを洗い出し、比較検討していこう」

「わかりました」


 こうして、次の開発の検討が開始された……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20230220 修正

(誤)メルツェは少し仕事が長引いているようで、まだ来ていない

(正)メルツェは少し仕事が長引いているようで、まだ来ていない。

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― 新着の感想 ―
[一言] >仁の場合は、社会人時代の徹夜経験を生かし、寝不足を承知で本来の就寝時刻まで起きたまま、という方法をとる。 エルザが何て言ったのか、是非聞いてみたいところではありますが。 そういえば、 よ…
[一言] >>取り付け用のマウント部とか、形状の規格化、部品の標準化など ハ「戦闘機のエンジンソケットかな?」 エ「劣化コピーを取り付けている所もあるけど」 >>受付時間終了間際に出された ハ「受け…
[気になる点] >>メルツェは少し仕事が長引いているようで、まだ来ていない 。忘れ? [一言] >>大きな改善点はないが、小さな改善点はある。 表面に緻密な細工を刻んだりとか。 >>このあたりは…
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