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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
90 未来への一歩篇
3484/4348

90-14 完成、『アスピーダ』

 7月20日、アーノルト率いる『魔導頭脳』プロジェクトチームの作業は佳境に入っていた。

 一言で言えば『ハードウェア完成間近』なのである。


「焦るなよ、焦って失敗したら目も当てられん」

「わかってるって。慎重に行くぞ、慎重に」


 などと言い合いながら作業を進めていく。

 もちろん、ゴウとルビーナも手伝っていた。

 2人は客員とはいえ『アカデミー』の研究員なのだから。


 ちなみに仁は作業にミスがないか、目を光らせている。


 そして3時間。

 午前11時少し前、『魔導頭脳』は完成した。ハードウェア部分は。


 出来上がった魔導頭脳の形状は、直径1メートル、高さ3メートルの円柱形。

 『魔導大戦』当時の標準的な形式である。


「さて、これで出来上がったはずだ。……ジン殿、どうでしょうか? チェックをお願いします」


 自分たちでのチェックを終えたアーノルトは、改まった態度で仁に再度のチェックを依頼した。


「わかった」


 短く答えた仁はシステムのチェックを行っていく。


「『分析(アナライズ)』『精査(インスペクション)』『分析(アナライズ)』『追跡(トレース)』『追跡(トレース)』『分析(アナライズ)』……」


 皆、固唾を飲んで仁のチェックを見つめている。

 そして15分後。


「チェック完了。問題なし、だ」

「おお、やった!」


 メンバー全員が歓声を上げた。

 同時に老君も『覗き見望遠鏡(ピーパー)』でシステムチェックをしており、そちらでも問題なし、という結果だったことを付け加えておく。


*   *   *


 残るは『基礎制御魔導式(コントロールシステム)』である。


 ここは、基本をアーノルトが作り、ゴウとルビーナがチェックを入れつつ、エイラの思考回路をエミュレートしたルーチンをインストールする、ということになる。


 『魔導大戦』当時の魔導頭脳である『アイオーン』と『アスティノ』とのバランスを取らなければならないからだ。

 それには当時の技術を知っているアーノルトが適任なのである。

 (今回の作業を通じ、参加メンバーは大戦当時の技術ややり方を学んでいた)


「よし、いよいよファームウェアのインストールということになる」

「……」


 現在時刻は午前11時20分。

 インストールには1分も掛からないはずだ。


「それじゃあエイラ君、思考回路をコピーさせてもらうよ」

「は、はい」

「『知識転写(トランスインフォ)』」


 つたないながらも『知識転写(トランスインフォ)』を使うアーノルト。

 エイラの思考回路を魔結晶(マギクリスタル)に書き込むことに成功した。


「……できた。……ジン殿、内容が壊れていないかどうか、確認してもらえますか?」

「わかった。『知識確認(リードインフォ)』………………うん、大丈夫だ」

「ありがとうございました」


 あくまでも仕事中は仁への敬語をやめないアーノルトであった。


「では、まずはこの内容をインストール。続けて基礎制御魔導式(コントロールシステム)をインストールする」


 ここからはアーノルトが行う。

 この魔導頭脳『アスピーダ』はアーノルトが管理者になる予定だからだ。

 仁、ゴウ、ルビーナらはそんなアーノルトの作業ぶりを近くで見学している。

 もちろん他のメンバーたちも。


*   *   *


「よし、終了。……ジン殿、内容に不備がないかどうか、チェックをお頼み致します」

「承りました。……『知識確認(リードインフォ)』『読み取り(デコンパイル)』…………うん、大丈夫だな」

「おお」

「やった!」

「ばんざーい!」


 仁の言葉を聞いて、皆喜びを隠せないようだ。ゴウとルビーナも万歳をして喜んでいた。


「主任、起動しましょうよ」

「そうですよ、主任」

「そうだね、皆の気持ちもわかるよ」


 アーノルトはまだ時間もあることだから、起動試験までやってしまおう、と判断した。

 仁も反対はしない。というか、ことここに至っては、仁も起動させてみたくてうずうずしている。


「では。……『起動(スタート)』」


 起動命令を出して3秒後、魔導頭脳は最初の反応を見せた。


『はい、『製作主(クリエイター)』様』

「思考に問題はないか?」

『はい、思考に問題はありません』

「そうか。お前の名前は『アスピーダ』とする」

『はい、私は『アスピーダ』。記憶しました』


 ここまで、全く問題なく順調に来ている。


「『アスピーダ』、お前への命令権を設定する。1位は僕。2位は……ジン・ニドー。3位はエイラ・シアータ……」


 アーノルトは命令権を次々と設定していった。

 仁としては、自分の命令順位はもっとずっと下位でいいと思っていたのだが、アーノルトの希望で2位となったのである。

 ちなみにゴウとルビーナは10位と11位。グローマは4位だ。


「よし、しばらく……1時間ほど、セルフチェックを行っていろ」

『わかりました』


 アーノルトは、1時間……昼休みの間、『アスピーダ』にセルフチェックを行わせることにした。

 これにより、より思考が滑らかになるはずなのだ。


 その間、メンバーは昼食である。

 しかし皆、軽食で済ませると『アスピーダ』のある工房へと戻っていってしまう。

 ここまで来たら、一刻も早く完成の場面を見たいと思っているのだ。


*   *   *


 午後0時40分。

 昼休みはまだ20分残っているが、プロジェクトメンバーは仁たちも含め、全員揃っていた。

 アーノルトはその様子を見て、改めて動作確認をすることにした。


「『アスピーダ』、調子はどうだ」

『はい『製作主(クリエイター)』様、非常にいい調子です』

「よし、そうか。……記憶バンクに、『三位一体』の魔導頭脳システムについての初期データがあるはずだが」

『はい、ございます』

「よし。それについての意見は?」

『有意義だと思います』

「そうか、わかった。……お前の設置場所は『パールス島』の地下になる予定だ」

『妥当だと思います』

「うん。その時までここで『情報収集』をしていてくれ」

『承りました』


 『アヴァロン』で数日、情報収集(という名の学習)をしていればかなりのデータが集まるはずである。

 それは『三位一体』の魔導頭脳システム構築できっと役に立つ。


「これから『アスピーダ』の設置場所を整備しないとなあ」


 アーノルトがひとりごちる。

 プロジェクトの仕事はもう少し残っていた。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日11月3日(木)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20221103 修正

(誤)仁としては、」自分の命令順位はもっとずっと下位でいいと思っていたのだが

(正)仁としては、自分の命令順位はもっとずっと下位でいいと思っていたのだが

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ふと思ったんですが、ショウロ皇国の地下に保管されていた巨大ゴーレムはもしかしたらギガースやジャイガントが旧人族陣営で暴れた時の対策に作られていたのではないでしょうか(そういえばあったな…
[一言] >あくまでも仕事中は仁への敬語をやめないアーノルトであった。 ア「まあ、儀式のような物だからね」 仁「……魔導頭脳時代の癖が抜けていないのかと思ったら、上棟式だったとは」 >アーノルトは…
[一言] > 7月20日、アーノルト率いる『魔導頭脳』プロジェクトチームの作業は佳境に入っていた。 > 一言で言えば『ハードウェア完成間近』なのである。   なお『ソフトウェア』は手付かz o...い…
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