90-14 完成、『アスピーダ』
7月20日、アーノルト率いる『魔導頭脳』プロジェクトチームの作業は佳境に入っていた。
一言で言えば『ハードウェア完成間近』なのである。
「焦るなよ、焦って失敗したら目も当てられん」
「わかってるって。慎重に行くぞ、慎重に」
などと言い合いながら作業を進めていく。
もちろん、ゴウとルビーナも手伝っていた。
2人は客員とはいえ『アカデミー』の研究員なのだから。
ちなみに仁は作業にミスがないか、目を光らせている。
そして3時間。
午前11時少し前、『魔導頭脳』は完成した。ハードウェア部分は。
出来上がった魔導頭脳の形状は、直径1メートル、高さ3メートルの円柱形。
『魔導大戦』当時の標準的な形式である。
「さて、これで出来上がったはずだ。……ジン殿、どうでしょうか? チェックをお願いします」
自分たちでのチェックを終えたアーノルトは、改まった態度で仁に再度のチェックを依頼した。
「わかった」
短く答えた仁はシステムのチェックを行っていく。
「『分析』『精査』『分析』『追跡』『追跡』『分析』……」
皆、固唾を飲んで仁のチェックを見つめている。
そして15分後。
「チェック完了。問題なし、だ」
「おお、やった!」
メンバー全員が歓声を上げた。
同時に老君も『覗き見望遠鏡』でシステムチェックをしており、そちらでも問題なし、という結果だったことを付け加えておく。
* * *
残るは『基礎制御魔導式』である。
ここは、基本をアーノルトが作り、ゴウとルビーナがチェックを入れつつ、エイラの思考回路をエミュレートしたルーチンをインストールする、ということになる。
『魔導大戦』当時の魔導頭脳である『アイオーン』と『アスティノ』とのバランスを取らなければならないからだ。
それには当時の技術を知っているアーノルトが適任なのである。
(今回の作業を通じ、参加メンバーは大戦当時の技術ややり方を学んでいた)
「よし、いよいよファームウェアのインストールということになる」
「……」
現在時刻は午前11時20分。
インストールには1分も掛からないはずだ。
「それじゃあエイラ君、思考回路をコピーさせてもらうよ」
「は、はい」
「『知識転写』」
拙いながらも『知識転写』を使うアーノルト。
エイラの思考回路を魔結晶に書き込むことに成功した。
「……できた。……ジン殿、内容が壊れていないかどうか、確認してもらえますか?」
「わかった。『知識確認』………………うん、大丈夫だ」
「ありがとうございました」
あくまでも仕事中は仁への敬語をやめないアーノルトであった。
「では、まずはこの内容をインストール。続けて基礎制御魔導式をインストールする」
ここからはアーノルトが行う。
この魔導頭脳『アスピーダ』はアーノルトが管理者になる予定だからだ。
仁、ゴウ、ルビーナらはそんなアーノルトの作業ぶりを近くで見学している。
もちろん他のメンバーたちも。
* * *
「よし、終了。……ジン殿、内容に不備がないかどうか、チェックをお頼み致します」
「承りました。……『知識確認』『読み取り』…………うん、大丈夫だな」
「おお」
「やった!」
「ばんざーい!」
仁の言葉を聞いて、皆喜びを隠せないようだ。ゴウとルビーナも万歳をして喜んでいた。
「主任、起動しましょうよ」
「そうですよ、主任」
「そうだね、皆の気持ちもわかるよ」
アーノルトはまだ時間もあることだから、起動試験までやってしまおう、と判断した。
仁も反対はしない。というか、ことここに至っては、仁も起動させてみたくてうずうずしている。
「では。……『起動』」
起動命令を出して3秒後、魔導頭脳は最初の反応を見せた。
『はい、『製作主』様』
「思考に問題はないか?」
『はい、思考に問題はありません』
「そうか。お前の名前は『アスピーダ』とする」
『はい、私は『アスピーダ』。記憶しました』
ここまで、全く問題なく順調に来ている。
「『アスピーダ』、お前への命令権を設定する。1位は僕。2位は……ジン・ニドー。3位はエイラ・シアータ……」
アーノルトは命令権を次々と設定していった。
仁としては、自分の命令順位はもっとずっと下位でいいと思っていたのだが、アーノルトの希望で2位となったのである。
ちなみにゴウとルビーナは10位と11位。グローマは4位だ。
「よし、しばらく……1時間ほど、セルフチェックを行っていろ」
『わかりました』
アーノルトは、1時間……昼休みの間、『アスピーダ』にセルフチェックを行わせることにした。
これにより、より思考が滑らかになるはずなのだ。
その間、メンバーは昼食である。
しかし皆、軽食で済ませると『アスピーダ』のある工房へと戻っていってしまう。
ここまで来たら、一刻も早く完成の場面を見たいと思っているのだ。
* * *
午後0時40分。
昼休みはまだ20分残っているが、プロジェクトメンバーは仁たちも含め、全員揃っていた。
アーノルトはその様子を見て、改めて動作確認をすることにした。
「『アスピーダ』、調子はどうだ」
『はい『製作主』様、非常にいい調子です』
「よし、そうか。……記憶バンクに、『三位一体』の魔導頭脳システムについての初期データがあるはずだが」
『はい、ございます』
「よし。それについての意見は?」
『有意義だと思います』
「そうか、わかった。……お前の設置場所は『パールス島』の地下になる予定だ」
『妥当だと思います』
「うん。その時までここで『情報収集』をしていてくれ」
『承りました』
『アヴァロン』で数日、情報収集(という名の学習)をしていればかなりのデータが集まるはずである。
それは『三位一体』の魔導頭脳システム構築できっと役に立つ。
「これから『アスピーダ』の設置場所を整備しないとなあ」
アーノルトがひとりごちる。
プロジェクトの仕事はもう少し残っていた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日11月3日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20221103 修正
(誤)仁としては、」自分の命令順位はもっとずっと下位でいいと思っていたのだが
(正)仁としては、自分の命令順位はもっとずっと下位でいいと思っていたのだが




