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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
90 未来への一歩篇
3479/4353

90-09 『パールス島』

 仁の指示を受け『職人(スミス)』たちが『インディゴ島』の整備をしていた同日、つまり7月16日。

 ゴウとルビーナはマキナに付き添われて『パールス島』にいた。

 インフラを整備するためである。

 資材は『アヴァロン』のものと仁が許可してくれた蓬莱島のもの、双方を使用することになる。


「指示は2人が出すんだ。俺はそれに従おう」


 今回はマキナが2人の下で働くことになる。

 ある意味、仁からの『卒業試験』である。

 庇護されるだけであった子供から、研究員として給与をもらい働く一人前の大人として。

 もちろん今後も仁が見守ることに変わりはない。

 が、2人の意識を変える……『甘え』をなくす、もしくは減らすための試験でもある。


 ゴウとルビーナもそのことを自覚しているので作業の進め方がこれまでより慎重だった。


「おいおい、いつもどおりでいいぞ。失敗しそうなら俺が止めるから」


 慎重なのはいいが、慎重すぎて萎縮してしまっては本末転倒。マキナは2人にもっと肩の力を抜くよう指導した。


「あっはい、ありがとうございます」

「そうね……ちょっと慎重すぎたかも」


 マキナに言われ、2人は深呼吸。少しだけいつもの調子を取り戻す。


「それじゃあ、居住施設は『アヴァロン』に合わせようか」

「そうね。部屋をもらったばかりだし」

「居心地はいいよな」

「ええ」

「あれなら、『アヴァロン』からの調査団も文句はないだろう」

「同感ね」


 口数も増えてきて、作業もスムーズになってきた。

 その様子を見て、満足そうに頷くマキナであった。


*   *   *


 ゴウとルビーナの仕事ぶりは、マキナを通じて老君に伝わり、最終的には仁に報告されている。

 16日の夜、『ハリケーン』で『アヴァロン』を離れていた仁は、この時間を使って2人の様子を知った。


「うん、やはりあの2人は一緒に仕事をさせると相乗効果が発揮されるな」

『はい、御主人様(マイロード)。ゴウさんもルビーナさんも、単独で作業をしている時より生き生きしています』

「老君もそう思うか」

『はい』


 今回の整備により、『パールス島』の施設は『基地』として必要最小限な設備が整う。

 それは取りも直さず、ここに第3の『魔導頭脳』を設置する準備が整ったということである。


「アーノルトが作る魔導頭脳か……ちょっと興味があるな」


 構想・設計の際には立ち会わせてもらおう、と考える仁であった。


*   *   *


 そして17日。

 仁は自分の担当の『インディゴ島』の整備を終え、『アヴァロン』に戻った。

 その3時間ほど後、マキナと共にゴウとルビーナが戻ってくる。


「お帰り」

「あ、ジン様、ただいま帰りました」

「ジン様、ただいま! 『パールス島』の居住施設、整備終わったわよ!」

「ご苦労さん。……じゃあ最高管理官に報告して来るんだ。その後、『アカデミー』の談話室で会おう」

「あ、はい」

「はーい」


 そして30分後、仁が待つ談話室に、ゴウとルビーナがやって来た。


「あー、くたびれたわ」

「ほとんど僕に報告させてたくせに」

「あたしは苦手だから。適材適所っていうじゃない」

「口は減らないな」

「1つしかない口が減ったら困るもん」


 そんなやり取りを聞いた仁は、まだまだ2人は子供だな、と苦笑する。


(まあ、そんな一足飛びに大人になれるはずもないし)


 とも思うのである。

 子供でいられる時間は短い。

 それが許される限りは子供でいさせてやりたいとも思ってしまう仁なのであった。


 仁自身は、施設の弟妹たちを養うため、一日も早く大人になってお金を稼ぎたいと思い続けていたのだから。

 それでも、学生時代のことはほろ苦い思い出となって、今も胸の内にある。


(後悔だけはしない人生を送ってくれればいいさ)


「ねえねえジン様、そっちの島も整備終わったんでしょう?」


 仁の物思いはルビーナの言葉で破られた。


「……ああ、そうだ。『インディゴ島』の方の整備は終わったよ」

「どんな感じになったんですか? 後学のために教えて下さい」

「いいとも」


 仁は2人に『インディゴ島』の整備内容を説明した。


「ははあ、転移魔法陣をそんなふうに使って……」

「その発想はなかったわ。さすがジン様」


 転移魔法陣で食事を送り込んだり、場合によっては『アヴァロン』に戻ってきて休む、という発想に感心するゴウとルビーナ。


「それなんだよな……どうして今までされてこなかったんだろう」

「うーん、やっぱり先入観じゃないかしら?」

「僕らもそうですしね」


 つまり、調査というものは現地で寝泊まりして行うものというイメージが強いため、夜は自分の部屋に戻って寝るという発想が出てきにくいのでは、というわけだ。


「調査に先入観は邪魔だと言っている割に、その先入観に囚われていたんだろうなあ」

「そうですね」

「そうね」


 こんな経験も2人を成長させてくれるだろうなと、仁は今回の仕事を振ってよかったと思っていた。


*   *   *


 午後4時、仁は点検をするという建前で『ハリケーン』の船室へ。

 そこで老君から報告を受けた。


「そうか、2人もいい仕事をしたな」

『はい、御主人様(マイロード)

「これからも驕ることなく頑張って欲しいもんだ」

『あのお2人なら大丈夫だと思います』

「そうだよなあ」


 ゴウとルビーナ。

 仁はここ数ヵ月2人を見てきて、お互いに補い合い、高め合うことができると感じていた。


「仕事だけでなく、人生のパートナーになるのか……はまだわからないけどな」


 ゴウは14歳、ルビーナは13歳。

 あと数年は今の関係でもいいか、と思う仁であった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。

     https://ncode.syosetu.com/n5250en/

     お楽しみいただけましたら幸いです。


 20221029 修正

(誤)「どんな感じになったんですか? 向学のために教えて下さい」

(正)「どんな感じになったんですか? 後学のために教えて下さい」

(誤)「これからも奢ることなく頑張って欲しいもんだ」

(正)「これからも驕ることなく頑張って欲しいもんだ」


 20221030 修正

(誤)「調査に先入観は邪魔だと言っている割に、その先入観に捕らわれていたんだろうなあ」

(正)「調査に先入観は邪魔だと言っている割に、その先入観に囚われていたんだろうなあ」

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>「指示は2人が出すんだ。俺はそれに従おう」 好きなようにやるが良い!責任は私が取る!…という指示を出した場合にどうなるのか気になります。 自分より優れた人に指示を出せるなら、任せた方が良い結果になる…
『読み返しを楽しませていただいています』 ≫「指示は2人が出すんだ。俺はそれに従おう」 ≫今回はマキナが2人の下で働くことになる。 ≫ある意味、仁からの『卒業試験』である。 ≫庇護されるだけであった…
[一言] (誤)「調査に先入観は邪魔だと言っている割に、その先入観に捕らわれていたんだろうなあ」 (正)「調査に先入観は邪魔だと言っている割に、その先入観に囚われていたんだろうなあ」 思考の拘束は「囚…
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