90-07 土建ゴーレム
昼食時は仕事を忘れてリフレッシュ……が理想だが、なかなか現実はそうもいかず。
皆半分上の空で、早々に食事は終わってしまう。
「おいおい、ちゃんと頭を休めておけよ?」
「……わかってます」
「午後の作業は1時からだからな?」
「はーい……」
ちゃんと昼休みを過ごせたのは仁とアーノルトくらいだった……かもしれない。
そして昼休みの後、午後1時。話し合いの続きが開始された。
続きといっても、メンバーが異なる。
というか、より専門化した話し合いということで、幾つかのグループに分かれ、それぞれ小会議室で話し合うことになる。
仁が参加するのは最新技術の検討会である。
参加者は、仁の他にはアーノルト、エイラ、グローマ、元ゴー研室長のラスナート・ハイルブロン。
アーノルトの専属自動人形、チェルが記録係を務めてくれる。
「ジン、早速だけど、巨大ゴーレム『ジャイガント』の使えそうな技術について教えてもらえるかい?」
アーノルトが切り出した。
人数が少ないので議長は決めていないが、彼が進行役をすることに誰も異論はなかった。
「もちろん。まずは何といっても『重力魔法』の使い方だな」
「うんうん。……で?」
エイラが早く早くと目で訴えかけている。
「例えば腕。動かす際に、動く方向に働かせて負担を軽減し、止める際には逆方向へ働かせて関節や駆動系への負担を減らしている」
「……それって、めちゃくちゃタイミングが難しくないか?」
「エイラの言うとおりだよ。ただ……最良の状態に持っていくなら厳密な調整を必要とするわけだが、そこそこなら少し早め早めに作動させておけばいい」
動作の効率は落ちるが、制御はずっと楽になる、と仁は説明した。
「実際、理論上の最適値の……7割か8割くらいで動いていたんじゃないかと見ている」
「なるほどな」
「ジン殿、じゃあ調整する時間が取れれば、もっと効率を上げられたかもしれないと?」
「グローマの言うとおり、効率はよくなったろうな」
「うーむ……」
「俺としては、この部分を魔法陣化することで、全体から見た効率……というより制御を楽にできるかもしれないと思ったけどな」
「え? 魔法陣にしたら細かい制御ができなく……ああ、そうか。できないんだからしなくていいわけか」
エイラは発言の途中で仁の意図に気が付いたようだ。
「そう。できないんだから無駄な制御系を省いて、その分をもっと性能向上に回せばいい」
「例えば?」
「制御核の高性能化とか、精密動作性とかかな」
「なるほどな。だけど、それでいいのか? 重力魔法で重さを軽減して動作時の反動を小さくしているんだろう? それがいい加減でいいのか?」
仁はそれについて、より詳しく答える。
「それについては前提条件があるな。……素材を厳選して、重量を減らして強度を上げることだな」
「やっぱりそれか」
『ジャイガント』に使われていた金属はほとんどが鋼鉄であった。
これを軽銀もしくは64軽銀に置き換えれば、重量は半分以下になる。
よって重力魔法で軽減する重量も半分以下。
強度も上がっているから、多少ラフな制御でも大丈夫だろう。
「なあ、ジンとしては、こういう『巨大ゴーレム』って必要だと思うか?」
「エイラはどうなんだ?」
「あたしは……ゴーレムとしては必要ないと思ってる。でも、土木建築には必要なんじゃないかとも思っているよ」
「そういう用途なら、俺も賛成だ」
「うん、そうだよな」
「よし、土建用ゴーレムとして開発しよう」
「おう……?」
仁が宣言すると、ややハテナ顔のエイラが。
「俺が今思いついたことを言うとだな、重力魔法があれば重い資材を運ぶのに便利だし、高い場所へも浮かんで運べばいいし、落下事故も重力軽減で防げる……かもしれない」
「あ、なるほど」
「動作は機敏である必要もないしな。ただ、ある程度精密動作性があったほうがいいかもな。石積みを正確に作れるとかな」
「さすがジンだ。面白い着眼点だなあ」
「はは、ありがとう」
元々、この前貸し出した大型ゴーレムがそういう性格のものだったろうし、と仁は結んだ。
さらに続けて仁は説明していく。
「それから、『ジャイガント』は『ギガース』の派生ではあるんだが、幾つか備わっていない機能がある」
「ああ、確か外部の魔力素を取り込んで自分のエネルギーにするって言ってたよな」
「そう。大気中だけでなく接触した相手の魔力素も吸収してしまうんだが、それはできなくなっている」
「そうなのか」
「他のゴーレムと隊列を組んで行動するとなったら、その機能は邪魔だろうからな」
「確かにそうか」
「だけど、『ギガース』の強みを放棄したわけだからね」
アーノルトが口を開いた。
「それだけの意味はあったのかな?」
「アーノルトはどう思っている?」
「うーん、巨大である、というだけで敵に威圧感を与えられるからね。そういうゴーレムが複数体迫ってきたら、やはり怖いだろうな」
「つまり、旗機……というのか、部隊の象徴、というのか……そんな感じで運用することを考えていたと?」
「いや、僕の想像だけどね」
とはいえ、当時を知るアーノルトの意見である。そう大きく的外れではないだろう、と仁は思った。
「加えて、いざとなったら戦闘にも使える……か」
「そうそう」
生産コストや工数を考えたら、そうそう量産できるものではないので使い潰すのももったいない、ということになる。
ならば用途は……と考え、そういう結論を出したとアーノルトは言った。
「参考になったよ」
「いやいや。……で、他に何か気が付いたことは?」
「ああ、見ていたけど『変形動力』もかなり滑らかだったな」
あれだけのデカブツを動かす方式として『変形動力』は適しているわけだが、その動作が思ったより……過去に相対した『ギガース』『ギガース改』よりも滑らかだった、と仁は説明した。
「ほほう……何か秘密があるのかな?」
「そこまではまだ調べていない。調査プロジェクトができたらその面々が調査するだろうさ」
「今から楽しみだな」
詳細調査は老君に任せたため、仁自身、全部を調べきってはいない。
というか暇ができたらじっくり解析したいなあと考えているのだ(そう思っていて実現したためしは……ほとんどない)。
ならば、エイラたちが調べる際に手伝いに来ればいいだろう……と密かに考えていたりする。
過去の技術を調べて未来につなげる。
『アヴァロン』も本格始動しようとしていた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日10月27日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20221029 修正
(誤)ちゃんと昼休みを過ごせたのは仁、ゴウ、ルビーナ、アーノルトくらいだった……かもしれない。
(正)ちゃんと昼休みを過ごせたのは仁とアーノルトくらいだった……かもしれない。
この時ゴウとルビーナは『パールス島』にいたはずなので(90-09、さかのぼってこちらを修正)




