90-06 会議 3
『技術指導できる自動人形を各国に派遣する』という方針が決定した。
次はその自動人形について、押さえておくべき仕様を決める話し合いである。
「少なくとも、勝手に弄られないようにしないといけません」
アーノルトが前提となる条件を発言した。
「その場合、自爆……は危険なので、制御核が自壊するよう設定するのはどうでしょう」
仁がそれに応じる。
「いいですね。加えて、先ほども出た『特殊な信号』を発信するようにしておけば……」
「なるほど、それもいいですね」
「重要機密を悪用されないためですから、それくらいは必要でしょう」
「その場合、ボディの構造は『並』にしておかないと、そちらの技術を盗まれる可能性があります」
「それは問題ないな」
次々に意見が出てくる。
「防衛力強化ですから、結界を装備し、そのやり方を指導する、でいいのですかな?」
「やはりそちらの方向性ですねえ」
自動人形そのものに最新技術を搭載し、数十体を貸与する、というのはリスキーだ、という意見が多かった。
「ゴーレムではいけないのですかな?」
「そこは、より人間に近くしておいたほうが、指導される側の抵抗が少ないと思いますよ」
「なるほど、確かにそうかもしれませんな」
「基本は『レーラー』でいいでしょう」
などという意見も交わされた。
ちなみに『レーラー』は、仁が『アヴァロン』に寄贈した、『アドリアナ式』を指導する自動人形である。
「あとは、どのレベルの技術供与をするか、ですね」
アーノルトは、この線引きが難しい、と言った。
それを受けて仁が口を開く。
「『熱線収束砲』と『物理結界』は決まりでしょうね」
「それはそうでしょうな」
『熱線収束砲』は既に供与した技術であるが、各国共開発・実用化が遅れている。
それは『貰い物』の技術を軽んじたためである。
魔法技術者は得てしてプライドが高いのだ。
だが、今回のことで各国……少なくとも3国……は身に沁みたらしい。
今度こそ、積極的に学んでくれるだろう、と皆期待していたのだった。
* * *
「では、これ以上の詳細は開発チームに委ねるとしたい。次は……」
決めるべき議題は多い。会議はどんどん進んでいく。
「汎用高速機『フェニーチェ1』と輸送機『ストーク』の生産及び各国への販売についての対応について詳細を頼む。今はいいが、この先、生産ラインはどうなのだね?」
これに答えたのは元航空研室長のロア・エイスカー。
「はい。最初に簡単に述べましたように、各国からの注文が増えております。生産ラインの稼働率は80パーセント程度です。今はまだ余裕がありますが、逆に言うとこれ以上増えますといっぱいいっぱいになるでしょう」
「やはり、そうであろうな」
余裕分が20パーセントでは、何かトラブルがあったらオーバーフローする可能性が大である。
できれば余裕分は30パーセント以上を確保したいと言うロア・エイスカーであった。
「生産ラインを増強した場合、何かデメリットは?」
「今のところは特にございません」
秘書自動人形のマノンが補足説明を行ってくれた。
「今後もしばらくは増産体制が続くと思いますので、10パーセントほどの増強は必要になると思われます」
「そうか。わかった、手配しよう」
「ありがとうございます」
* * *
「では、いよいよ最後の議題となるが、『巨大ゴーレム』についての技術はどこまで各国に公開すべきだろうか?」
これから解析を行うので、詳細までは必要なく、大要を決めておきたいとトマックス・バートマンは言った。
まず、仁が発言する。
「基本的には全て、でしょう。3国はほぼ全てを見ておりますので、秘匿するのは難しいと思います」
少し済まなそうに仁が言った。
「うむ、そうだろうな……」
仁が倒した巨大ゴーレム『ジャイガント』はその場に残してきたため、3国の面々……おそらく技術者も中にはいたはず……はその残骸を調べている。
あの場では、さすがに『ハリケーン』で吊り上げて持ち帰るのはやりたくなかったし、かといって貴重な巨大ゴーレムを跡形もなく破壊してしまうのも憚られた。
仁も聖人君子、神仏ではない。間違いも勘違いもする人間である(異論はあるかもしれない)。
(あの時、もう少しなんとかしようがあったかなあ……)
……と、少し後悔しても仕方がないのかもしれない。
「ざっと見たところ、特筆すべきは『重力魔法』の運用の仕方ですね」
気を取り直して、仁は説明を続ける。
「『魔導式』や『魔法制御の流れ』、それに『命令』の使い方などは決して褒められたものではないようですが、アイデアというか、使い所は参考にすべきものが多いですね」
「ほうほう」
「曲がりなりにもあの巨大ゴーレムを『浮かす』ことに成功しているのですから」
「なるほど、確かに」
「まあ、『ギガース』の技術はあまり応用できないでしょうけれど」
応用してほしくもない、と思う仁である。
今の蓬莱島なら『ギガース』が100体いても瞬殺できるわけだが、各国の軍はそうではない。
「それら以外にも、『魔導大戦』で途絶えた技術もいくつか見られます。あの巨体を動かせるほどの『変形動力』とかね」
「おお」
「加えて、セルロア王国のゴーレムが見せた『同調魔法』についても、できれば公開してほしいと思っています」
「ジン殿、それについては別件扱いになりそうです」
「そうですか」
これを応用できれば、現代の魔法技術に大きな貢献ができるはずである。
それを開発したセルロア王国技術陣は讃えられてしかるべきだ、と仁は思っていた。
「では、これで午前の部を終わります」
時刻は午前11時45分。
午前中の会議はこれで終了、であった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20221026 修正
(誤)各国に『技術指導できる自動人形を各国に派遣する』という方針が決定した。
(正)『技術指導できる自動人形を各国に派遣する』という方針が決定した。
(誤)抑えておくべき仕様を決める話し合いである。
(正)押さえておくべき仕様を決める話し合いである。
(誤)今はまだ余裕がありますが、逆に行くとこれ以上増えますといっぱいいっぱいになるでしょう」
(正)今はまだ余裕がありますが、逆に言うとこれ以上増えますといっぱいいっぱいになるでしょう」




