90-05 会議 2
打ち合わせの次の議題は汎用高速機『フェニーチェ1』と輸送機『ストーク』の生産及び各国への販売についてである。
これについては元航空研室長のロア・エイスカーが説明を担当する。
「マキナ殿、ジン殿の支援により、資材の不足も解消され、購入ルートも正常化しましたので生産ラインに今のところ問題はありません。そして輸送機『ストーク』の受注量が増えております」
「それに関しまして、先日の『軍事演習事件』以降、各国からの受注量が平均で1.4倍に増えました。最も増えたのはセルロア王国で2倍に。クライン王国からは1.7倍、エゲレア王国も1.5倍です」
秘書自動人形のマノンが補足説明をしてくれた。
「高速輸送機の重要性を認識したということかな」
「そういうことでしょうね」
「同時に『フェニーチェ1』の方も1.2倍になっており、各国で防衛費が増額されていることがうかがえます」
「ふむ」
これについては『アヴァロン』がとやかく言うことではないので、現状報告で終わり。
本題はこれを踏まえての技術供与だ。
「こうした事件がこれで終わり、という保証はない。ゆえに各国、防衛力の貧弱さを痛感したというところだろう」
それで『アヴァロン』に対し、より優れた技術を供与してもらおうというわけだ。
「これはどう考えているかね、アーノルト君?」
議長であるトマックス・バートマンに名指しされ、アーノルトが答える。
「はい、自分の方でもいろいろ検討してみました。その結果、幾つかの案をまとめてあります」
「さすがだな。聞かせてもらおう」
「昨夜ジン殿といろいろ話をしまして、その中から出てきた案として、『アヴァロン特製のゴーレムを貸与する』というものが1つ」
「ふむ。続けてくれたまえ」
「はい。『ブラックボックス化した魔導装置を必要とする結界系の技術供与』、これが2つ目です」
「うむ」
「あと1つ、『技術指導できる自動人形を各国に派遣する』というものです」
「なるほど、どれも濫用を防ぐ効果はありそうだな」
トマックス・バートマンは満足そうに頷いた。
「この件について、何か別案はあるかな?」
他の参加メンバーにも尋ねるトマックス。
「それでは意見を1つ」
「うむ、マーカス君」
情報局局長マーカス・ハガードが挙手をし、発言を行うことになった。
「希望者を募り、『アカデミー』で教育するのではいけませんか?」
「悪くはない。が、教育のため、マンパワーを割くのはいただけないな」
「いえ、メリットもあります。各国の技術レベルをこちらが把握することができるという」
「なるほど、滞在している間に情報収集するというのか」
「そういうことです」
「うむ。他に意見は?」
「では、1つ」
「サホ君、聞かせてくれたまえ」
「ええ。……各国に『世界警備隊』の1部隊を駐屯させる、というのはどうなのでしょうか。もちろん、彼らの生活に関しては各国が負担する、ということで」
「悪くはないが、それができるほど『世界警備隊』の規模は大きくないのだ」
西にあるミマカ公国には、例外的に駐留隊が存在する。
が、他の国々に送り込めるほどには『世界警備隊』の総数は多くない。
その他にも意見が出されたが、特筆するほどのものではなかった。
「では、まとめに入ろう」
議長であるトマックス・バートマンが宣言する。
「いろいろ意見が出たが、まずは2つまで絞ろうと思う。各自2度まで挙手をしてくれ」
少し変則的な多数決で決めることになった。
結果。
『アヴァロン特製のゴーレムを貸与する』と『技術指導できる自動人形を各国に派遣する』が残った。
どちらもアーノルトの案だ。
「この2つについて、簡単な方向性の議論を行ってもらいたい。その上でもう一度多数決を取ることにしよう」
と、議長トマックス・バートマンは言った。
「ええと、アヴァロン特製のゴーレム、そこに含まれる技術は何と何になるのでしょうか?」
サホ・ショマスが質問する。その内容を検討することも重要だからだ。
「基本的には『守るための武装』ということになります。攻撃については武装よりも、指導できる知識のほうがいいと思っています」
「なるほど、『ジャイガント』と言いましたか? 巨大ゴーレムを倒したのはジン殿の『ハリケーン』が搭載した『熱線収束砲』だったわけですからな」
『熱線収束砲』の技術データは各国に通達済みである。ほとんどの国は既に試作済みの筈だ。
「ええ。『指導』という形で、そうした兵器の完成度を高める手伝いができるといいのではないかと思います」
「しかし、武装の強化は危険ではないですかな?」
「それはあると思います。ですので、各国、すべての国に同レベルの兵器を持ってもらうことが第一」
アーノルトは補足説明を行った。
「なるほど」
「第二に、そうした兵器を防ぐことのできる結界を貸与する、ということです」
「ふうむ、『物理的』な結界ですな」
「そういうことです。矛と盾、どちらをより強化するか、となれば『盾』でしょう」
「確かにそうですな」
「ですが、先日現れた『巨大ゴーレム』、ああした脅威がもう二度と現れないという保証はないわけです。そしてその際、我等やジン殿、マキナ殿の救援が間に合うという保証はありません」
「それゆえの技術指導による武装強化ですか」
「そう考えています」
「なるほど」
「特殊な措置として、故障した時や分解された時には特殊な信号が発信されるようにし、不正な改造や利用を防ぐようにしたいと思います」
「それはいいですな」
ここで議長から、もう1つの案について話し合うようにとの要望が出た。
「ではこの辺で、『技術指導できる自動人形を各国に派遣する』について話し合ってもらいたい」
「……ええ、こちらについてはよりわかりやすいかと思います」
「これにも不正な改造を防ぐよう、故障した時や分解された時に信号を発するようにするべきですね」
「必須ですな」
「軍用の技術だけでなく、文化的な教育もできたらいいかもしれません」
「それは賛成です」
数々の意見が飛び交った。
「では、最終的な多数決を行う」
その結果、採用されたのは『技術指導できる自動人形を各国に派遣する』という案であった。
「では、その詳細は担当チームに任せるとして。おおよその方針を決めたいと思う」
会議はまだ続いていく。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20221025 修正
(誤)クライン王国からは1,7倍、エゲレア王国も1.5倍です」
(正)クライン王国からは1.7倍、エゲレア王国も1.5倍です」




