90-04 会議 1
7月16日。
『アヴァロン』の『アカデミー』で、関係者による今後の活動についての会議が行われた。
議長は最高管理官トマックス・バートマン。助手はマノン、書記はシモーヌ。
参加者は『アカデミー』学長セイバン・イライエ・センチ、アカデミー学長補佐サホ・ショマス、技術指導主任アーノルト。
『世界警備隊』から陸戦隊隊長レヴェラルド・ダーテス、第2陸戦隊隊長ハリー・モンドス、飛行隊隊長ジャン・リグパタ、情報局局長マーカス・ハガード。
それに現体制になる前の『元』研究室長であるラスナート・ハイルブロン(元ゴー研)、ロア・エイスカー(元航空研)、ハーシャ・クラウド(元医療研)他。
加えて、特別ゲストとして今代魔法工学師、仁である。
「それでは、今後の活動についての打ち合わせを開始する」
議長であるトマックス・バートマンの宣言で会議は始まった。
「まずは大まかな道筋をセイバン殿から説明してもらう」
「……ご指名いただきました『アカデミー』学長のセイバン・イライエ・センチです。今現在『アカデミー』ひいては『アヴァロン』が抱えている懸念事項は、『航空機の製造と販売』『巨大ゴーレムの解析』『『X基地』関係の決着』です……」
セイバンはわかりやすく簡単な説明を行った。
「ありがとう。では、『航空機の製造と販売』について、ロア・エイスカー殿に解説してもらおう」
「はい。ロア・エイスカーです。……新たに開発された航空機2機種……汎用高速機『フェニーチェ1』と輸送機『ストーク』の生産及び各国への販売が当面の任務となります……」
ロア・エイスカーもまた、簡潔に現状の説明を行う。
「うむ。では『巨大ゴーレムの解析』について、ラスナート・ハイルブロン殿、頼む」
「はい。ラスナート・ハイルブロンです。……先日ジン殿が発見、整備してくださった『インディゴ島』地下にある施設で、『魔導大戦』時に軍が作りかけていた巨大ゴーレムの技術を解析し、習得することが目下の目標であります……」
「アーノルトです。『X基地』関係については既に……」
そして『決着』についてはアーノルトが説明を行った。
「……これで、おおよその道が見えてきたかと思う。同時に、派生する作業や業務もある。これについてはジン殿に説明していただく」
「はい。魔法工学師、ジン・ニドーです。……ただいまトマックス殿が言及された派生業務について簡単に説明致します」
仁は『パールス島』と『インディゴ島』の整備……『アヴァロン』が管理する上で必要な施設を追加で建設する必要があると説明した。
「元からあった施設については、必要最低限の整備は終わっています」
「おお、さすがジン殿。……説明ありがとうございます」
と、これで前提となる説明フェーズが終了した。
* * *
「それでは本日の本題に入ろう」
トマックス・バートマンが宣言し、いよいよ話し合いである。
最初の議題は『『パールス島』と『インディゴ島』について』。
この2つの島とその施設については、『臨時世界会議』……魔素通話器によるオンライン会議……で『アヴァロン』の管理下に置くことが承認された。
その対価は、『得られた技術の公開』である。
これに関しては、仁の事前調査で危険なものはない(巨大ゴーレムについては今更である)ため、了承されている。
まず行う必要があるのは、2つの島を居住可能にするところから、ということになる。
必要最低限の整備は仁によって済んでいるので、インフラを始めとする、長期滞在可能な施設の設置だ。
「ううむ、人的余裕がなさそうですな」
「どうするべきか……」
「ここをなんとかしないと、それに続く業務が……」
こういった発言を聞いた仁が助け舟を出した。
「ええと、それについては、俺と……この場にはいませんがマキナが請け負いますよ」
「おお、そうなのですか」
仁としては『アヴァロン』に任せようと考えていたのだが、ことここに至っては致し方ない。
仁とマキナになら、全面的にお任せしようということが即決で決まった。
詳細はこの場ではなく、『総務局』『医療局』『食料局』『設備局』などと詰めることになろう。
* * *
「では、次の議題に移る。……『インディゴ島』で見つけた巨大ゴーレムの調査だ」
居住施設が未整備なため、担当者たちには不便を強いることになるだろうが、とトマックス・バートマンは言った。
が、
「いや、そこは自分がすぐにでもサポートしますよ」
と仁が言ったので、居並ぶ者たちは皆喜んだ。
「おお、ジン殿がそう言ってしてくださるなら心強い」
「快適に過ごせそうですな」
仁がこういう面には拘りがあることを多くの者が知っていた。
なので仁が引き受けてくれれば大満足なのである。
「では、臨時の居住施設に関してはジン殿にお任せすることになる。これでマンパワーを巨大ゴーレムの調査に集中させることができるだろう。そこでメンバーだが、アーノルト君、どうするのがいいかな?」
「はい、そうですね。基本的には元『ゴー研』のメンバー、それに元『魔法学研究室』。転移魔法陣を設けますから、必要に応じて元『文化人類学』『民俗学』『歴史』『生活科学』などのメンバーも呼ぶといいでしょう」
「なるほどな」
これにも異論が出ることはなく、具体的なメンバーは後ほど個別に指名することになる。
が、エイラとグローマは決まりだろうな、と仁は考えていたのだった。
* * *
「それでは次の話題だ」
このメンバーでの話し合いは非常にスムーズに進む。
……ここまでは。
「『パールス島』には今、2つの魔導頭脳『アイオーン』と『アスティノ』があります。今現在、この2つを情報のやり取りができる程度に連結しています。この先、『アヴァロン』ひいては世界に役立てたいと思っております」
仁が現状を説明していく。
「そこで、3つめの魔導頭脳を建造し、3つのユニットを1つに統合したシステムとすることを提案します」
「おお」
「なるほど」
「なお、このプロジェクトリーダーにはアーノルト殿を推薦いたします」
さすがに、この提案はすぐに受け入れられることはなかった。
「3つにする意味は何ですか?」
「意思決定を迷った際に多数決で決められるようにするためです。また、普段は負荷を分散し、ユニット単位での整備もしやすくなります」
「なるほど。ですが、決定に時間が掛かるようになるのでは?」
「それは確かにあると思います。しかし魔導頭脳でその遅延は実用上問題になるでしょうか?」
「うむ……確かに」
「そもそも、3つの組み合わせで性能が上がるのですか?」
「そうだな。足し算程度の向上ではあまり意味はないと思うが、そこのところは、どうなんです、ジン殿?」
「そこは、相乗効果を期待しています。マルチタスク処理能力の向上だけでなく、並列処理もできますし、万が一のトラブルにも強くなります」
「なるほど」
「魔導頭脳の暴走に関しましても、『アスティノ』はゴウとルビーナ、『アイオーン』は自分、『3つめ』はアーノルト殿が管理者になることで、互いを牽制することも可能です」
「おお、そういう利点もありますなあ」
と、こうした議論の後、『3つめ』の魔導頭脳を建造する方向で話はまとまったのである。
詳細は後日だ。
まだ議題は残っており、打ち合わせは終わらない……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20221025 修正
(誤)仁がこういう面でには拘りがあることを多くの者が知っていた。
(正)仁がこういう面には拘りがあることを多くの者が知っていた。




