90-03 自由な話し合い
元『ゴー研』メンバーと仁との自由な話し合いはまだまだ続いている。
「少し話はそれるけれど」
アーノルトが口を開いた。
「先日の演習で、巨大ゴーレム……『ジャイガント』1体に、3国の連合軍が敵わなかっただろう?」
「ああ、結果的にそうなるな」
「あれの技術も解析後、公開することになるだろうね」
既にクライン・セルロア・エゲレアの3国は『巨大ゴーレム』を知ってしまっている。
それを今更秘匿することもできないのだから、いっそのこと公開してしまえ、というわけだ。
「3国にとっては、あの戦いは相当ショックだったようでね」
「まあ、そうだろうなあ」
とはいえ、3国の技術が『ジャイガント』に全く通じないということではないと仁は思っている。
あの場合は人的損害を出さないことを第一に考えていたのだから仕方ない面もある。
損害を無視して攻撃し続ければ倒せた可能性もあるのだ。
ただそれを行う前に仁が介入しただけで。
といっても、最終的に仁が使った『熱線収束砲』は『アヴァロン』へ技術供与済みの兵器である。
そして『アヴァロン』から各国へ技術資料が行き渡っているはず。
つまり、各国で同じものを作れるはずなのだ。
「今は防御も攻撃も中途半端、という認識になったらしい」
「まあわかる気もするが」
「それで、トマックス殿を通じて、『アカデミー』の技術提供を求めてきたそうだ」
「具体的には?」
「防御系だね」
「それならまあ、いいか」
攻撃兵器の技術供与を要求されたら断ったほうがいいと仁は思っていた。
少なくとも1国集中はまずい、と。行うなら全部の国に同じ技術を、と考えている仁なのである。
「防御というと結界か」
「そうなるね。特に物理的な結界だろうね」
そうした結界の初期型を、かつてビーナが作っていたなあ、と仁は思い出した。
あれは規模が小さいため、いろいろと運用上の問題があったが(空気も通らないため中にいる者が酸欠になるなど)、十分規模が大きければ優秀な結界である。
今はそのレベルからも後退してしまっていることが、少し悲しい仁であった。
「明日はそうした話も打ち合わせる予定なんだ」
「必要だよなあ」
チェルの淹れてくれたお茶を飲み、喉を潤してから仁は再度口を開いた。
「『アヴァロン』から各国へ、戦闘用……というか、戦闘系のゴーレムを一定数貸し出す、というのはどうなんだろう?」
「もちろん性能は最高クラスで、だね?」
「そういうことになるな。ただしセキュリテイは厳重にして、弄ろうとかバラそうとかできないようにする必要があるだろうし、何かあったら『アヴァロン』宛ての信号が発信される、なんてのもいいかもな」
「お、なるほどね」
ジンとの話は有意義だよ、と言ってアーノルトは笑った。
「そうそう。ジンの話はいろいろためになるからなあ」
エイラもまた、アーノルトの言葉に賛同した。
「そりゃあジンさんは今代の『魔法工学師』ですものね。お話を聞くことができるのはすごく幸運だと思いますよ。普通はお話ししたくてもできません」
カチェアが冷静な分析を入れる。
「それも含めて『縁』だよなあ」
「縁、ですか?」
「そうさ。パンドア大陸で君たちに出会っていなかったら、また違った今日があったかもしれない。『もしも』なんていっても仕方ないけどな」
「そうだよな。……で、もっと実用的な話をしよう。……ジン、『アイオーン』だっけ? そいつの『管理者』になったんだって?」
「成り行きでな」
実際は『至上の主人』であるが、意味合いも立場も『管理者』と言って差し支えない。
「ゴウとルビーナが『アスティノ』の『管理者』だから、監視し合う、という意味ではよかったのかもな」
「ジンの言うように、そういうことになるか」
「2つの魔導頭脳を統合、というか連動させて、仮想的に1つの魔導頭脳として扱ったらどうかと考えているんだ」
「へえ?」
「今日、『アスティノ』と『アイオーン』の情報連結をしてきたから、もう少しだけ手を加えれば実現できるぞ」
「それは面白そうだ」
グローマ・トレーも話に乗ってきた。
「僕としては3つのユニットで相互監視を行うのがいいと思っているんだが」
「それはそれでバランスがよさそうだものな」
「ジンもそう思うかい?」
「ああ。……そうだな、決定時に多数決を採れることで、対立しがちな2ユニットの時より決定・決断が早くなるんじゃないかな?」
「なるほどな」
「だとしたら、その魔導頭脳は『アカデミー』で作るべきだろうな」
ゴウ&ルビーナで1つ、仁が1つ。そこにもう1つ加えるなら、グローマ&エイラ、あるいはアーノルトのユニットを追加すべきだろう、と仁は言った。
「お、わかってるね、ジン殿」
「そりゃな」
魔導大戦を知るアーノルトだからこそ、魔導大戦時の魔導頭脳とユニット化できる魔導頭脳を組み上げることができるだろう、と仁は言った。
「しかし、そうなるとエイラ君もグローマ君も忙しすぎるな」
「なんで……ああ、そうか」
巨大ゴーレム『ジャイガント』の調査と、その技術の解析もやりたいだろう、というわけだ。
「ああ……悩ましいな……」
「まったくだ……」
エイラとグローマは頭を抱えている。
仁とアーノルトはそれを見て苦笑い。
「……午前と午後で入れ替わる、くらいかなあ」
ぼそっと仁が言う。
だが、それは茨の道だ。
超高度な2つの作業を午前と午後で入れ替えながら進めなければならない。
肉体的な疲労よりも精神的な疲労が大きいだろう。
それ以前に、どちらも中途半端な結果に終わる可能性が高い。
「そんなことができるのはジンくらいだよ」
「うん、まず、無理だ」
エイラもグローマも身の程を知っていた。そして作業を受け持つことの責任についても理解している。
だから、感情に任せてやりたい放題に手を出すことはしないだけの自制心があった。
「……」
仁も考え込む。
間違いなく、グローマとエイラは『アカデミー』のトップ2だ(ゴウとルビーナ除く)。
新たな魔導頭脳の設置と巨大ゴーレムの調査に、その2人を関わらせないのはどう考えても無駄である。
なんとかできないものかと、仁はさらに考えた……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20221023 修正
(誤)ジンとの話は有意義だよ、と言っれアーノルトは笑った。
(正)ジンとの話は有意義だよ、と言ってアーノルトは笑った。




