90-02 新体制
7月15日、仁たちによる『パールス島』の再整備が終了した。
最終的に仁が『職人』40体も投入したので2日掛からずに整備が終わったのだ。
「転移魔法陣を設置して、『アヴァロン』と楽に行き来できるようにしておこう」
「いいですね」
そこまで行った仁は『ハリケーン』で『アヴァロン』へ向かう。
『アヴァロン』側にも転移魔法陣を設置しなければ移動できないからだ。
「『パールス島』の所有権はどうなっているんですか?」
『ハリケーン』内でゴウが仁に質問した。
「ああ、そのことか。『インディゴ島』と併せて、『世界会議』で『アヴァロン』に移管する、ということで話が付いたようだぞ」
「え、会議が行われていたんですか?」
「いや、『魔素通話器』会議な」
「ああ、そういう……」
『アヴァロン』をハブの中心として、各国を『魔素通話器』で結ぶことで、臨時の『世界会議』を行うことができるようになったのだ。
それを行った結果、今回の騒動の締めくくりとして、『パールス島』と『インディゴ島』の管理は『アヴァロン』に任せることになったというわけである。
その一環として、ゴウとルビーナにも参加してもらい、仁たちが『パールス島』の整備を行ったわけだ。
一方、『インディゴ島』の施設の整備は『至上の主人』である仁が7月10日に行っている。
こちらは経年劣化した箇所の整備にとどめ、本格的な整備は『アヴァロン』の関係者に委ねることになっている。
なので『ゴー研』のメンバーが特に大張り切りである。
「巨大ゴーレム……『ジャイガント』と言うらしいけど、あの運用技術を取り入れて昇華できればいいな」
「ジン様ならすぐやってしまうのでは?」
「やりたいとは思っているよ。でもな、まずは現実的な技術を積み上げていかないとな」
人から教わった、与えられた知識、技術は脆弱で、何か起きると失伝してしまいやすい。そのことを仁は、過去に学んだ。
「その一環を、ゴウとルビーナにも担ってもらいたいんだ」
「頑張ります!」
「頑張るわ!」
やる気を漲らせる2人であった。
* * *
同日夜、午後7時に『ハリケーン』は『アヴァロン』へ到着。
『ハリケーン』を空港に預け、仁は最高管理官トマックス・バートマンに挨拶と報告を行う。
『パールス島』と『インディゴ島』の必要最低限の整備が終わったことについて、トマックスは仁に幾度も礼を述べた。
「ゴウ君とルビーナさんも、客員とはいえ『アヴァロン』に所属してくれるということで喜ばしい限りですよ」
「2人をよろしく頼みます」
「それはもちろん」
仁は2人のことをトマックス・バートマンによく頼んでおく。いくら才能があっても2人はまだ子供、やはり心配なのだ。
その後、仁は転移魔法陣を所定の場所……『転移移動室』に設置し、その日の公務を終えた。
そして仕事をやり終えた仁は、勝手知ったる『アカデミー』の居住区へ礼子とホープを連れて向かうのだった。
* * *
『アカデミー』の居住区、寄宿棟は地下にある。
学生は4人部屋、研究員は1人部屋となっている。
ゴウとルビーナは客員とはいえ、研究者には変わりなく、当然1人部屋だ。シャワー、トイレ付き。
風呂は大浴場を使うことになる。
居心地はかなりいい、と定評があるが、地下なので外が見えないのが唯一の欠点だった。
そんな区画に客室もある。
堅苦しい貴賓室より、こうした気の置けない部屋の方が仁の好みなのだ。
その気になれば転移門で蓬莱島へいつでも戻れる仁である。
小さな手荷物を客室においた仁は、元の『ゴー研』へ向かった。
エイラやカチェア、グローマらに会うためである。
『元の』というのは、今の『アカデミー』の体制は一新され、『研究室』という枠組みを解かれ、その時時に応じて『チーム』分けされて研究を行っているからである。
とはいえ、メンバーの区分けがわかりやすいこともあって、『ゴー研』『航空研』などと旧名称が相変わらず使われている。
「やあジン、よく来てくれたね!」
元『ゴー研』にはアーノルトとチェルもいた。
「ちょうど、ジンが手に入れてくれた『インディゴ島』の施設について話をしていたところなんだよ」
「ジンから直接話を聞けるというのは嬉しいな」
「ですよねえ。情報の鮮度が違いますし」
「ジン様、今お茶を用意致します」
順にエイラ、カチェア、チェルである。
「どうぞ」
「ありがとう」
ところで、『アヴァロン』は食事や飲み物には拘っている。
一般人の生存圏から離れた環境に身を置く人たちへの心配りだ。
「今回、例の演習に、土木工事用の大型ゴーレムを貸し出したんだが、例の『ジャイガント』とかいう巨大ゴーレムにやられたんだよな」
「あれは戦闘用じゃなかったからな。……そもそも、巨大ゴーレムって、意味があるのかな?」
エイラとグローマはそんな疑問を抱いているらしい。
「大きいといろいろ不都合な点が出てくるしな」
仁も実用という点では同じ意見である。
「動きは鈍くなるし、資材が大量に必要になるし、使い所が限られるし」
「そうだよなあ。今回だって、ジンの『ハリケーン』が倒したんだろう?」
「ああ、そうだ。エイラの言うとおり、戦闘用の意味はあまりないと思う」
ただ、威圧感とか、士気高揚とか、理屈ではない効果はあるかもしれない……と仁は締めくくった。
「それはあると思うね」
『魔導大戦』当時を知るアーノルトが仁の話を引き継いだ。
「あくまでも戦争、という異常な事態限定でだけれどね」
「土木・建設用と考えると意味が出てくるんだよなあ」
「エイラさんの言うとおりですね。重機は便利ですが汎用性に欠けますから。人型で巨大であるということは、動かし方がわかりやすいですし、手にする道具を変えれば応用が利きますし」
「ただ、それぞれの場面では専用の重機に一歩劣るけどな」
「いや、グローマ。それは諦めだ。我々は、専用機よりも高性能な汎用機を目指すべきだぞ」
「エイラ、言っていることが矛盾しているぞ?」
「どこが?」
「エイラの言うように、専用機よりも高性能な汎用機を作れるなら、その技術を使って専用機を作ればより高性能な専用機を作れるはずだからさ」
「それもそうか……な?」
和気あいあいとした雰囲気の中、話し合いは脱線しながら続いていく……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20221022 修正
(誤)こちらは経年劣化した可塑の整備にとどめ
(正)こちらは経年劣化した箇所の整備にとどめ
(誤)『アヴァロン』側にも転移魔法陣を設置しないければ移動できないからだ。
(正)『アヴァロン』側にも転移魔法陣を設置しなければ移動できないからだ。
20230801 修正
(旧)
『元の』というのは、今の『アカデミー』の体制は一新され、『研究室』という枠組みを解かれ、その時時に応じて『チーム』分けされて研究を行っているからである。
(新)
『元の』というのは、今の『アカデミー』の体制は一新され、『研究室』という枠組みを解かれ、その時時に応じて『チーム』分けされて研究を行っているからである。
とはいえ、メンバーの区分けがわかりやすいこともあって、『ゴー研』『航空研』などと旧名称が相変わらず使われている。




