90-01 『アスティノ』と『アイオーン』
大陸暦3902年7月13日。
旧レナード王国からエゲレア王国東岸にある7つの島は『レーヘン諸島』と公式に決定。各島の名前も。北から順に『ロード島』『オランニ島』『ゲール島』『グルーン島』『ブラウ島』『インディゴ島』『パールス島』となり、仁が提唱した案がそのまま通った。
その7番目の島『パールス島』地下に、巨大な球体が鎮座していた。『X基地』である。
その管理魔導頭脳『アイオーン』は仁の配下となり、宇宙からアルスへ降下。
本来あるべきポジション……すなわち『お目付け役』である『アスティノ』のある『パールス島』へ戻ってきたわけである。
実に747年ぶりに『アイオーン』は古巣へ戻って来たのであった。
* * *
『X基地』が収まったのは、『アスティノ』から200メートルほど東にずれた地点。
そこに仁とマキナが直径200メートルの穴を穿ち、待ち構えていたのである。
仁とマキナの協力もあって、『X基地』は無事穴の底に収まった。
そして今、『アスティノ』と『アイオーン』は物理的に接続された。
今後は『アヴァロン』のために働いてもらうことになる。
2つの球形基地は通路で結ばれており、自由に行き来できる。
「ふわあ……ジン様はここまで準備してしまったのですか」
「すごいわ……完全な地下基地ね」
仁は『アスティノ』の主人であるゴウとルビーナも呼んでおいた。そして『アイオーン』に紹介し、仁に次ぐ命令権を設定したのである。
「ゴウ、ルビーナ、『アヴァロン』そして世界のために頑張るんだぞ」
「はい!」
「はい!!」
「うん、いい返事だ。俺もサポートしてやるから、決して無理はするな」
「ありがとうございます、ジン様」
「ありがと、ジン様」
ゴウとルビーナはダイキとココナ、アマンダ、そして仁やエルザと相談し、『アヴァロン』に籍を置くことにしたのである。
所属は『アカデミー』。『客員研究者』として勤めることになる。
既に学士号を持っているので、安いが給料ももらえる。
『客員』扱いなのは、ゴウがショウロ皇国ニドー伯爵家の跡取りだからだ。
ルビーナはそうした柵はないのだが、ゴウと同じ待遇を望んだため、彼女もまた『客員研究者』という肩書となったのである。
『アヴァロン』に籍を置いたので、自室ももらえる。
アカデミー地下の居住区画に、6畳の居間と3畳の寝室がもらえた。
ちなみにゴウとルビーナの部屋は向かい合わせであった。
* * *
ゴウとルビーナが引っ越しを行ったのは7月11日。
まる1日掛けて荷物を整理し、隣近所の部屋に挨拶をして回った。
翌12日は『アカデミー』の研究者たちを集めて挨拶。
研究者ほぼ全員の前で挨拶を行ったゴウとルビーナは、さすがに精神的に疲れて、同日夜は早々に就寝した。
そして今日、仁に連れられて『パールス島』へやって来たというわけである。
まずは『アスティノ』のところへ。
代理ゴーレム『ウィカ』が出迎えた。
『ようこそ、ゴウ様、ルビーナ様、ジン様』
はるばる『アイオーン』のところへ行った『ウィカ』であったが、既に戻ってきており、その1体がこうして基地の保全をしている。
「ウィカ、『アスティノ』と『アイオーン』間に情報のやり取りはできているのか?」
『はいジン様、今のところ、必要最低限ですが』
「よし。ゴウ、ルビーナ、2つの魔導頭脳を物理的に連結するぞ」
「は……はい!」
「はい!!」
仁は礼子とウィカを助手にし、ゴウとルビーナをメインに据え、作業を行うことにした。
仁は現場監督役である。
「それじゃあ始めよう。……まずは何をやる?」
「ええと、接続用のハブを作ります」
「よし」
単純に『アスティノ』と『アイオーン』を繋ぐのではなく、緊急時に物理的な切断ができるよう、そうした中継機を噛ましておくのは常道である。
また、その中継機を介して、外部とも連絡を取れるようにしたいと仁は考えていた。
具体的には老君との接続だ。
接続とは言っても常時ではなく、必要に応じてデータのやり取りをするくらいのレベルで考えている。
回線の切断の権限も、老君にその1つを預けるつもりなのだ(手動でも切断できるように構想している)。
「ええと、ここをこうして……」
「物理的というんだから、接続端子は標準のものがいいわよね」
「何種類か用意しておけばいいんじゃないか?」
「あ、そうね」
ゴウとルビーナは話し合いながらハブを作っていった。
特に問題はなさそうなので、仁も口出しはしない。手出しもしない。
(うん、成長したな、2人とも)
その手付きに迷いはなく、確実に組み立てを行っていく。息もぴったりで、まさに『阿吽の呼吸』。
「ゴウ、これ」
「うん、ありがとう。それじゃあ、これ」
「まかせといて」
短い言葉だけで何をやってほしいかも伝わっているようだなと、仁は2人の作業の様子を微笑ましく見守っていたのである。
* * *
軽い昼食を挟んで、午後2時。
「できた」
「できたわね」
『アスティノ』と『アイオーン』、2つの魔導頭脳を繋ぐ回線が完成した。
「よくやったな、2人とも。いい出来だ」
「ありがとうございます!」
「ありがと、ジン様」
「次は施設内の整備だが、これは『アスティノ』と『アイオーン』にもやらせよう」
ゴウとルビーナは指示に徹し、作業は整備ゴーレムにやらせよう、と仁は言った。
「疲れているだろうが、そこまでは終わらせておこう」
「わかりました」
「わかったわ!」
ゴウとルビーナは疲れも見せず、仁の指示どおり、施設内の整備……主に人間のための……に取り掛かった。
ちなみに資材は仁が提供している。
対外的にはマキナ名義で、となっているが。
この整備が終われば、ここ『パールス島』は『アヴァロン』第2の拠点として開発していくことになるだろう、と仁は考えていたのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20221021 修正
(誤)『客員研究者』として務めることになる。
(正)『客員研究者』として勤めることになる。




