89-35 調査結果と将来への展望
大ホールの調査を九分どおり終えた仁Dは礼子とともに『ハリケーン』に戻った。
そして仁たちは蓬莱島へと戻る。
大ホールには『簡易転移門』を置いてきたので、調査中の『職人』たちの帰還も問題ない。
使い終わった後は自壊するよう設定できる。
「なかなか興味深いものがあったな」
「そうですね、お父さま」
『御主人様。いただいた『設計基』その他の解析は済んでおります』
「よし、ゆっくり話を聞こう」
『はい、御主人様』
老君は、これまでの調査でわかった内容をまとめ、説明を行った。
1.『インディゴ島』の施設は当時の軍事施設の1つであった。
2.ここでは巨大ゴーレムの研究が行われていた。
3.『ギガース』の技術を踏襲し、より優れたものを作り出そうという人々が『チーム』を組んでいた。
4.『重力魔法』のエキスパートもおり、巨大ゴーレムの重量調整に役立った。
5.ここでも資材不足は深刻であった。もし資材が豊富なら巨大ゴーレムの完成はもう少し早かったであろう。
6.完成には至らなかった。『魔素暴走』のせいである。
7.『リノウラ・モギ』は『アイオーン』基地からここを訪れ、くすねた資材を使い、未完成だった1体をなんとか稼働状態まで持っていった。
『流れとしましては、以上です』
「なるほどな。それでは、次は技術的なことを説明してくれ」
『はい、御主人様。……『ギガース』は触れた相手の魔力を吸収する特性を持っていましたが、ここの巨大ゴーレムは持っていません』
「そうだったな。その訳は?」
『はい。集団戦も想定していたようです』
「なるほど。『ギガース』は敵の中へ放り込んで無差別に暴れさせるための兵器だったが、巨大ゴーレムはもっと組織立った運用を考えていたのか」
『そう推測いたします。ただし、『ギガース』としての特性である、周囲の瓦礫を取り込んでボディを修復する機能はそのままでしたが』
「ああ、そうだった。だが外装が付いていたら意味がないだろうに」
『いえ、御主人様。外装を壊して喜んでいたらより厄介な中身が出てきた……というような事態になるかと』
「確かにな……」
老君の意見に、仁は頷いたのだった。
「あと、『ギガース』って誰が、あるいはどこのチームが開発したかわからなかったか?」
『はい、御主人様。それに関しては何も情報がありませんでした』
「そうか、残念だ」
『ですが、巨大ゴーレムが『ジャイガント』という名前であるとか、大戦後半の膠着状態を打破するため、軍でも選りすぐりの研究者が集められたなどの情報が得られました』
「そうか……。ああ、あと、ここのような施設が他にもあるかどうかは?」
『申し訳ございません、そうした情報は見つかりませんでした』
「そうか……」
『軍の施設ですので、1つを占領されたら芋づる式に他の施設の場所がばれてしまうことを避けたのではないかと推測致します』
「うん、意外とその辺が真実かもな」
仁も老君の推測が的を射ているような気がして頷いたのであった。
* * *
「さて、巨大ゴーレム……『ジャイガント』の重力制御技術は素晴らしかった」
『そうですね』
「あらましは見当がついているが、実際の魔法制御の流れはどうなっていたかな?」
『はい、御主人様。ではモニタに表示致します』
老君は司令室の大型魔導投影窓に魔法制御の流れのフローチャートを表示した。
「うーん、無駄が多いな」
仁はひと目でそのやり方の杜撰さを看破した。
「おそらく、開発期間が足りなかったんだろうな。……ここのところなんか、もう少し考えれば命令の数が3分の1に減らせるぞ」
『その代わりに分岐と条件の設定が必要になりますから、検証の時間を惜しんだのでしょう』
「そうかもしれないな」
戦時中はいろいろな物事が平時とは違ってくるものだ、と仁も理屈ではわかっている。
最良の結果を追う、ということすら難しい、狂気の時代なのだ。
『御主人様、見方を変えてみればいい教材とも言えるのでは?』
「確かにそうだな。これを踏み台にしてステップアップしてもらいたいものだ」
そして仁自身も、この『教材』を元に、巨大ゴーレムを作ってみたい、と考えていたりする。
「ラインハルトも作りたがるだろうな……『ファミリー』みんなでやってもいいかもな」
それならアルスではなくヘールで作ってもいいなと考える仁であった。
* * *
『それから、別件ですが』
「どうした、老君?」
『セルロア王国が『秘蔵ゴーレム』なるものを演習に持ってきまして、『同調魔法』なるものを攻城用兵器的に用いました』
「ほう」
老君は演習の様子も、その後の『ジャイガント』との戦闘も、ずっと『覗き見望遠鏡』で監視していたので知っているのだ。
「言葉の響きからすると……複数のゴーレムが、魔力を同調させて魔法を放つことで威力を上げようということかな?」
『はい、御主人様。概ねそういった用法でした』
「コヒーレントほどの効果はないだろうが、それでも加算以上の威力上昇が見込めそうだな」
『仰るとおりです』
老君は実際に使った場面の記録を映像としてモニタに映し出した。
「お、なるほどな……『同調』……ふうん……」
映像を見た仁は、何かアイデアが閃いたようだった。
「同調に時間が掛かっているよな」
『はい、御主人様。およそ2秒ほど』
「同調させる魔法か魔導具を作れば、もっと早く同調させられるんじゃないかな?」
『それは間違いなく』
「で、ロケットエンジンなんかも効率が上がるんじゃないかな」
『間違いなく上がると思います』
「うん。……この技術はゴウたちにも研究させてみたいな」
教育にも熱心な仁、というかゴウたちの成長ぶりが著しいので、見ていて心躍るのだ。
夏到来。
蓬莱島……いや、『仁ファミリー』にも新しい風が吹き始めていた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日10月20日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20221021 修正
(誤)大ホールの調査を9分どおり終えた仁Dは礼子とともに『ハリケーン』に戻った。
(正)大ホールの調査を九分どおり終えた仁Dは礼子とともに『ハリケーン』に戻った。




