89-34 調査と謎と
7月8日、仁が向かったのは巨大ゴーレム『ジャイガント』が出てきた『インディゴ島』。
そこには巨大ゴーレムを建造した施設があるからだ。
危険なものなら破壊しておこうと思った仁である。
が。
『御主人様、危険はないようです』
と老君が『覗き見望遠鏡』で確認し、報告してきたのだ。
そのため『ハリケーン』で調査に向かった、のだが。
『どうやら内部の空気は呼吸に適さないようです』
という解析結果も出てしまったのだった。
それで次善の方法として、仁専用の『分身人形』、仁Dで行くことにしたのだった。
もちろん、お供の礼子はそのままである。
仁Dと礼子なら、施設の探索は楽である。
100メートルの縦坑も『力場発生器』を使い、問題なく降下。
劣化した『エーテル発光体』で照らされていた。仁Dと礼子には十分な明るさである。
縦坑は直径15メートルで壁面はほぼ真っすぐに掘り下げられている。
土留めもしっかりと行われており、崩れそうもない。
穴の底は平らに均されていた。水はけも考慮されているようだ。
「横穴があるな」
「あそこから巨大ゴーレムが出てきたのでしょう」
横穴の高さは30メートルほどあり、25メートルの巨大ゴーレムが出入りするには十分な広さであった。
横穴は50メートルほど続いている。途中にハッチがあったが、開いたままになっていた。
その先は広くなっていた。
「おお」
行き着いた先は小広い研究所、あるいは工場といった雰囲気の大ホールであった。
こちらの『エーテル発光体』はまだかなりの明るさを保っている。
4つの巨大な影がその明かりに照らされていた。
4つとも、全高25メートル。巨大ゴーレムであろう。
「2体は作りかけだな」
4体を観察し、仁Dが結論を口にした。
「残りの2体は……失敗作かな?」
作りかけの2体は、完成度7割と4割といったところ。
失敗作の方は、1機は骨格のみ、もう1機は骨格のみでなおかつ両腕がなかった。
「ここは『魔導大戦』の時の軍の施設だったようですね」
隅のテーブルの上に残された書類を見ながら礼子が言った。
「やっぱりな。設計資料……設計図か『設計基』は残っているかな?」
「探してみます」
仁Dと礼子は手分けして設計資料を探してみた。
「老君からアドバイスがありました。あの棚の中のようです」
「どれどれ」
金属製のロッカーが壁面に取り付けられており、その1つを礼子が指差した。
棚の位置は高く、礼子では(飛ばないと)届かないので仁Dが開けてみる。
するとそこには、幾つかのファイルと、『設計基』と思われる魔結晶が置かれていた。
「これかな」
仁Dは1つの魔結晶を手に取り、『読み出し』を掛けてみた。
「……うん、これだな。一応『複写』しておこう」
ついでとばかり、そこにあった魔結晶を全て『複写』。
ファイル類も一旦蓬莱島へ持ち帰り、内容を記録してから戻すこととした。
「ここを一般に開放するのですか?」
という礼子の問いに、
「一般に、というか『アヴァロン』に管理させたいものだな」
と仁Dは答えた。
「ここにあるのは『魔導大戦』当時の技術だ。うまく使いこなしてもらい、技術の進歩に役立つといいなと思ってな」
進歩といっても『魔導大戦』当時の技術に追いつく、というレベルである。
「なるほど、わかりました」
「とりあえず、ここの設備と技術の把握は必要だな」
「『職人』を呼びますか?」
「それがいいだろうな」
『転送機』によって、蓬莱島から『職人』76から100までの25体が送られてきて、即調査に取り掛かった。
仁Dも礼子とともにマイペースで調べていく。
「やっぱり資材はほとんどないなあ」
「ですね。……『リノウラ・モギ』は自分で持ち込んだんでしょうか?」
「そうなんだろうな。……ああ、きっとどこかに転移魔法陣があるんだろう」
「みんなで探しましょう」
仁Dと礼子が推測したとおり、『職人99』が転移魔法陣を発見した。
「やはりあったか」
それは大ホールの一番奥に設置されていた。特に隠されてはいないので、日常に行き来するための転移魔法陣らしい。
「これを使ったに違いない。……どこに繋がっているのか調べてみよう」
そういうわけで仁Dは、『マーカー』……微弱な魔力波を発信し続ける魔結晶を転移魔法陣に載せ、送り出した。
ほどなく、蓬莱島の老君から報告がなされる。
『わかりました。そちらの転移魔法陣と繋がっているのは『アイオーン』基地です』
「そうか。当たり前といえば当たり前か」
『アイオーン』から情報を聞いた『リノウラ・モギ』は転移魔法陣でこちらにやって来て巨大ゴーレムを1体動くようにしたらしい、と仁Dを操縦している仁は推測した。
「あれ? なら、どうして『アイオーン』はこの巨大ゴーレムについて、はっきりした情報を持っていなかったんだ?」
『それですが、不完全な消去の跡が見られますので、リノウラはそちらについての情報を消去したのではないでしょうか』
「そんなことをする理由は?」
『わかりません。論理に悖ります』
「だよなあ……」
『推測ですが、できる限り各基地間での情報共有を嫌ったのではないでしょうか』
1つを奪取されてしまうと芋づる式に他の基地の場所がばれてしまうことになる。それを嫌ったのではないかというのが老君の推測であった。
「その時は呼吸可能な空気があったのかな」
『そうとしか考えられません』
「その後、侵入者を嫌って、あるいは酸化防止のため、酸素をなくしたのかな?」
『その可能性はあります』
「本人がもういないから確認のしようもないしな」
『そうですね』
これ以上話し合っても得るところはないと、仁Dは再び大ホールの調査に戻ったのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
202210219 修正
(誤)「やっぱり資材はほどんどないなあ」
(正)「やっぱり資材はほとんどないなあ」




