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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
89 X基地決着篇
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89-32 救援、攻撃

「奴には飛び道具がないようだ。距離をとって攻撃しろ」

 セルロア王国の近衛騎士団長テニン・カネワンが指示を出した。


 この場合の『飛び道具』とは中・遠距離への攻撃手段の意味である。

 その指示に従い、巨大ゴーレム『ジャイガント』を包囲していたゴーレムたちは40メートルほどの距離をとった。


 この距離なら、魔法攻撃は十分な威力を保ったまま届く。


「よし、魔道士は火属性魔法で攻撃!」

「ゴーレム部隊、火属性魔法で攻撃だ!」

「弓士隊、火矢を放て!」

「短槍、投擲!」


 各部隊はそれぞれの攻撃が打ち消し合わないよう調整しつつ一斉攻撃を行い、巨大ゴーレムは爆炎に包まれた。


「やったぞ!」


 歓声が上がる。

 だが、爆炎が収まると、外装はぼろぼろになってはいるものの、その内部は全く異常をきたしていない巨大ゴーレムであった。


「なんて奴だ……」


 クライン王国近衛騎士団長ダン・キッシェが、うめくような声を漏らした。


「できるだけ速やかに、兵士を撤退させたほうがいいでしょう」


 世界警備隊第2陸戦隊隊長ハリー・モンドスが言った。


「我らの大型ゴーレムでできる限りの足止めをしますから」

「うむ、それなら我が秘蔵ゴーレムも参加しよう」

「我が国も」

「我が国も」


 セルロア王国・エゲレア王国・クライン王国も足止めに自国のゴーレムを使うと宣言した。

 そして人間の兵士・騎士たちを退避させる。

 具体的には、10キロほど西、内陸部に設置した駐屯地へ。

 そこには食料や予備の武器、また若干ではあるがゴーレムの予備兵力もある。

 また、飛行船もあるので攻撃・防衛の幅が広がろうというもの。


 だが問題は、巨大ゴーレムが撤退を許すかどうか、であった。


 撤退を始めた兵士たちに気が付いた巨大ゴーレムは、そちらへ向かって歩き出した。

 その動きは人々が思っていたよりも速く、歩幅も相まってすぐに追いつきそうである。


 だが、それを押し留めようと各国のゴーレムが立ち向かった。

 真っ先に激突したのは『アヴァロン』の大型ゴーレム。

 だが全高12メートルと25メートルでは勝負にならなかった。

 いや、全高よりも重量の差が大きかったのだろう。

 10トンと200トンでは差がありすぎた。


 拮抗したのはわずか3秒。

 その後、『アヴァロン』の大型ゴーレムは弾き飛ばされたのである。


 残った3国のゴーレムたちもまた、簡単に吹き飛ばされる。

 稼げた時間はたったの5秒。


「うぬ……まずい、あのデカブツ、撤退する兵士たちを攻撃するようだ」

「何か手はないのか……!」

「もう間に合わん……!!」


 残り10メートル、巨大ゴーレムにとってあと一歩で撤退する兵士たちの最後尾に追い付き、踏みにじることができる……と誰もが思った、その時。


 轟音、と言いたいところだが、もう少し地味な音が響き、巨大ゴーレムは後ろ向きに転倒した。


「な、何だ? どうしたんだ?」

「あ、空を!」

「あ、あれは!」


 空に浮かぶ飛行船。その側面には『丸に二つ引』の家紋が。


「『魔法工学師マギクラフト・マイスター』だ!」

「ジン殿の『ハリケーン』だ!」


 仁の救援であった。

 『ハリケーン』から撃ち出した強烈な『風の大槌(ウインドハンマー)』で巨大ゴーレムを転倒させたのである。


*   *   *


 連絡を受け、転送機で転移してきた仁が見たのは、撤退する3国の兵士たちと、それを追う巨大ゴーレム『ジャイガント』であった。

 『アヴァロン』所属の大型ゴーレムも、各国が誇る戦闘用ゴーレムも、時間稼ぎすらできない。

 そこでまずは時間を稼ごうと、巨大ゴーレムを転倒させる攻撃を行った。

 兵士たちとの距離が近すぎて、それ以上威力のある攻撃は避けたのである。


 起き上がろうとする巨大ゴーレムにもう一発『風の大槌(ウインドハンマー)』をぶち当てる。

 再度ひっくり返された巨大ゴーレムは、『ハリケーン』を当面の敵と認識した。


 内蔵された『重力魔法装置』を使い、浮き上がったのである。


「おお、あのゴーレム、空を飛ぶのか。……だが、効率は悪そうだ」


 空を飛ぶ、といっても高速で自由に飛び回るのではなく、単に『浮いて移動できる』程度の性能である。


「あの速度じゃいい的だな。……兵たちから引き離そう」


 仁の指示を受け、ホープは『ハリケーン』を兵たちの撤退する方向と逆方向へ向けた。

 巨大ゴーレム『ジャイガント』もそれを追ってくる。


 最低でも1キロ、できれば2キロ以上離したかった仁であるが、追いつけないと見た巨大ゴーレムは『ハリケーン』目掛け岩弾を放ってきたのである。


「おお、あんな攻撃もできるのか」


 巨大ゴーレムはギガースの派生、そのボディは岩塊でできている。

 その一部を切り離して攻撃してきたというわけだ。


 が、その岩弾は『ハリケーン』の『物理障壁(ソリッドバリア)』に当たって砕け散った。


「ギガースと似ているとすれば、周囲の自由魔力素(エーテル)を吸収しているわけだな。……もう少し引き離したいが……」


 この辺で片を付けるか、と仁は『魔力砲(マギカノン)』で実弾を撃ち込むことにした。

 『運動エネルギー弾』に分類される、鉛の砲弾である。


 少し加減し、マッハ3の初速で撃ち出された鉛の砲弾は、巨大ゴーレムの胴体に命中した。

 その運動エネルギーは鉛という軟らかい素材により、ほぼ全てが巨大ゴーレムに加わることとなる。

 その結果、砲弾により空中を数メートル吹き飛ばすことに成功。


「よし、もう一発、いや二発だ」

「了解」


 『ハリケーン』から撃ち出される鉛の砲弾。

 『浮いて移動できる』程度の機動性ではマッハ3の砲弾を避けることはできず、追加の二発もその胴に受けたのだった。


 反撃の狼煙のろしが上がった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 環境への影響的に、鉛玉というのはどうなのでしょう? 柔らか素材というのであれば、既にサキさん辺りが開発していそうではありますが。 老『かと言って、他にはマギ・アダマンタイト弾頭の徹甲弾…
[一言] 更新お疲れ様です! >この辺で片を付けるか、と仁は『衝撃砲【ショックカノン】』で実弾を撃ち込むことにした。  『魔力エネルギー弾』に分類される、魔力を固めて作成した砲弾である。  本来…
[一言] >>飛び道具がないようだ フラグ「ぴこ~ん!」 >>やったぞ! フラグ「ちょ、忙しすぎるんだけど?」 >>と誰もが思った、その時。 仁「(ヒーローみたいなタイミングで恥ずかしすぎる)」 …
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