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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
89 X基地決着篇
3465/4358

89-30 ジャイガント

 旧レナード王国南端『ニューレア集落』。

 その東は海であり、その海上には7つの島々が浮かんでいる。

 すなわち『ロード島』『オランニ島』『ゲール島』『グルーン島』『ブラウ島』『インディゴ島』『パールス島』だ。

 旧レナード王国の方言で『レーヘン諸島』と蓬莱島では呼んでいる。


 その7つめ……最も南にある『パールス島』には『始祖(オリジン)』がその昔に設置した、潜水艦の遠隔操縦施設がある。

 その上、『魔導大戦』時の施設である球形基地があり、『アスティノ』と呼ばれる魔導頭脳が健在であった。


 そして5つめ……『ブラウ島』は最も大きな島で、かつて仁たちがそこを『扶桑ふそう島』として崑崙島や蓬莱島のダミーにしようかという話も出た島である。


 そんな2つの島に挟まれた6つ目の島……『インディゴ島』には、『魔導大戦』時の球形基地『アイオーン』の補助施設があったのである。


*   *   *


 そこの地下に、深い縦坑たてこう穿うがち、地下100メートルに保管されていたゴーレムが1体。

 全高25メートル、重量200トンというそれは『ジャイガント』と名付けられ、対魔族の切り札として作られた。

 『ギガース』の技術を応用した派生ゴーレムであるが、同時期に開発された『ギガース改』よりもさらに進んだゴーレムである。


 途中から軍が引き取り(接収し)、独自の改造を加えていったのだが、『魔素暴走エーテル・スタンピード』により完成することはなかった。


 それを『リノウラ・モギ』が発見し、『アイオーン』配下の技術系ゴーレムによって完成までぎつけたのである。

 ただし動力系のみ。制御系は手を加えられなかったのだ。

 ただ、辛うじて『世界を平和に』という『基底命令』を書き込むことができただけ。

 元々の設計者が意図した最終形ではなかったが、それなりに動く形になった『ジャイガント』は、目覚めの時を待っていたのである。


 『世界を平和に』。『リノウラ・モギ』のその願望は歪んでいた。

 最終目的は崇高だったとしても、過程が、方法が、思想が、手段が……歪んでいた。

 その尖兵として設定された『ジャイガント』もまた、ある意味で『暴走』する運命にあったのだろう。


 『魔導大戦』当時の軍が設置した外部センサー。その大半は年月に耐えられず停止していたが、『アイオーン』の配下は、その幾つかを修理していた。

 そんな外部センサーが、ほど近い陸地における戦闘を検知したのである。


《人間同士で戦っている?》

《……ゴーレムも参加しているようだ》

《国家間の紛争か》


 旧レナード王国南端の町『ニューレア集落』付近で行われた模擬戦を見た『ジャイガント』は、それを『紛争』と判断したのだった。


 そして不完全な魔導頭脳は、『基底命令』に即した行動をとることを決定する。

 すなわち『戦闘の停止』。

 問題は、『手段は問わない』ということ。暴走しているがゆえに、行動に歯止めが掛かっていないのだ。

 掛けられる存在も今はない。

 たとえ『アイオーン』や『アスティノ』でも『ジャイガント』を止めることはできない。

 そうした制御系、思考回路が不完全であるがゆえに。


《戦闘を、どんな手段を使ってでも止める必要がある》

《戦闘を行うということは、相手を倒すことを前提にしている》

《そして、倒されることも覚悟しているはず》

《ならば、ここで双方を滅ぼすのが、この戦闘を終わらせる早道である》


 狂気の判断であった。


《重力魔法装置、起動》


 その装置は、200トンの巨体を浮かび上がらせ、100メートルの縦坑を上昇させるのに十分であった。


 縦坑を塞いでいた蓋とその上を覆っていた土砂と樹が吹き飛んだ。

 『ジャイガント』は空中を移動。


《目標、大陸沿岸》


 旧レナード王国南端の町『ニューレア集落』を目指すのだった……。


*   *   *


 同時刻。

 演習は佳境を迎えていた。


 仮想敵役守備側のゴーレム軍団は脱落し、残るは大型ゴーレムのみ、という状態になっていた。

 方や連合側は、セルロア王国が秘蔵のゴーレム10体を繰り出してきたところである。


「なかなか見事な連携でしたね」

「最後の攻撃として、セルロア王国秘蔵のゴーレム部隊の出番というわけですか」

「さよう。この秘蔵ゴーレムを演習に使うため、周囲10キロ以内は一般人立入禁止にしたわけですよ」

「それほどのゴーレム……拝見するのが楽しみですなあ」


 だが、セルロア王国ゴーレム部隊と大型ゴーレムの模擬戦を見ることはできなかった。


 模擬戦の戦場に、突如巨大なゴーレムが降り立ったからである。


「な、何だ、あのゴーレムは!?」


 『アヴァロン』の大型ゴーレムの2倍以上ありそうな巨躯きょく

 それが文字どおり空から降って来て、いきなり襲い掛かってきたのである。


 不幸中の幸いだったのは、ギャラリーがいなかったことと、模擬戦も終盤となっていて、人間の兵士は全て退場していたことであろうか。

 巨大ゴーレム『ジャイガント』は、仮にその場に人間がいたとしても、構わず暴れたであろうから。


 だが『ジャイガント』はセルロア王国秘蔵のゴーレム部隊に襲い掛かった。

 『どんな手段を使ってでも止める』『ここで双方を滅ぼすのが、この戦闘を終わらせる早道である』と決定してはいても優先順位プライオリティは存在する。

 どうやら『ジャイガント』は、人間ではなくゴーレムの方を先に破壊することにしたようである。


「ぬおっ! なんという力だ」

「でかくて鈍重そうなのに……!」


 巨大ゴーレムはセルロア王国の秘蔵ゴーレム1体を無造作に掴み上げるとそれを地面に叩き付けた。

 叩き付けた先には別の秘蔵ゴーレムがおり、2体は折り重なって倒れると動かなくなってしまう。


「ぬう……10体で掛かってもびくともしないか」


 等身大のゴーレムに比べると、巨大ゴーレムは10倍以上の大きさがあり、重量は1000倍。

 セルロア王国の秘蔵ゴーレム8体掛かりでも動かすことができない。

 足元にまとわりつく子犬……よりも力の差があるのだ。


 巨大ゴーレムが右足を振り上げると、押し留めようとしていたセルロア王国の秘蔵ゴーレム4体が吹き飛ばされた。


「重量の差か……!」

「閣下、一旦距離を取りましょう」

「うむ、そうだな。……下がれ!」


 残ったセルロア王国の秘蔵ゴーレム4体は巨大ゴーレムと距離を取った。


 『ジャイガント』との第2ラウンドが始まろうとしていた。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。

     https://ncode.syosetu.com/n5250en/

     お楽しみいただけましたら幸いです。


 20221015 修正

(誤)『扶桑ふそう島』として崑崙等や蓬莱島のダミーにしようかという話も出た島である。

(正)『扶桑ふそう島』として崑崙島や蓬莱島のダミーにしようかという話も出た島である。

(誤)セルロア王国の秘蔵ゴーレム10体掛かりでも動かすことができない。

(正)セルロア王国の秘蔵ゴーレム8体掛かりでも動かすことができない。

(誤)セルロア王国の秘蔵ゴーレム10体は巨大ゴーレムと距離を取った。

(正)残ったセルロア王国の秘蔵ゴーレム4体は巨大ゴーレムと距離を取った。

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― 新着の感想 ―
[一言] >《そして、倒されることも覚悟しているはず》 つまり前提として、ディナールには『撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ』が理念として存在していて、 当初は、無抵抗の者を甚振る事を禁じるため…
[一言] >89-30 ジャイガント おっれぇ~わjy o...rz ?「違う###」 > そんな2つの島に挟まれた6つ目の島……『インディゴ島』には、『魔導大戦』時の球形基地『アイオーン』の補助施…
[一言] >ただし動力系のみ。制御系は手を加えられなかったのだ。 なのでハイハイしか出来ません。 >最終目的は崇高だったとしても、過程が、方法が、思想が、手段が……歪んでいた。 人類がいなくなれ…
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