89-25 暴走対策
『リノウラ・モギ』が遺した『暴走ゴーレム』が発見されたのはエゲレア王国北部にある『オエフェ鉱山』であった。
「国境を挟んでセルロア王国と側には『フープラ鉱山』があったよな」
『はい、御主人様』
「で、『オエフェ鉱山』は資源が枯渇して閉山されていたはずだ」
『そのとおりです』
「なのに『オエフェ鉱山』に暴走ゴーレムが現れたのか?」
『そのようです』
「うーむ……」
鉱物資源を得られないような鉱山に、どうして暴走ゴーレムが現れたのか、仁は理由を考えてみたがわからない。
『御主人様、論理的ではないことをするから『暴走』ゴーレムなのでしょう』
「うん、そうなんだろうなあ」
仁も、老君の言うことが正解なのだろうと思う。
『おそらく普段は『オエフェ鉱山』の廃坑に隠れており、時々『フープラ鉱山』へ出向いて資源を横取りする……というような行動をとっていたのでは?』
「それなら頷けるな」
『ですが暴走したため、廃坑になった『オエフェ鉱山』で暴れ出した、というのが私の推測です』
「なるほどな」
『廃坑ですので人的被害は皆無ですが、どうしますか?』
「周りに人目がないなら、遠慮なく無力化しよう」
『わかりました』
『覗き見望遠鏡』と『ウォッチャー』を駆使し、老君は『オエフェ鉱山』の周囲10キロに人影がないことを確認した。
『では、予定どおりランド部隊を送り込みます』
陸軍ゴーレムの『ランド』225から230を転送機で送り込む老君。
当該地にいたのは、『こそ泥ゴーレム』と同型のゴーレム2体。
それが坑道を壊しながら暴れまわっている。まさに暴走だ。
「数は2体。坑道の被害がこれ以上広がる前に抑えよう」
「了解」
ランド229と230とで両側から抑え込み、228が魔素変換器をピンポイントで破壊。
こそ泥ゴーレムは停止した。
「よし、こいつはご主人様に研究していただこう」
「了解」
あっさりと2体の暴走ゴーレムを無力化、確保したランド隊は、迎えのために送り込まれた『ファルコン10』の小型転移門を使い、蓬莱島へと戻ったのであった。
* * *
蓬莱島の仁は、『こそ泥ゴーレム』を受け取ると、すぐに『制御核』の解析に取り掛かった。
「なぜ時間差で暴走したのかな?」
制御していた『アイオーン』が停止した時点で暴走を始めるのが普通ではないかと仁は考えており、その理由が知りたかったのだ。
その理由は、『制御核』を解析していくとわかってきた。
「どうやらこいつらは、直接『アイオーン』から指示をもらっていたのではなく、中継基地というか中間指示装置というか……」
『アイオーン』からの指示を受けてゴーレムたちに指示を出す装置がアルス上にあることがわかったのである。
その中間指示装置が、『アイオーン』からの指示をもらえなくなったことで停止し、ゴーレムの暴走が始まったようなのだ。
「まる1日、『アイオーン』からの指示を受けなかったことで停止したんだろうか?」
『その可能性が高いですね、御主人様』
「うーん……そうした安全装置があったんだろうかな?」
『安全装置があったというより、指示がもらえなくなって暴走したのではないでしょうか』
「そっちの方が可能性がありそうだな……」
そうなると、この後各地でゴーレムの暴走が多発することになりそうである。
「その中間指示装置を見つけられないかな?」
『おそらく『アイオーン』が知っているはずです』
「ああ、そうか」
正常化されたため、『資源を掠め取る』指示は出さなくなったものの、その『中間指示装置』がどこにあるかは把握しているはずなのだ。
「すぐに確認しよう。……まだ『職人』たちは『X基地』にいるよな?」
『はい、御主人様。……指示を出しました』
「よし」
* * *
5分後、『X基地』の『職人』から情報が送られてきた。
『御主人様、わかりました。……1箇所ではありません』
「まあそうだろうな。……で?」
『はい、エゲレア王国の『ビトルズ山』、エゲレア王国と旧レナード王国の国境にある『ローリスゴン山』、それにエリアス王国の『グローセル島』です』
『ビトルズ山』はエゲレア王国の東部、海岸線から40キロほど内陸に入ったところにある山。
『ローリスゴン山』はエゲレア王国と旧レナード王国の国境であり、もう少し北上するとセルロア王国という位置にある山。
そして『グローセル島』はエリアス半島の東にある、エリアス王国最大の島である。
「『グローセル島』は『アヴァロン』が通信設備として『中継アンテナ』を仮設置した島だな……」
『はい、御主人様。考えることは似たようなものなのでしょうね』
「確かにな」
『『ローリスゴン山』と『グローセル島』の施設は辛うじて動いているようです』
「そうか」
これらのうち、エゲレア王国の『ビトルズ山』にある『中間指示装置』が真っ先に駄目になったということなのだろう、と仁は想像した。
「一刻の猶予もないな。3箇所とも、当面のサポートをしよう」
1週間くらいは停止せず、また余計な指示を出さないよう再設定してしまおうと仁は言った。
『わかりました。ランド5体と職人2体の部隊をそれぞれに派遣します』
「そうしてくれるか」
こうして、3箇所への同時作戦が開始されたのである。
* * *
エゲレア王国の東部『ビトルズ山』へは『ランド』505から510、それに『職人』255、256が送り込まれた。
「微弱な魔力反応が山頂直下にあるな」
「おそらくそこでしょう」
特に隠蔽されているということもなく、山頂直下の平らな場所に50センチほどの深さで埋められていただけであった。
「手早く頼む、『職人』」
「任せてくれ」
『職人』225と226は装置を掘り出すと、手早く解析に取り掛かった。
「この制御核は入力がないと不安定になるようだ」
「入力、つまり『アイオーン』からの指示だな。ダミーの入力で時間を稼げるだろう」
構造を解析した『職人』たちは蓬莱島へ報告した。
同時に、ダミーの入力のため、旧『アイオーン』の魔力パターンデータを送ってもらう。
内蔵魔素通信機によるやり取りは1秒足らずで終了。
そして15秒後、設定済みの『魔力模倣機』が転送されてきた。
それを用い、偽の指令『ここに集まれ』を送り、『中間指示装置』の暴走は回避されたのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20221010 修正
(誤)「よし、こいつは研究していただこう」
(正)「よし、こいつはご主人様に研究していただこう」
(誤)それを用い、偽の指令『何もするな』を送り
(正)それを用い、偽の指令『ここに集まれ』を送り




