89-24 遺されたもの
老君は途中経過を仁に報告した。
「『ギガース』の派生? 以前『ギガース改』とならやりあったが……」
『いえ、『派生』ですので別物です』
「それも考えられるか。……で?」
『はい、御主人様。これは『ギガース』の技術を一部流用した、全くの別物かと』
「ほう?」
『詳細は載っていませんでしたが、全高25メートル、重量200トン。おそらく内部構造が『ギガース』で、それに制御核と外装を取り付けた、というものではないかと推測しております』
「なるほど……かなり『重い』な」
400年前に、『ギガース』に対抗するために仁が作った『タイタン』は全高15メートル、重量約5トンである。
強度と動作性を考慮し、大きさと重さのバランスに苦労した。
「この重さだと、かなり鈍重だろう」
『まず間違いなく。ですが……』
「うん?」
『『重力魔法』をうまく使っていれば、かなり改善するはずです』
「なるほど、そうだな」
慣性はなくならないが、動作の重さはかなり改善しそうだな……と、仁は想像してみた。
「でもやっぱり、パンチやキックといった動作は無理だろうな……あ、そうでもないのか」
パンチの場合、腕が伸び切る寸前に重力魔法でブレーキを掛ければ、負担が軽減されるかもしれない、と仁は考えてみた。
「制御が大変だろうな。高性能な専用の魔導頭脳が必要になりそうだ」
面白そうではあるが作る気はないけどな、とひとりごちる仁である。
「まあ、魔導頭脳の性能が間に合わない場合は、腕なら腕、脚なら脚と、それぞれに魔導頭脳を割り当てればいけるかもな」
なんだかんだ言って考えるのは好きな仁であった。
『御主人様、もう1つ気になることがあります』
「え? それは何だ?」
『はい、『リノウラ・モギ』のことです』
「うん」
『彼ほどの人物が、そのまま何もせずに亡くなるでしょうか』
「…………うーん……」
確かにそうだ、と仁は老君の考えに同意した。
「魔導頭脳か、自動人形か……人格をコピーして遺しているんじゃないかというんだな?」
『はい、御主人様』
「確かにあり得るが、それはいったいどこにある?」
『『X基地』にあるのかどうか、『職人』たちも探しています』
「『アイオーン』は知らなかったよな?」
『はい。……そこから推測しますと『X基地』以外にある、という可能性も否定できません』
「あるいは杞憂かもしれないか」
『はい。この場合、『ない』なら何ら問題はないわけですから、『ある』前提で動く必要があるかと思います』
老君の主張に、仁は頷いた。
「そうだな。ここまで関わったんだから、最後までやり切らないとな」
『はい』
『X基地』以外でリノウラ・モギの拠点といえそうな場所として『エントス山』が挙げられた。
「転移魔法陣の中継基地がある場所だな?」
『はい、そうなります』
「うーん……」
仁は、『エントス山』の施設が『始祖』のものであり、そこを見つけた者は『リノウラ・モギ』が最初ではないだろうと話し合ったことを思い出した。
そうした第三者がいたとしても、今もって姿を現さず、存在すら匂わせていないわけで、検討時の前提条件から外すことにしていたのだ。
その、いるのかいないのかわからない存在については、今回も検討の前提から外すことにする。
『『ウォッチャー』『覗き見望遠鏡』『第5列』らを動員して探してみます』
「結局そうなるな。頼むぞ」
『はい、御主人様。お任せください』
この件に関しては、仁は老君に任せることにしたのであった。
* * *
『X基地』では仁D、ゴウD、ルビーナDらが見回りを続けていた。
仁Dの操縦は老君だったり仁だったり。いずれにしても操縦者のゴウとルビーナには勉強になっている。
ひととおり『X基地』の要所を回ったかな、と、仁DはゴウDとルビーナDと共に『アイオーン』の部屋へ向かった。
「『アイオーン』、調子はどうだ?」
『はいジン様、重力魔法装置の動作は問題ありません。新たに設置していただいた『魔素変換器』と『魔力炉』のおかげで、出力にも余裕があります』
「そうか、それはよかった」
『降下は順調です。今の速度を維持し、10日掛けてこの基地を所定の場所に下ろします』
「うん、頼む」
この結果に、蓬莱島の仁は満足していた。
それで、仁D、ゴウD、ルビーナDらは蓬莱島へ帰還させることにした。
そして『リノウラ・モギ』の遺体は宇宙葬ということで、『職人』たちに指示をし、太陽セランへ向けて流すことにする。
遺品類も皆、チェックした後に棺に入れた。
「人類に仇なした男だったが、もうこれで終わりだ」
宇宙空間へ向けて棺が放たれる。
あとは初速のまま宇宙を漂い、数千年後か数万年後か、太陽セランの重力に捕まって落下することになるだろう。
* * *
「ご苦労だったな、ゴウ、ルビーナ」
蓬莱島の食堂で寛ぎながら、仁は2人を労った。
もうアルスは7月4日になっていた。
「疲れたろう。朝食を済ませたら仮眠を取るといい」
「……はい、そうさせてもらいます」
「……朝ごはんを食べたら眠くなったわ……」
2人とも、研究のために徹夜したこともあるのだが、さすがに慣れない『分身人形』の操縦はこたえたようだ。
「まあ無理はするな」
「はい……」
2人が仮眠を取りに食堂を出ていったあと、仁は老君との相談を再開する。
「リノウラの遺品を確認したが、何も手掛かりはなかったようだな」
『はい、御主人様。残念ですが』
「仕方ないさ。もしかすると人格のバックアップなんてないのかもしれないし」
『そうですね。ですが万が一のことを考え、あと10日は捜索を続けようと思います』
「そこは任せる」
『はい、御主人様』
そんな仁のところに急報が入る。
『御主人様、『ウォッチャー』により、エゲレア王国の鉱山に暴走ゴーレムが現れたのを発見しました』
「何!? うーん、ランド隊を送り込むか……」
『わかりました』
「そのゴーレムも、あとで調べてみたいな。もしかするとリノウラの情報を持っているかもしれない」
『はい、御主人様。そう手配いたします』
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