89-23 教材とする仁
元が同じ魔導頭脳なのにそれぞれ自分の派閥に属するゴーレムを抱えていた『アイオーン』と『パークス』。
どうしてそんなことができたのか、とゴウとルビーナは、ゴウDとルビーナDの口を借りて疑問を仁Dにぶつけた。
〈まず、ゴーレムの制御は1つのユニットが担っているわけではない。これはいいな?〉
〈それはそうだけど〉
〈複数の制御用ユニットをさらに管理するユニットがあり、その管理ユニットはゴーレムの種類ごとに分けられているのだろう〉
〈その方が制御のプロセスが単純になりますものね〉
〈……ああ、そっか! その複数ある管理ユニットの1つを『パークス』が支配した、というわけね〉
〈そういうことだろうな。『アイオーン』側のゴーレム群と『パークス』側のゴーレム群を比べてみればわかる〉
〈確かに、『1』から『5』みたいな汎用ゴーレムは『アイオーン』側にいませんでしたね〉
〈だろう? それが証拠さ〉
〈わかりました〉
〈わかったわ〉
このような講義をしながら、仁Dは『アイオーン』を正常化していったのである。
そして作業を開始してから1時間後、修理は完了した。
その頃には、『職人』たちによる『X基地』の修理・整備も終わっていた。
「『起動』」
『はい、『至上の主人』様』
「システムの具合はどうだ?」
『システムチェックを行います。………………異常なし。良好です』
「よし。……この球形基地……俺は『X基地』と呼んでいるんだが……『X基地』を地上にそっと下ろしたい」
『できると思います。場所のご指定はございますか?』
「そうだな、とりあえず『アスティノ』のある島……わかるか?」
『はい、『魔導大戦』当時はあえて名を付けず、『無名の島』と呼ばれていました』
「そうだ。今は『パールス島』と呼んでいる」
『わかりました。『パールス島』に下ろします』
再起動した新『アイオーン』(以下『アイオーン』)は、旧『アイオーン』が管理していたシステムを速やかに把握していった。
併せて、旧『アイオーン』が持っていたデータを全て利用できる。
安全に『X基地』を地上に下ろすことができそうであった。
もちろん、蓬莱島の宇宙艦もサポートするので、落下させるようなミスはないだろう。
仁としては、本来の姿……『アイオーン』と『アスティノ』とが補い合うようなシステムを再構築したかったのである。
『アイオーン』が仁の配下で『アスティノ』がゴウとルビーナの配下、という構図も、それなりに都合がいいと言えよう。
「ゆっくりでいいから、確実に下ろしてくれ」
『はい、『至上の主人』様』
「ああ、呼び方は名前で呼んでくれるか?」
『では、『ジン様』と?』
「そうしてくれ」
『承りました、ジン様』
こうして『X基地』騒動は終わりを告げたのであった。
* * *
だが、『リノウラ・モギ』の負の遺産はまだなくなってはいない。
アルス上に、暴走したゴーレムが散らばっているのだ。
『御主人様、どういたしますか?』
「基本的には『世界警備隊』に任せたいが……『アイオーン』を停止させたのは俺たちだからなあ」
『では、暴走ゴーレムを退治する、ということでよろしいですね?』
「そうなるな。ただし、マキナがやったことにしてくれ」
『はい、わかりました』
既にマキナから『アヴァロン』に暴走ゴーレムの情報はもたらされており、『世界警備隊』も待機している。
バックアップのため、観察衛星『ウォッチャー』と『覗き見望遠鏡』を使い、暴走ゴーレムを探してアルス上を探査する老君であった。
* * *
一方で、仁Dたちは『X基地』内の修理は『職人』たちに任せ、基地内の観察・解析を行っていた。
「ここはおそらく軍部による後付けだな」
「そうですね。いかにも取り付けました、って不格好すぎますよね」
「しょぼいわね……うん、このセリフ、言ってみたかった!」
ゴウとルビーナの教育という点でもいい教材だったのだ。
「中心に魔導頭脳を置くのは当時のトレンドなんでしょうか?」
「うん? ゴウは反対なのか?」
「いえ、司令室こそ中心に置くべきじゃないかとも思えるので」
「あ、それ、あたしも思った」
そんな疑問にも、仁は懇切丁寧に解説する。
「ふむ、なるほど。2人の言うことも間違いじゃないからな。要は設計思想の違いだと思う」
「思想ですか?」
「そういうことだな。球の中心ということは、一番外被から遠い場所だ。つまり球体の中で最も安全な場所ということだ」
「確かに」
「だから、何を大事にするか、という考えのもとに決定しているんだろうな。だから思想の違い、というわけだ」
「つまりこの『X基地』は、人間より魔導頭脳を優先した、ということですか?」
少し不満そうな顔と口調でゴウDが質問をぶつけてきた。
「そういうことだな。もっとも、この『X基地』は、常駐するのは全部ゴーレムだったらしいからな」
「ああ、それならちょっと納得です」
「だろう?」
人間が司令室に詰めるのはまれなこと、という前提であれば、魔導頭脳こそが最も守られるべきユニット、というわけだ。
「そういう点では、この『X基地』は基本的にゴーレムが管理する基地だったようだからな」
「どうしてそれが……ああ、居住用の設備が貧弱だからですね」
「そういうことだな」
そんなやり取りをしながら分身人形の3人は基地内を見て回るのであった。
* * *
蓬莱島では、老君がフル稼働していた。
1つには暴走ゴーレムをいち早く見つけようと観察衛星『ウォッチャー』と『覗き見望遠鏡』を駆使しての捜索活動。
もう1つは『リノウラ・モギ』と旧『アイオーン』が遺した情報の解析である。
些細な情報から、暴走ゴーレムの派遣場所あるいは配置地域を見つけられないかというわけだ。
そして。
遺された情報から、由々しき問題を見つけてしまったのだった。
『『ギガース』の派生……こんなものが』
そう、厄介な巨大兵器の改良型も地上のどこかにあるということがわかったからである……。
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