88-14 カスタマイズ その1
6月19日朝。
ぐっすり休んだゴウとルビーナは、朝食後に仁に相談を持ちかけていた。
「ジン様、昨日もらった『フェニーチェ量産機』なんですが」
「うん、どうした?」
「じつは、マキナさんが元になった『フェニーチェ』を改造したらしいのよ」
「うん、どんな?」
「僕が気が付いたのは、メイン噴射口を可変式にしたことです。あれって、外気の圧力が変化した場合に、最適な噴射圧を得ようとしたんだと思うんです」
ゴウの言葉を聞いて、仁は拍手した。
「よくそこまで理解した。成長したな、ゴウ」
「ありがとうございます」
「だとしたら、カスタマイズの方針は?」
「はい、マキナさんの改造を超える機体にしたいと」
「その意気だ」
仁は笑ってゴウを応援した。
「ルビーナはどうだ?」
「ええ、『補助魔導頭脳』について、エイラさんから随分学んだわ。今なら『ナイルⅧ』を上回る制御をさせられると思う」
「そうか、いろいろ学んだんだな」
「はい!」
そんな2人に、仁は言葉を掛ける。
「いくらでも、とは言わないが、意味のある改造なら、レア素材も使っていいぞ。だからまずは俺に相談してくれ」
「わかりました!」
「はい! 行くわよ、ゴウ!」
「うん!」
ゴウとルビーナは全速力で走り出した。もちろん工房へ向かったのである。
「おお、やる気だな」
そんな2人の背中を、仁は笑って見送ったのだった。
* * *
「さて、生産設備の見直しか」
ゴウとルビーナを見送った仁は、今現在の問題点に向き合うことにした。
『アヴァロン』の生産能力を向上させることである。
そのために『工場』エリアへと向かう。
そこは『アカデミー』と隣接しており、滑走路兼道路が西端の飛行場まで通じていた。
工場の敷地面積はおおよそ200メートル四方。
地下1階地上3階である。
ここの地上部で、『フェニーチェ』量産機が作られているのだ。
「うーん、まずは単純に工作機械を増やすところからだな」
工場の実態を観察した仁はそう結論付けた。
それに関してはマキナの出番だ。
昨夜、一旦拠点の『アルカディア』に帰り、準備してきたという体で、『魔導製造機』を運んできたのだ。
これは、半自動の製作機械で、補助魔導頭脳にプログラミングすることで様々なものを量産できるもの。
可能な加工は『変形』『融合』『接合』『成形』『強靱化』など。
機械式のマニピュレーター(いわゆるマジックハンド)の代わりにゴーレムアームが作業を行う。
それが3基。
「マキナ殿、助かります!」
トマックス・バートマンが代表で受け取り、礼を述べた。
「いやいや、顧問としては今の事態を看過できないからな」
マキナは笑ってそう言ったのだった。
* * *
『魔導製造機』の設置は午前中で終了、午後からは試運転を兼ねて『量産型フェニーチェ』の部品作りが行われた。
「よし、問題なさそうだな」
「マキナ殿、ありがとうございます」
『アヴァロン』生産管理局局長のジョー・チョウコウ自ら設置と試運転に立ち会った。
「これで生産性が倍になりますな」
同時に作業用ゴーレムの再調整を仁とマキナとで行っていた。
その結果、ゴーレムの作業効率が15パーセントアップしたのである。
「あとは作業用ゴーレムを増やすか」
「そうだな」
そんな言葉を交わした後、『ハリケーン』と『アリストテレス』から資材を持ち寄り、礼子とレイにも手伝わせ、4体の作業用ゴーレムを新造したのである。
これで、トータルで10割の効率アップが見込める。
これにより、『量産型フェニーチェ』の生産量が1日あたり10機に増えたのだった。
* * *
さて、ゴウとルビーナ。
「ジン様とマキナさん、何かやってるみたいね」
「うん、どうやら工場の生産能力を向上させるということでいろいろやってるらしいよ」
「ふうん。……あ、そこ押さえてて」
「これでいいかい?」
「うん。『変形』『接合』……どう?」
「ああ、いい感じだね」
「でしょ?」
2人は可変ノズルにさらに工夫を加えていた。
口径だけでなく、噴射方向も多少ではあるが偏向できるようにしたのである。
これにより、運動性能が向上すると思われた。
「でも、そのための補助データはないんだよな」
「それよね。ここはジン様にお願いして、ホープさんかレーコさんに試運転をお願いするのがいいと思うの」
「だよなあ」
「それはそれとして、やっぱり3座に戻す?」
「いや、それはやめておこう」
「どうして?」
「3人で乗るのは『ナイルⅧ』でいいじゃないか」
「それもそうね。……じゃ、こっちはどういう性格の機体にするつもり?」
「それはルビーナと相談だけど、僕としては武装を付けたいんだ」
「男の子のロマン……ってわけじゃなさそうね」
ゴウは頷いた。
「うん。今、世界は謎の存在に引っ掻き回されている。それをなんとかする手伝いができたらなと思っているんだ」
「なるほどね」
「だから武装といっても、何でもいいわけじゃない。そうした手助けに役に立つ武装をしたいと思っているんだよ」
「わかったわ。そういうことなら、賛成よ」
「ありがとう、ルビーナ」
そういうわけで2人は、どんな武器を追加しようかと話し合う。
「範囲攻撃は破壊性のないものを」
「ピンポイントで強力なものがあるとよさそうだね」
「対象を拘束できるようなものってないかしら」
「できるだけ避けづらいものがいいよね」
「防御も忘れちゃいけないわ」
などと、いろいろな意見を交わす。
そこへ、様子を見に仁がやって来た。
「どんな感じだ?」
「あ、ジン様」
「ええと、今は……」
2人は仁に、話し合っていた内容を説明する。
「なるほどな。そうしたら『熱線収束砲』という兵器を知っているか?」
「あ、なんか聞いたことある」
「『新魔法連盟』だったかが使った兵器でしたっけ?」
「そうだ。それを応用すれば、熱線砲ができる……かもな?」
「面白そう!」
ルビーナがやる気を見せた。
できるにせよできないにせよ、2人にとっていい勉強になるなあ、と思っている仁なのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20220805 修正
(誤)「ふうん。……あ、そこ抑えてて」
(正)「ふうん。……あ、そこ押さえてて」
(誤)ホープさんかレーコさんに試運転をお願いするのいいと思うの」
(正)ホープさんかレーコさんに試運転をお願いするのがいいと思うの」
(誤)「そうだ。それを応用すれば、熱戦砲ができる……かもな?」
(正)「そうだ。それを応用すれば、熱線砲ができる……かもな?」




