86-32 新情報
老君は『覗き見望遠鏡』を駆使し、フープラ鉱山における『販売代理店』の関わりを調査していった。
『……至極真っ当なものですね』
その結果、ここでの採掘作業にはまったく問題はないことが判明した。
採掘されているのは主に魔結晶で、それ以外には鉄・ニッケルの鉱石が採れる。
『ですが、採れているのは光属性だけではないですね』
火属性と風属性、それに全属性の魔結晶も採れている。
光属性の魔結晶以外は他の業者に卸してしまっているようだ。
『自分の組織内で採掘した魔結晶ですから格安で使えるというわけですね』
帳簿上は採掘した組織からウラウの町の『販売代理店』へ『売って』いるのだが、どちらも経営者は同じ。
であるからウラウの町の『販売代理店』は比較的安価に光属性の魔結晶を取り扱える、ということなのだろう。
『末端組織はそれと知らされずに働いている、ということでしょうかね』
これが一番ありそうである、と老君は判断した。
『すると、『販売代理店』の上層部、それもごく一部がこの組織を利用して暗躍しているということになりますね』
あるいは利用するためにこの組織を立ち上げたのか。いわゆる『卵と鶏』である。
『どちらが先でもやることは変わりません。黒幕の特定を目指すだけです』
* * *
同じ頃、『世界警備隊』の情報局局員、ペギー・ゼノスは、単独でウラウの町へ戻ってきていた。
もちろん、『販売代理店』に気付かれないよう『黒幕』の調査をすすめるためである。
道中、いろいろな聞き込みを(といっても出会ったのは3人だけだったが)行い『販売代理店』が何も問題のない商会であることを確認していた。
だが、ペギーは『何もない』からこそおかしい、とも感じている。
それはただの直感だが、それゆえに気になるのだ。
「何もなさすぎます。商会ですから1つや2つ、法スレスレの取引や違法な契約があってもおかしくないのに、それがまるでない」
疑いを持たれたくないゆえ、わざとらしいほどに潔癖な運営をしているみたいだ、とペギーは思っていたのだ。
そしてそれは、『裏』調査員のゼーガ・ランバンも同じ思いであった。
「汚職もない、賄賂もない、裏取引もない。普通の商会ならこれだけ探せば2つや3つの違法ギリギリの取引が出てくるものだが、それがない。余計な疑いを抱かせないために必要以上に警戒したためではないのか?」
彼もまた、ペギーと同じような結論にたどり着いていた。
「だとすると、普通に調べていても尻尾は出さないだろうな……」
かといって、非合法な手段はとれない。『世界警備隊』の規則である。
「さて、どうするか……」
少々手詰まりを感じたゼーガであった。
* * *
一方、投入された『第5列』と『忍部隊』。
今回は共同作戦となる。
『第5列』はレグルス48『ブラオ』。茶色の髪、茶色の目というありふれた容姿で、技術者という触れ込みだ。
相棒としてデネブ12『ディーナ』。今回は夫婦を演じる。ディーナは赤髪に鳶色の目で、助手ということになっていた。
そして行動を共にするのは『忍部隊』の壱、弐、参、肆、伍の5体。
仁から借りた風力式浮揚機『タウベ』に乗り、ウラウの町へやってきた、ということになっている。
「可能性は地下もしくは郊外だろうな」
「ええ」
『ブラオ』が言った。『ディーナ』もそれに同意する。
「でも、転移を使えると仮定するなら、かなりの遠距離まで考慮に入れる必要があるわね」
「うーん、ディーナの言うとおりだ」
転移に関しては探知機はあるが、まだまだ精度や反応がよくない。
なので、転移で移動し、移動先で『バックドア』を仕込んでいるとしたら、気を付けていないと現場を押さえられないだろう。
「まずは店長と店員を監視してもらうところからだな」
これに関しては、ウラウの町の店にいるのは店長を含めてちょうど5人なので、『忍』壱、弐、参、肆、伍がそれぞれ張り付いて見張ることになったのである。
* * *
ところで、仁の配下となった魔導頭脳『ファースト』である。
移動計画は『ファースト』に立てさせることにした後、仁D、アーノルト、ハンナDらは思い思いに会話をしていた。
その過程で、話題は例の『バックドア』になる。
仁Dが尋ねた。
「前にも聞いたが、この件について心当たりはないか? ……『ファースト』が関与していない、というのは間違いないのだが」
『はい、ジン様。心当たりとまではいえませんが、1つだけ』
「それは?」
『私が建造されていたのと同時期のことですが、『攻撃用』の兵器ではなく、『守備用』あるいは『防御用』の設備を考えていた一派がありました』
「なるほど、ありそうなことだ」
『当然、そちらは前線に近い場所ではなく、後方に建造されたはずです』
「確かにそうだ」
ここでアーノルトが参加。
「それなら、確かにちょっとだけ聞いたことがあるよ。今の世界でいうとエゲレア王国の北部あたりだったと思う」
『仰るとおりです。……ジン様、記憶バンクの調子が悪く、当時の資料が読み込めません』
「何? すぐに見よう」
『お願いいたします』
仁Dは魔導頭脳『ファースト』の記憶バンクを調べてみる。
「礼子、そこの外装を外してみてくれ」
「はい」
「ああ、やっぱりここだ」
仁Dは、記憶バンクの奥の奥、最も古いセクションに、データ線の腐食を発見した。
「切れてはいないみたいだが、腐食したため魔力が通りにくくなっているな」
そこで仁Dは『還元』や『強靱化』を用いてデータ線を修復した。
「どうだ?」
『ジン様、ありがとうございます。資料にアクセスすることができました』
「うん、それで?」
『はい。やはり今のエゲレア王国北部、『オエフェ山』の地下にそうした施設を建造するという計画があったのは間違いありません』
「オエフェ山?」
『はい、こちらです』
山の名前を言われても急には思い当たらなかったが、『ファースト』が地図を壁のモニタに表示してくれたので把握できた。
「フープラ鉱山の南か……」
セルロア王国のフープラ鉱山から少しでエゲレア王国との国境となる。
その少し南にオエフェ鉱山があり、さらに少し南にあるのがオエフェ山であった。
フープラ鉱山とオエフェ山の距離は50キロもない。
調査してみる価値のある情報であった……。
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