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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
86 暗示事件篇
3284/4347

86-31 サキの発見

 仁が『球形基地』の処遇をどうするか検討していた時。


「ふふん、面白いねえ」


 サキは、『バックドア』付き制御核(コントロールコア)の材料工学的解析を行っていた。

 これは仁がウラウの町の町長宅でゴーレムを修理した際に手に入れたサンプルである。


「マギ・プラスチックじゃなく、ただの……と言っていいのかどうかは疑問だけど、合成樹脂だね」


 この分子構造だと、どうやって合成したのかさっぱりわからない、とサキは首を傾げた。


「サキ姉でも無理?」

「おや、エルザ。……うん、ボクでもすぐには無理だね」

「だとすると、合成した『何者か』はかなりの技術を持つ」

「くふ、そうなるね」


 もっとも、有機化学については発展途上だけど、とサキは言った。


「ヘールで『長老』に教えを請えばもっと発展するんだろうけど、せっかく課題があるんだから取り組みたいよね」

「サキ姉らしい。で、他にわかったことは?」

「この魔結晶(マギクリスタル)の産地だね」

「わかったの?」

「もちろん。合成されたものではないからこそ、産地ごとの特徴があるんだよ」

「不純物、とか?」

「うん、それもある。その他には結晶構造、とかもね」


 サキは、産地特有のそうした特徴を照らし合わせてみた、と言った。


「さすが、サキ姉」

「くふ、ありがとう」

「で、産地は?」

「このあたりだね」


 ローレン大陸の地図を用意したサキは、その1点を指差した。

 それはセルロア王国東部、リーバス地方の南、エゲレア王国との国境付近にある鉱山。


「フープラ鉱山?」

「そう。ここの産である可能性が高いね」


 ウラウの町からフープラ鉱山までは、街道を南西に進んでイクスピの町へ。そこから南東へ向きを変え、ファタイの町からは南下。

 行き着く先がフープラ鉱山である。


魔結晶(マギクリスタル)を多く産する優秀な鉱山でね。特徴的な不純物として0.0001パーセントほどのリチウムを含むんだよ」

「つまり、サンプルの制御核(コントロールコア)はリチウムを含んでいた、と」

「そういうこと。ボクの知る限りでは、リチウムを含む魔結晶(マギクリスタル)は他の鉱山では採れていないなあ」


 ちなみに、0.0001パーセントの不純物は、魔法工学的には何の問題もない。

 影響が出てくるのは0.01パーセントくらいからである。

 つまりここの魔結晶(マギクリスタル)は十分に純粋で高性能ということである。


*   *   *


『サキ様、報告があります』

「お、老君、待ってたよ」


 フープラ鉱山産らしいと見当が付いた時点で、サキは老君に話しておいたのである。

 そして老君はすぐに独自調査を開始していたのだ。


『フープラ鉱山には、『販売代理店』の息が掛かっています』

「何だって? ……うーん、ある意味予想どおりなのかな? 詳しく聞かせておくれよ」

『はい。……フープラ鉱山はかなり規模が大きい鉱山でして、国営の坑道だけでなく、民間もいくつか坑道を持っています。その1つが『販売代理店』所有でした』

「また『販売代理店』かい……」

『はい。こうなりますと、間違いなく怪しいですね』

「まったくだね。……そっちは老君が動いているんだろう?」

『もちろんです。ですが、相手の技術力がわかりませんので、手探り状態です』

「そうだろうね」


 焦ってこちらのことがバレてしまっては元も子もない、と老君は言った。


「それはそうだろうね」


 これまでの経緯を見ても、侮れない相手のようだ、とサキも感じている。


「でも、『球形基地』の方のケリが付いたのは、よかった」


 エルザが言った。


『はい、エルザ様』

「そうだよね。エルザの言うとおり、黒幕がいるのは『バックドア』の方だから」


 その黒幕が一筋縄では行かない相手だけど、とサキは言った。


『仰るとおりです』

「老君、ボクに手伝えることはあるかい?」

『いえ、今回、魔結晶(マギクリスタル)の産地を特定していただけたことで大助かりです』

「くふ、それならよかったよ」


*   *   *


『サキさんに産地を特定してもらいましたから、早速産地の監視を始めましょう』


 老君は『覗き見望遠鏡(ピーパー)』を起動。

 セルロア王国のフープラ鉱山に焦点を合わせた。


 ここの鉱山は、断層崖だんそうがいと思われる場所に、横並びに坑道が掘られ、採掘が行われている。それは東をM1として、順に番号を振られていた(MはMine、鉱山の意)。

 その形式上、坑道内の分岐は横ではなく縦方向に向いているのが特徴だ。


 例えば、最初の坑道はほぼ水平に掘っていき、途中で分岐する場合は脇道を作るが、それは横に伸ばすのではなく、すぐに下方へと転じ、斜め下へと掘っていくことになる。


『全部で31の坑道が掘られ、うち25が国営の坑道。これは間違いないですね』


 残る民営の坑道は6。

 『販売代理店』は西端の坑道……M31をもう2軒の商店と共同で運営していた。

 だが。


『闇鉱山とでもいいますか……非公式……非公認の坑道が3本あるのですね』


 こっそりと掘った坑道が3つ見つかったのだ。


『こちらも怪しいですね』


 正式に坑道を運営しているその裏で、非公式な採掘もしている、という可能性もあるからだ。


 時間を掛けて観察し、評価するつもりの老君であった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20220418 修正

(誤)『はい。……フープラ鉱山はかなり規模が大きい鉱山でしで、

(正)『はい。……フープラ鉱山はかなり規模が大きい鉱山でして、

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― 新着の感想 ―
[一言] >>ふふん、面白いねえ 先「もっきゅもっきゅ」 >>産地ごとの特徴が 先「コクとか酸味とかね」 仁「珈琲か」 >>その1点を指差した エ「フ○プラ・・・・・工●?」 先「何処ぞの動画チャ…
[一言] >>サキの発見 新しい味とか新食感とか。 >>「ふふん、面白いねえ」 サキは、『バックドア』付き制御核の食事的解析を行っていた。 >>「おや、エルザ。……うん、ボクでもすぐには無理だ…
[一言] 染料の次は魔結晶の不純物からの特定ですか やはり現物から得られる情報が結構あるもんですねえ
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