86-27 招待に応じて
5月22日。休暇を取ったアーノルトとチェルを、仁の『ハリケーン』が『アヴァロン』まで迎えに来た。
「ジン、久しぶりだな」
「エイラ、カチェア、グローマ、久しぶり。今回はアーノルトを迎えに来たから長居できないんだ」
「それは仕方ないな」
「また今度、ゆっくり来てくださいね」
「待ってるよ」
「ああ、ありがとう」
「室長、いい休暇を」
「ありがとう」
そんな見送りを受けて、仁、アーノルト、チェルは『ハリケーン』へ。
ちなみに今回の操縦士はスカイ2である。
そして時間が惜しいので仁たちは転移門で蓬莱島へ移動した。
* * *
蓬莱島では老君から今回の事件についての説明がなされた。
『……というわけです』
「なるほど。『バックドア』と『球形基地』は無関係のようですね」
『はい。ですので、こちらはこちらでケリをつけておいたほうがよかろうと判断いたします』
「そうでしょうね」
アーノルトも老君の意見に賛成である。
多方面作戦はいいことではない。
『バックドア』についてはまだ事件が起きていないが、『球形基地』と『ファースト』については既にゴーレム派遣という実害が出ているのだから。
『バックドア』関連が静かな今のうちに『球形基地』と『ファースト』について解決できるものならしてしまいたいというのが蓬莱島の総意であった。
「しかし、『ファースト』の真の目的はいったい……」
「今のところさっぱりだ」
「そうか、ジンにもわからないか」
「直接会って聞いてみるしかないな。まあ『分身人形』でだが」
「僕はこのままでいいよ」
「え?」
「僕は自動人形だからね」
「いやいや、アーノルトのボディは『人間並み』なんだから無理できないだろう? その点『分身人形』なら必要に応じてパワーを出せるぞ」
「いや『セオドア』が作った魔導頭脳なら、危害は加えないはずさ」
「まだそうと決まったわけじゃないし……」
「いざとなったら転移で逃げるから」
「気を付けてくれよ……」
そこへ、ハンナが到着したと老君が報告した。
「御主人様、ハンナさんが到着しました」
「お、そうか」
「おにーちゃん、来たよ」
「よく来てくれたな」
「面白そうだもんね」
「ハンナはあまりこういう作戦に参加したことがないからな。気を付けてくれよ」
「うん。でも行くのは『分身人形』だけどね」
そして改めてアーノルトへ挨拶するハンナ。
「アーノルトさん、チェルさん、今日はよろしく」
「こちらこそ、ハンナさん」
簡単な挨拶をしたあと、ハンナは『分身人形』の操縦席へ。
「準備できたよー」
「よし」
仁も、念のためアーノルトの制御核のバックアップを取った。
これで、もしアーノルトの身になにかあっても復活できる。
何ごともなく帰還したならバックアップは廃棄すればいい。
アーノルトはそこまでしなくていいと言ったのだが、チェルが是非そうしてくれと言って譲らなかったのだ。
主人思いの自動人形である。
* * *
それからは、今回の遠征あるいは作戦、その背景を話し合った。
そして……。
「よし、そろそろいい時間だ。出発しよう」
というわけで『タウベ改』に乗り込む仁、礼子、ハンナ、アン、アーノルト、チェル。
6人乗りなのでちょうど定員だ。
操縦はアンが行う。
操縦なら礼子もできるのだが、この『タウベ改』は標準型なので礼子ではちょっと小柄すぎて操縦しづらいと仁が判断したからである。
* * *
現地時間午前7時、『タウベ改』はセルロア王国東部上空にいた。
「転移問題なし。ポジション確認。これより合流地点へ向かいます」
アンは報告すると『タウベ改』を目的地へ向けた。
観察衛星『ウォッチャー』で宇宙から特定したポジションである。
およそ10分でその場所へ到着。
そこにはホープと『スポークス』が待っていた。
「ようこそ、ホープの製作者殿。そして友人の方々。私のことは『スポークス』と呼んでくれ」
『スポークス』はそう言って仁Dたち一行を歓迎した。
「挨拶や自己紹介は向こうに着いてからにしよう」
「わかった」
ということで、一行は『タウベ’』と『タウベ改』で『ワンボックスカー』へと向かう。
もちろん『スポークス』はホープと共に『タウベ’』で、である。
10分ほどの飛行で『ワンボックスカー』に到着。
「さあ、こっちだ」
『スポークス』は仁たちを『ワンボックスカー』内部へと誘った。
「ちょっと待ってください。このまま行ったら、我々はともかく、3人は窒息するのでは?」
『球形基地』内部には酸素がなかったのである。
「心配はいらない。時間はたっぷりあった。今頃『ファースト』は球形基地内の空気を呼吸可能なものに入れ替えているだろう」
「それならいいのですが。……でも、万が一ということもあります。確認させてください」
「いいだろう。行って来るがいい」
「ええ」
ホープは単身、転移魔法陣で移動。そして15秒後に戻ってきた。
「大丈夫です、確認してきました、向こうには呼吸可能な空気があります。気温は摂氏23度、気圧は760水銀柱ミリメートル」
「よし」
ホープにより、転移先が安全なことが判明した。
「では行こう」
「うむ」
内部の転移魔法陣で移動する一行。
転移先はもちろん『球形基地』内部である。
『魔導頭脳ファースト』までのルートは、一度ホープも通った道筋。
その同じ道をたどり、仁たちは『ファースト』の待つ部屋へと向かうのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日4月14日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20220414 修正
(誤)そこにはワンボックスカーと、ホープと『スポークス』が待っていた。
(正)そこにはホープと『スポークス』が待っていた。
(誤)ホープは単身、転移魔法陣で移動。そして15秒後に持ってきた。
(正)ホープは単身、転移魔法陣で移動。そして15秒後に戻ってきた。
(誤)ミリメートル水銀
(正)水銀柱ミリメートル
略式に『ミリ水銀』などと言っていたのでつい。




