86-25 ラクシェ工房
『ハリケーン』は1時間弱でウラウの町からガイロフの町へと移動した。
そのまま郊外に着陸し、仁Dと礼子とで町中へ。
このあたりの町は防壁はなく、外敵による被害も少ないことがうかがえる。
「そこそこ大きな町だな」
「ゴーレムの歩哨が立っていますね」
礼子が指差す方をみると、戦闘用と思われるゴーレムが町の外を睨みつけるようにして立っていた。
仁Dと礼子には目もくれないので、対人用ではなくそれ以外の外敵が対象のようだ。
咎められることもなく、仁Dと礼子はガイロフの町へ。
地方都市ではあるが、かなり大きく、人も多く、賑わっている。
時刻は午前10時ころ。
「『ラクシェ工房』だったな」
「はい。聞いてまいります」
「頼む」
礼子は、旅行者ではなく町の住人と思われる人を選んで道を訪ねた。
「ああ、『ラクシェ工房』ね。そこの通りを真っ直ぐ行って、2つ目の交差点を左に……」
「ありがとうございます」
と、そんな感じで道を確認し、仁Dと礼子は『ラクシェ工房』へ。
5分ほどで到着。
賑やかな大通りから少し外れた、閑静な場所にある工房であった。
「中堅どころって感じかな」
「そうですね。ゴーレムの製作がメインで、一部魔導具も作っているようです」
「だな」
看板代わりにゴーレムの外装が置かれていて、その手に『ラクシェ工房』と書かれた表札があった。
「ここは、ストレートに用件を話すのがいいでしょうね」
「そうだなあ。専門家ばかりだろうし」
説明すれば話が通じるだろうと、仁Dと礼子は『ラクシェ工房』の扉を叩いた。
「はい、いらっしゃいませ……え?」
出てきた職人は、仁Dと礼子を見て固まった。
「今代魔法工学師、ジン殿……と、レーコ嬢!?」
「あ、はい、こんにちは」
「ちょ、ちょっと、お待ち下さいいい!」
職人は身を翻すと工房の中へ駆け込んでいった。
そして30秒後。
「ジン殿、こんな僻地の工房へようこそ!」
「レーコ嬢、お目にかかれて光栄です!」
「まさかお目にかかれるなんて!」
等々、口にしながら大勢の職人が殺到してきたのだった。
* * *
「……大変、失礼いたしました」
「いえ、お気になさらず」
騒動の後、仁Dと礼子は商談室に通された。
商談室といっても、一番奥の応接間である。
「それで、本日はどんな御用でしょうか」
仁Dたちに応対しているのは『ラクシェ工房』の主、ランドウ・ラクシェ。
壮年の男で、しっかりした印象がある。
「実は、とある事件を追っていまして」
「事件ですか?」
「はい」
ここで仁Dは、『バックドア』が仕込まれた制御核を追跡していることを説明した。
その過程で制御核の『バックドア』を無効化し、出どころを探していることも。
もちろん『バックドア』がどういうものかも説明しており、ランドウ・ラクシェは正しく理解してくれた。
「そんなことがあったのですか。……で、私どもが納品したゴーレムの制御核にもその『バックドア』が……」
「そうなんです」
「それではジン殿が自らおいでになるわけですね……」
「『世界警備隊』も動いていますからね」
「わかりました。まずは確認いたします。やり方のご指導をお願いできますか?」
「もちろんです」
口頭で説明することもできたが、ランドウは仁Dからの直接指導を願い出た。
余計なプライドもなく、何が必要か判断できるいい指導者である。
* * *
「……というわけだ」
「おお……」
「そんなことが……」
ランドウからの説明を聞いた工房の職人たちは皆、顔を顰めた。
「早速確認しましょうぞ」
職人頭のドーブ・ノーエンが胸を叩いた。
「お前ら! 製作中のゴーレムは一旦そのままにしておけ! まずは在庫の『制御核用魔結晶』から調べていくぞ!」
「はい!」
職人頭の号令の下、職人たちは一斉に確認作業を開始したのだった。
* * *
「結果、128個のうち24個が『バックドア』付きでした」
「内訳は?」
「24個全て、光属性の魔結晶を使っていました」
「やはり光属性か……」
当面、光属性の魔結晶を使う際は十分な検査をしてから使うか、全属性に切り替えるかした方がよさそうだと仁Dは提案。
「そうですね」
ランドウ・ラクシェもそれを受け入れたのである。
さらに、『光属性』の魔結晶を使ったゴーレムは、これまでに32体出荷されたということであった。
「その出荷してしまったゴーレムはどうなりますか?」
「それに付きましてはこちらでフォローいたします。あ、3体はウラウの町でしたので29体ですね」
その3体は町長のところとリーマス商会のものである。
残る29体はもう少し近いところらしく、『ラクシェ工房』で交換をすることになった。
交換に伴うコストはどうするのか、と仁Dは思ったが、
「これは信用に関わることですので全てこちらが持ちます」
ということで、この工房が良心的な運営をしていることがうかがえたのである。
仁Dを操縦している仁としても安心であった。
さて、最後の問題は、その『光属性の魔結晶』を購入した先である……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20220412 修正
(誤) 交換に伴うコストはどうするのか、と仁Dは思ったが、」
(正) 交換に伴うコストはどうするのか、と仁Dは思ったが、




