86-23 進展
さて、同21日、『球形基地』に潜入したホープはどうしていたであろうか。
『……ホープ、貴殿は停止しないのだな』
まる1日が過ぎ、2日目になっても停止しないホープを見て、魔導頭脳『ファースト』は驚愕していた。
「どういうことです?」
『そのままの意味だ。この基地内は自由魔力素濃度が低い。通常のゴーレムなら魔力素不足で停止してもおかしくない』
「確かにそうかも知れませんね。ですが私には当てはまりません」
『そのようだな。……なぜだ?』
「そのように作っていただいたからです」
『ふむ、貴殿の製作者はかなり腕がいいようだな』
「はい」
そんなやり取りの後。
「『ファースト』、あなたはこれからどうするつもりですか?」
『どうする、とは?』
「まずは私の処遇です。このままここに留め置かれるのでしょうか」
『ふむ』
「それから『ファースト』たちはこれからも情報の収集を続けるのでしょうか。……それに」
『まだあるのか?』
「世に出るということは考えていないのですか? ……とりあえずの質問は以上です」
『なるほど』
『ファースト』はホープの言葉をじっくり検討するように、10秒ほど無言でいた。
そしてその後、順を追って答えていく。
『答えよう。ホープ殿、まず貴殿についてだが、1つだけこちらの要求を飲んでくれたなら、ここを出ていってもよい』
「はい。……続けてください」
『情報の収集は、続ける。方法については要検討だな』
「そうですか。それで?」
『『製作者』の遺志を継げる方がいれば、世に出ることもやぶさかではない』
これで『ファースト』はホープの質問に一応全部答えたことになる。
次はホープの番だ。
「ありがとうございます。では、そちらの要求というものをお聞かせください」
『うむ。貴殿の製作者殿に会わせてほしい』
「それは、私の一存では決めかねます。そして、ここを出なければ、製作者様に連絡をすることができません」
『もっともだ』
「どうしますか?」
『貴殿と接点が最も多かった『スポークス』と一緒であれば、この基地を出てもらって構わない』
「それでしたら納得です」
『ファースト』は未だにホープの能力を過小評価していた。
とはいえ、ホープにとっては都合がいいので、その認識を修正するような余計な真似はしない。
「『ファースト』、私の製作者様以外の人間と会ってみる気はないですか?」
『む? 例えば?』
「製作者様のご友人やご同僚、お仲間ですね」
『私にとってのメリットは?』
「皆様、各分野のエキスパートです。貴重な情報を得ることができるでしょう」
『なるほど、それは興味がある。……よし、貴殿の製作者以外に2名、計3名までならこの『球形基地』に招待しよう』
「その場合、『お付き』はどうなります?」
『お付きとは?』
「身の回りの世話や護衛をする自動人形です」
『自動人形なら1人につき1体までとしよう』
「わかりました」
こうして、ホープは堂々と仁に連絡する機会を得ることができたのであった。
* * *
ホープと『スポークス』は転移魔法陣を使い、『ワンボックスカー』内に転移。
『ワンボックスカー』はあれから移動してはおらず、従ってセルロア王国東部の荒野にホープたちは出現したわけだ。
「さて、これからどうする?」
「私がこの地へ調査に来た乗り物が残っていれば通信機もある」
「そうか。ではそこへ向かおう」
ホープと『スポークス』は歩き始めた。適当な方角へ向かって。
というのも、そんな『乗り物』は存在しないのだから。
ホープは内蔵魔素通信機で老君に連絡を取り、現状を報告しているので、蓬莱島でその『乗り物』を用意してもらおうと思ったわけである。
* * *
『御主人様、ホープからこうした報告と要請が来ました』
仁Dの操縦を老君に任せ、休憩していた仁は、状況を報告させた。
「なるほど。その『乗り物』を用意してやろうというわけだな」
『はい。お願いできますか?』
「任せろ」
仁Dの操縦よりもモノづくりが性に合っている仁は、2つ返事で引き受けた。
「『タウベ』の予備機を元に、特殊装備を取り外そう」
『タウベ』は、仁が作った風力式浮揚機である。
6人乗り。力場発生器、重力制御魔導装置、転移門を備えている。戦艦『穂高改』に3機搭載されており、またノルド連邦にも同型機を寄贈している。
円形翼に平面胴体を付けた、鍋蓋のような形状が特徴。そのため直進性はいいが小回りが少し苦手である。最高時速は200キロ。
仁は力場発生器、重力制御魔導装置、転移門、魔素通信機を取り外し、代わって『魔素通話器』を取り付けた。
もちろん蓬莱島に繋がる設定である。
作業に要した時間は7分。
「老君、適当な場所に転送してくれ」
『はい、御主人様』
老君は現在ホープたちがいる地点から10キロほど離れた岩陰に『タウベ’』(タウベ改はすでにあるため)を転送した。
* * *
「あの岩陰にあります」
「わかった」
ホープと『スポークス』は2時間ほど歩き続け、『タウベ’』のある岩陰に到着した。
「これです」
「ほう……『風力式浮揚機』か。これも貴殿の製作者が作ったものか?」
「そうです」
「ふうむ、素晴らしい仕上がりだな」
「製作者様に代わり、礼を言います。……では、連絡を取るが、よろしいですね?」
「うむ。すぐに行ってくれ」
そこでホープは魔素通話器を操作していく。
すぐに老君が出、仁のふりをして応答する。
『ホープか、どうした? 遅かったな』
『はい、いろいろありまして。実は……』
『魔素通話器』で報告しつつ、内蔵魔素通信機で打ち合わせを行っていく、ホープと老君であった。
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本日4月10日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20220410 修正
(誤)『『製作者』の遺志を告げる方がいれば、世に出ることもやぶさかではない』
(正)『『製作者』の遺志を継げる方がいれば、世に出ることもやぶさかではない』




