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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
86 暗示事件篇
3276/4353

86-23 進展

 さて、同21日、『球形基地』に潜入したホープはどうしていたであろうか。


『……ホープ、貴殿は停止しないのだな』


 まる1日が過ぎ、2日目になっても停止しないホープを見て、魔導頭脳『ファースト』は驚愕していた。


「どういうことです?」

『そのままの意味だ。この基地内は自由魔力素(エーテル)濃度が低い。通常のゴーレムなら魔力素(マナ)不足で停止してもおかしくない』

「確かにそうかも知れませんね。ですが私には当てはまりません」

『そのようだな。……なぜだ?』

「そのように作っていただいたからです」

『ふむ、貴殿の製作者はかなり腕がいいようだな』

「はい」


 そんなやり取りの後。


「『ファースト』、あなたはこれからどうするつもりですか?」

『どうする、とは?』

「まずは私の処遇です。このままここに留め置かれるのでしょうか」

『ふむ』

「それから『ファースト』たちはこれからも情報の収集を続けるのでしょうか。……それに」

『まだあるのか?』

「世に出るということは考えていないのですか? ……とりあえずの質問は以上です」

『なるほど』


 『ファースト』はホープの言葉をじっくり検討するように、10秒ほど無言でいた。

 そしてその後、順を追って答えていく。


『答えよう。ホープ殿、まず貴殿についてだが、1つだけこちらの要求を飲んでくれたなら、ここを出ていってもよい』

「はい。……続けてください」

『情報の収集は、続ける。方法については要検討だな』

「そうですか。それで?」

『『製作者』の遺志を継げる方がいれば、世に出ることもやぶさかではない』


 これで『ファースト』はホープの質問に一応全部答えたことになる。

 次はホープの番だ。


「ありがとうございます。では、そちらの要求というものをお聞かせください」

『うむ。貴殿の製作者殿に会わせてほしい』

「それは、私の一存では決めかねます。そして、ここを出なければ、製作者様に連絡をすることができません」

『もっともだ』

「どうしますか?」

『貴殿と接点が最も多かった『スポークス』と一緒であれば、この基地を出てもらって構わない』

「それでしたら納得です」


 『ファースト』は未だにホープの能力を過小評価していた。

 とはいえ、ホープにとっては都合がいいので、その認識を修正するような余計な真似はしない。


「『ファースト』、私の製作者様以外の人間と会ってみる気はないですか?」

『む? 例えば?』

「製作者様のご友人やご同僚、お仲間ですね」

『私にとってのメリットは?』

「皆様、各分野のエキスパートです。貴重な情報を得ることができるでしょう」

『なるほど、それは興味がある。……よし、貴殿の製作者以外に2名、計3名までならこの『球形基地』に招待しよう』

「その場合、『お付き』はどうなります?」

『お付きとは?』

「身の回りの世話や護衛をする自動人形(オートマタ)です」

自動人形(オートマタ)なら1人につき1体までとしよう』

「わかりました」


 こうして、ホープは堂々と仁に連絡する機会を得ることができたのであった。


*   *   *


 ホープと『スポークス』は転移魔法陣を使い、『ワンボックスカー』内に転移。

 『ワンボックスカー』はあれから移動してはおらず、従ってセルロア王国東部の荒野にホープたちは出現したわけだ。


「さて、これからどうする?」

「私がこの地へ調査に来た乗り物が残っていれば通信機もある」

「そうか。ではそこへ向かおう」


 ホープと『スポークス』は歩き始めた。適当な方角へ向かって。

 というのも、そんな『乗り物』は存在しないのだから。


 ホープは内蔵魔素通信機(マナカム)で老君に連絡を取り、現状を報告しているので、蓬莱島でその『乗り物』を用意してもらおうと思ったわけである。


*   *   *


御主人様(マイロード)、ホープからこうした報告と要請が来ました』


 仁Dの操縦を老君に任せ、休憩していた仁は、状況を報告させた。


「なるほど。その『乗り物』を用意してやろうというわけだな」

『はい。お願いできますか?』

「任せろ」


 仁Dの操縦よりもモノづくりが性に合っている仁は、2つ返事で引き受けた。


「『タウベ』の予備機を元に、特殊装備を取り外そう」


 『タウベ』は、仁が作った風力式浮揚機(ブローフローター)である。

 6人乗り。力場発生器フォースジェネレーター重力制御魔導装置(グラビテイショナー)転移門(ワープゲート)を備えている。戦艦『穂高改』に3機搭載されており、またノルド連邦にも同型機を寄贈している。

 円形翼に平面胴体を付けた、鍋蓋のような形状が特徴。そのため直進性はいいが小回りが少し苦手である。最高時速は200キロ。


 仁は力場発生器フォースジェネレーター重力制御魔導装置(グラビテイショナー)転移門(ワープゲート)魔素通信機(マナカム)を取り外し、代わって『魔素通話器(マナフォン)』を取り付けた。

 もちろん蓬莱島に繋がる設定である。


 作業に要した時間は7分。


「老君、適当な場所に転送してくれ」

『はい、御主人様(マイロード)


 老君は現在ホープたちがいる地点から10キロほど離れた岩陰に『タウベ(ダッシュ)』(タウベ改はすでにあるため)を転送した。


*   *   *


「あの岩陰にあります」

「わかった」


 ホープと『スポークス』は2時間ほど歩き続け、『タウベ(ダッシュ)』のある岩陰に到着した。


「これです」

「ほう……『風力式浮揚機(ブローフローター)』か。これも貴殿の製作者が作ったものか?」

「そうです」

「ふうむ、素晴らしい仕上がりだな」

「製作者様に代わり、礼を言います。……では、連絡を取るが、よろしいですね?」

「うむ。すぐにおこなってくれ」


 そこでホープは魔素通話器(マナフォン)を操作していく。

 すぐに老君が出、仁のふりをして応答する。


『ホープか、どうした? 遅かったな』

『はい、いろいろありまして。実は……』


 『魔素通話器(マナフォン)』で報告しつつ、内蔵魔素通信機(マナカム)で打ち合わせを行っていく、ホープと老君であった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日4月10日(日)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20220410 修正

(誤)『『製作者』の遺志を告げる方がいれば、世に出ることもやぶさかではない』

(正)『『製作者』の遺志を継げる方がいれば、世に出ることもやぶさかではない』

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― 新着の感想 ―
[一言] >貴殿の製作者以外に2名、計3名まで >自動人形なら1人につき1体まで 折角の招待とは言え、まだ何かあるとも限らないので、仁本人ではなく分身人形として、お付きは当然礼子。 残り二人&お付きは…
[一言] >『『製作者』の遺志を継げる方がいれば、世に出ることもやぶさかではない』 仁「ってことらしいけど」 ア「馬が合わないし無理ポ」 >『貴殿と接点が最も多かった『スポークス』と一緒であれば、…
[一言] >>さて、同21日、『球形基地』に潜入したホープはどうしていたであろうか。 そりゃあ見るも無惨な姿よ。 >>「そのように作っていただいたからです」 超省エネでこき使えるように作られまし…
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