86-22 解析、解析、解析
ウラウの町の町長宅で、『一時停止したゴーレム』の話を聞いた仁Dと礼子。
「では、そのゴーレムを調べさせていただけますか?」
「ええ、構いません。というか、是非お願いします」
町長エイゾウ・イラチオは一も二もなく承諾した。
「一応申し上げておきますが、知られて困るような情報は持っていませんよね?」
「それは大丈夫です。主に雑用や力仕事を任せていますから」
「わかりました」
そして仁Dと礼子は家宰のセチアに案内され、ゴーレムを格納してある倉庫へと案内された。
そこは母屋に隣接した、しっかりした建物である。
「ここです」
「ほう」
倉庫の扉を開けると、2体のゴーレムが専用のハンガーに固定されて保管されていた。
雑用や力仕事に使っているということであったが、比較的きちんと整備されているように見えたので、仁Dは感心する。
「普段は停止させているのですね」
「そうです」
「では、解析させていただきます」
「お願いします。手伝いは入り用でしょうか?」
「礼子がいてくれますから大丈夫です」
「わかりました。私は母屋におりますから、何かございましたらあの呼び鈴を鳴らしてください」
そう告げて家宰のセチアは母屋へと帰っていった。
「さて、やるか。まずは左のゴーレムからだ」
2体のゴーレムは同型ではなく、向かって左側は汎用、向かって右側は重労働用に見える。
仁Dは汎用の方から解析を開始した。
「おそらくこちらが馬車の御者を務めていたんだろうな」
胸部の外装を取り外していく仁D。
外装は磨かれていて錆はないが、使用されているゴーレムなので、細かな凹凸や傷はある。
「構造は簡易アドリアナ式だな。どこの工房だろう。丁寧な作りをしている」
製作者については制御核を調べればわかるだろうし、どこから購入したのかはあとで町長に聞けばわかるだろう、と仁Dは思った。
「簡易アドリアナ式だから、制御核は胸部だな」
それを取り出した仁Dは、まず目視で調べてみる。
仁Dの目は人間の目よりも遥かに高性能だ。
操縦している仁が望めば、数千倍の倍率を持つ顕微鏡になるし、また100倍以上の倍率を持つ望遠鏡にもなる。
赤外線や紫外線、電波だって見ることができるのだ。
今は肉眼モードである。
といっても解像度は普通の人間の100倍以上。
仁と連動することにより、分子配列まで『視る』ことも可能。
「うん、こいつにも『バックドア』が仕掛けられているな。……入れ替えよう」
仁Dは用意してきた『光属性の魔結晶』に汎用ゴーレムの制御核を転写した。
そして確認。
これまでわかっていたように、普通の『知識転写』では『バックドア』はコピーされない。
「よし、こいつを戻して、お礼代わりに整備しておこう」
遊びが多くなっていた関節を調整し、骨格の歪みを修正。
筋肉組織の再整備と魔導神経線の還元。
外装の傷と凹凸を直して組み付ければ、新品同様になる。
ここまで5分。
「よし、もう1体も調べてみよう」
今度は重労働用ゴーレムに取り掛かる仁D。
こちらも『バックドア』が仕掛けられていたので、同じように『知識転写』した『制御核』と入れ替える。
そして同様に整備して再組み立て。
すべての作業を終わらせるまで15分も掛かっていない。
「さて、これで終わりでもいいんだが……」
どうして3秒間停止したかはまだ不明である。
『バックドア』の影響であろうとは思われるが、慎重な検証が必要となる。
なので町長への説明をどうするか、がさしあたっての問題だ。
「原因は不明だがどこかで大きなノイズが発生したため、一時的に動作が間延びした、とでも説明するか……」
* * *
「そうですか、ノイズですか……」
仁Dと礼子は母屋に戻り、町長に報告を行った。
「ノイズと言っても魔力によるものですので、人間には感じ取れません。たまたま波長が近くて共鳴か共振してしまったため影響を受けたのでしょう」
「な、なるほど」
わかったようなわからないような、という顔をする町長であった。
「ところで、あのゴーレムはどこで製造されたものですか?」
「ええと、確か『ガイロフの町』の工房で作られたものです」
ガイロフはウラウの町から南西に100キロほど進んだところにある地方都市である。
セルロア王国リーバス地方の中心と言っても過言ではない。
「確か『ラクシェ工房』と言ってましたな」
「ありがとうございます。それだけ伺えれば十分です」
「お役に立てましたか?」
「ええ、十分に」
「それはよかったです」
仁Dは村長に礼を言うと、引き止めるのを断ってその場を辞した。
「さて、リーマス商会にも行ってみよう」
「はい」
リーマス商会の場所は老君が『覗き見望遠鏡』で確認しておいてくれたので迷わず向かうことができた。
そこは中程度の規模の商会で、主に食料品を取り扱っていた。
ここでも仁Dが『今代魔法工学師』であると名乗ると、ほぼ無条件でゴーレムを調べさせてくれたのである。
そして、ここも重労働用ゴーレムだった。製作所も同じ『ラクシェ工房』だ。
同じような作業で確認が取れた。
所要時間は7分。
一時停止原因についても同じように説明。
お礼を言われ、引き止めるのを断ったのも同じ。
「さて、それじゃあ『ラクシェ工房』に行ってみないとな」
「そうですね」
そういうわけで仁Dと礼子は、郊外に駐機した『ハリケーン』に乗り込み、一路地方都市ガイロフを目指したのである。
取り出された『バックドア』付きの制御核は詳細に解析するため、転送機で蓬莱島へと送られたのはいうまでもない。
ちなみに、この『バックドア』は特定の信号を受信すると作動するタイプなので、シールドしておけば蓬莱島のポジションその他が知られることはない。
少しずつ、謎が明らかになっていく……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20220409 修正
(誤)俺を言われ、引き止めるのを断ったのも同じ。
(正)お礼を言われ、引き止めるのを断ったのも同じ。
(旧)
取り出された『バックドア』付きの制御核は転送機で蓬莱島へと送られたのはいうまでもない。
(新)
取り出された『バックドア』付きの制御核は詳細に解析するため、転送機で蓬莱島へと送られたのはいうまでもない。
ちなみに、この『バックドア』は特定の信号を受信すると作動するタイプなので、シールドしておけば蓬莱島のポジションその他が知られることはない。
少しずつ、謎が明らかになっていく……。




