86-15 仁ファミリーの仮説
「そうすると、例の『バックドア』を仕込んだのは別の何者か、ということかな」
ラインハルトが言った。
『仁ファミリー』による考察はまだ続いている。
「つまり、もう1組、謎の黒幕がどこかにいるということかい?」
「サキ、そういうことさ」
ラインハルトはサキに頷いてみせた。
「じゃあ、その『クェント村』を狙ってゴーレムが派遣されたのはまったく別の事件ということになるんだね?」
サキも少し気になっているようだ。
「そう考えたほうがいいだろうな」
と、ラインハルト。
「『球形基地』は『球形基地』で、『バックドア』は『バックドア』でそれぞれ追っていけばいいんじゃないかな。もしも根っこが同じならどこかで1つにつながるはずだし」
「そうだな、ラインハルトの言うとおりだと思う」
仁も先入観を持って事件に当たるのはよくないと認めた。
「その『バックドア』付きの『制御核』がいつ頃から流通し始めたかはわからないの?」
今度はハンナが意見を口にした。
「まだ調査中だ。そもそも世界中にどれくらい広まっているのかもわからない」
『世界警備隊』がどのくらいの期間で検査できるかもまだ未知数である。
「それが問題なんだよね。おにーちゃんが全部請け負うわけにも行かないし」
「そういうことだな。だが、『バックドア』を仕込まれていたのは結構長い期間だった可能性が高いな。だからかなりの数のゴーレムが危険だろう」
「いやだね……」
「まったくだ。しかも現在進行形の可能性さえあるしな」
「目的はなんなんだろうね?」
「それなんだよなあ」
「幾つか考えられるよ」
今度口を開いたのはルイス・クズマ。
「まあ、真っ先に思いつくのは『世界征服』だろうけど、この程度では無理だね。よって、『混乱』を引き起こすのが目的かもしれない」
「なるほど。だが、何のために?」
「そこが難しいな。混乱を引き起こして、その隙に何をしようというのか……そこまではわからない」
「だな……」
が、ルイスは言葉を続けた。
「それだけじゃないぞ。非常に小さな可能性だが……『世界平和』のためかもしれない」
「何だって?」
「いや、だから可能性としてはごく小さいんだよ。だが、0じゃない」
ルイスが言うには、この『バックドア』は悪事に使えるだけではない、というのだ。
「例えば、『バックドア』を仕込んだ自動人形を秘書として陰謀を企てていたら?」
自動人形だから『主人』を裏切ることはない、という先入観があるため、悪巧みを聞かせてしまうということは十分に考えられた。
「ゴーレムも同じだ。反乱を企て、ゴーレム部隊に攻撃を命じたが、そのゴーレム部隊は反乱に加担せず、かえって反逆した主人を捕まえてしまうことも」
「あ……」
「なるほど……」
ルイスの発想に、居並ぶ面々は感心した。
「善意というか、人類のためにやっている可能性もあるのか」
「あくまでも可能性だけどね」
「そうだろうね」
「だが、そうだとしたら、危険だ」
フィリシャスが発言した。
「たとえ善意の仕掛けだとしても、やり方がまずい」
「兄さんに同感です」
デルフィナもフィリシャスの意見に賛同した。
「そんなものが多数存在したら、誰もゴーレムや自動人形を信用できなくなってしまいますもの」
「案外それが狙いだったりしてな」
「……もしそうなら、恐ろしいことですよ」
「そこまで考えてのことではないといいんだが」
「……」
意外と大きな問題に発展するかもしれないと、皆思い始めた。
「一刻も早い解決を目指したほうがよさそうだな」
仁が言うと、皆同じ意見だった。
「『アヴァロン』で流通ルート調査をしているようだが、こちらも『第5列』を出して援助したほうがいいかもしれないな」
そこで仁は老君に指示を出し、『第5列』に『アヴァロン』からの調査員をサポートするようにさせたのであった。
* * *
パーティも終盤、考え込んでいたハンナが突然声を上げた。
「……うん? あれ?」
「ハンナ、どうした?」
「あのねおにーちゃん、ちょっと気が付いたことがあるの。みんなも聞いてくれる?」
ファミリー随一の天才肌であるハンナの意見を聞きたくないというものは誰もいなかった。
「えっと、『バックドア』を仕込まれていたのは、『光属性』の魔結晶なのよね?」
「そう聞いているな」
「その理由は『通信』の機能を持たせるため」
「だな。光属性だと、空間に対する干渉力が強いからな」
「でも普通、制御核って『全属性』を使うよね?」
「まあ、その方が多いな」
「……だったら、なぜ光属性なのかな?」
「え?」
「わざわざ光属性の魔結晶を制御核に加工しているんでしょう?」
「何を…………ああ、そうか!」
仁はハンナが言わんとしていることを察した。
要するに、卵が先か鶏が先か、という話だ。
「光属性だったから『バックドア』を仕込んだんじゃなくて、『バックドア』を仕込むために光属性にした……?」
「その可能性もあると思うよ」
「さすがハンナだな!」
「ハンナちゃん、すごい」
つまり、制御核とするための魔結晶を購入した際、わざわざ光属性のものを購入したあるいは納品した、という可能性をハンナは示唆したのであった。
これはまったく新しい視点であり、即刻調査が必要な案件でもあった。
「マキナを通じて、『アヴァロン』に知らせよう」
そして仁も大急ぎで対処したのである。
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本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
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お楽しみいただけましたら幸いです。
20220402 修正
(誤)これはまったく新しい視点であり、即刻帳が必要な案件でもあった。
(正)これはまったく新しい視点であり、即刻調査が必要な案件でもあった。




