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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
86 暗示事件篇
3262/4361

86-09 ホープ、潜入

 『謎のゴーレム』がホープに興味を持った。

 それは、老君としては可能性あるにしてもかなり低いと見積もっていた反応である。

 とはいえ予期していなかったわけではないので、対応も練ってある。


『ホープ、奴らの拠点に行けるなら行ってください』


 と、内蔵魔素通信機(マナカム)で指示を出した。


 ホープの性能は、謎ゴーレムの数倍から数十倍、と老君は見込んでいる。

 加えて『防御盾(アイギス)改』と『転送装置』もあるので、99.99パーセント危険はないと見ている。


*   *   *


「私の情報がほしいなら、そちらの情報も開示してもらいたい」

「ふむ……」


 スポークスゴーレムは少し考え、返答する。


「それなら、我らと共に来るか?」

「いいのか?」

「構わない」

「それなら行こう」

「よし」


*   *   *


 そのやり取りは老君も『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で観察している。

 音声はホープの聴覚データを利用しているので、一言一句漏らさず聞き取っていた。

 その上で判断し、指示を出す。


『おそらく彼らはあなたを拠点に連れて行き、捕虜にするつもりでしょう。ですので、騙されたフリで彼らと共に行ってください』

『了解』

『ですが、危険を感じたら、すぐに退避してください。御主人様(マイロード)にご心配を掛けるようなことのないように』

『わかりました』


*   *   *


 老君とホープのやり取りは0.2秒ほどで終了。

 明確な行動指針を得たホープは、堂々とした態度で『謎ゴーレム』たちと行動を共にする。


 20体の『謎ゴーレム』は回れ右をし、ホープを取り囲むと来た道を戻っていく。


(ふうむ……最低でも10体はそのまま進み、私を護送するのはせいぜい10体だと思ったが……まさか全部のゴーレムが行動を共にするとはな)


 ホープ自身、『謎ゴーレム』の行動に驚いている。


 そして、この奇妙な一行は『ワンボックスカー』に到着した。


「入れ」

「何だここは?」

「お前には理解できないかもしれないが、ここから一瞬で別の場所に移動できるのだ」

「ほう、興味深いですね」

「戻れないかもしれないが、来るか?」

「嫌だと言っても連れて行くのでしょう?」

「そのとおりだ」


 『謎ゴーレム』は20体。ホープ1体を強引にさらうくらいわけはないと考えているのだろうが、ここにいる20体ではホープがその気になったら1分未満で全滅だろう。

 もちろん今回は手掛かりを得るため、何もしないが。


 『ワンボックスカー』の床には転移魔法陣が描かれていた。


(これが実物ですか)


 既に老君が確認済みではあるが、これまでにない形式のものである。

 メインは『転移』の魔法陣なのだが、そこに付随して2つの小さな魔法陣が『寄生』するように描かれている。

 この2つの魔法陣がきもなのだ。


(この2つで自由魔力素(エーテル)魔力素(マナ)に変え、魔力素(マナ)を転移魔法陣に供給しているようですね)


 つまりは『魔素変換器(エーテルコンバーター)』と『魔力炉(マナドライバー)』の役目をしているわけである。

 1つの魔法陣にそういった機能を付加したり、積層魔法陣としているものはあったが、こうした構成は初めて見るものである。

 機能的というよりも、実用的といった構成だ、と老君は評していた。

 というのも、転移魔法陣の最大の欠点である『起動が遅い』『連続使用ができない』という点を、この付加した2つの魔法陣が解消するわけだ。


 そういうわけで、『謎ゴーレム』とホープ、つまり21体のゴーレムは次々と転移魔法陣によって転移していったのである。


*   *   *


 転移先は、よくある金属製のホールであった。


(通信は……可能ですね……だが……自由魔力素(エーテル)濃度がかなり低い)


 ホープの『魔力反応炉(マギリアクター)』は希薄な自由魔力素(エーテル)濃度にも対応しているし、まったく自由魔力素(エーテル)が存在しない空間でもまる1日は稼働できるだけの『魔力貯蔵器(マナボンベ)』も内蔵している。

 なので行動に支障はなく、


「ここがあなた方の拠点ですか」


 と質問すると、スポークスゴーレムは驚いたようだった。


「……動けるのか。思ったよりも高性能なのだな」

「はい、そういう風に作っていただきましたので」

「そうか」


 だが、スポークスゴーレムはそれ以上言わず、無言でホープを先導してそのホールを出た。


 歩いていく通路も金属製。幅が5メートルほどあり、広い。高さも5メートル。

 空気はあるが、酸素がほとんどないようだった。ほとんどが窒素である。

 窒素と酸素では、少し窒素のほうが軽いので、声帯式の音声は若干高くなるが、特に聞きづらいことはなかった。


(金属の材質は……炭素鋼のようですね。ゆえに、酸化防止のため窒素を充填しているのでしょう)


 歩きながらホープはそう分析した。


*   *   *


 スポークスゴーレムは無言で20メートルほど歩いたあと立ち止まる。


「ここだ。入れ」


 それは突き当りの扉の前。

 幅3メートル、高さ3メートルほどで左右にスライドするタイプだ。


 ゆっくりと開いた扉。

 中は薄暗い。

 スポークスゴーレムは先んじて足を踏み入れた。ホープもそれに続く。


 そこは、半球状のドームの内部であった。


『よく来たな』


 金属的な声が響いた。


「……魔導頭脳か?」

『よくわかったな。そのとおり。私はこの基地を統括する魔導頭脳『ファースト』である』


*   *   *


 ホープの様子は、老君の操る『覗き見望遠鏡(ピーパー)』によりずっと見守られていた。

 そして、『転移探知システム』も、万全の状態で転移先を見つけようとフル稼働。

 同時に、ホープ自身が『魔力探知機(マギレーダー)』の『マーカー』となっていた。


『見つけました』


 そして老君は、見事に『謎ゴーレム』たちの拠点のポジションを特定したのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 お知らせ:異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

      の更新は都合により3月29日(火)14:00になります。


 20220327 修正

(旧)『おそらく彼らはホープを拠点に連れて行き、捕虜にするつもりでしょう。

(新)『おそらく彼らはあなたを拠点に連れて行き、捕虜にするつもりでしょう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 拠点バレ早すぎww。 得体の知れないゴーレムをあっさり拠点に招くし 転移先でも障害もなく通信できるみたいだし、 慎重かと思ってたけど、 エーテルの薄い地に拠点を構えることでの慢心かな。
[一言] >それは、老君としては可能性あるにしてもかなり低いと見積もっていた反応である。 老『Hit!!ホープは優秀な疑似餌ですね』 >「私の情報がほしいなら、そちらの情報も開示してもらいたい」 …
[一言] うわ、悪辣 普通のゴーレムなら機能停止しかねない場所に誘い込むとは 停止したらこれ幸いとバラしてたんだろうなあ
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