86-07 対峙すると
謎の『ワンボックスカー』を通じての黒幕の調査方法を思い悩む仁であったが、解決方法は向こうからやってきた。
『ワンボックスカー』内の転移魔法陣を使い、謎のゴーレム20体が再び転移してきたのである。
もちろん、老君は仁と相談中であっても、能力には十分に余裕があるため、『覗き見望遠鏡』によりそれを即察知した。
『御主人様、打ち合わせ中ですが、例の『ワンボックスカー』からゴーレム20体が転移してきました』
「何? それは都合がいいな」
『はい、御主人様。この機会を活かしましょう』
「そうだな。……奴らの目的地はやはり『魔法探求者』か?」
『進路からはそのように予測できます』
「よし」
これで、作戦の立て方がかなり狭まった。
改めて仁は老君と方針を考えていくことになる。
「やつらと対話することはできないかな?」
『はい、御主人様。難しいですが、不可能ではないかもしれません』
蓬莱島の頭脳である老君は、先日の接触で謎のゴーレムの思考パターンを多少なりとも掴んでおり、それを使って1つの作戦を考案した。
『ランド隊以外のタイプのゴーレムで対話を試みるのは有効かもしれません』
「なるほどな」
前回、ランド隊による5体の無力化という作戦を行っているため、万が一にも『同じ相手』と悟られてしまうと対話がスムーズに進まないのではないか、というわけだ。
「ホープならどうだろう?」
『はい、御主人様。よろしいかと』
「よし」
ホープは、仁が製作したゴーレムの中でも異色の1体だ。
元々は、仁がパンドール(パンドア)大陸に飛ばされ孤立していた際に、助手ゴーレムを欲した仁が、ろくな素材がない中で精一杯の技術を投じて作ったものだったが、その後蓬莱島で大規模な改修を受け今に至る。
そのボディは……。
骨格は発泡マギ・アダマンタイト、筋肉組織は『古代竜』の抜け殻とエイジングされた『地底蜘蛛糸』の複合。
6系統の魔導神経線を使い、信頼性は抜群。
サブプロセッサも4個持ち、外装は64軽銀製で、巨大百足の甲殻による補強を施されている。
さらには『防御盾改』までもが搭載されているのだ。
しかも体型は仁に倣っている。
特徴的なのは。右目が光属性(透明)、左目が雷属性(紫)というオッドアイだ。
これは、最初に製作された際、資材不足のため目の色が左右で違ってしまっていたことによる。
ランド隊に勝るとも劣らないワンオフのゴーレム、それがホープである。
「今回は『ハリケーン』の操縦をする必要はないからな」
* * *
『今度は失敗は許されないぞ』
『わかっている。ゆえに倍の戦力が投入されたのだ』
『ワンボックスカー』内の転移魔法陣から出てきた20体の謎ゴーレムは内蔵された通信装置で会話している。
20体は半分ほどのパワーで目的地を目指す。
『ワンボックスカー』を少し移動させていたので目的地である『魔法探求者』の拠点までは1時間ほど掛かるはずであった。
その道程を半分ほど進んだ時。
草がまばらに生えた、石灰岩が点在する荒野。
『止まれ。何かいる』
『……ゴーレムか?』
『そのようだ』
『外観から判断して、戦闘用ではないな』
『目的地から来たのか?』
『いや、あの者たちが作る形式とは違う』
『とりあえずは情報を得ることから始めるか?』
『そうだな。我ら20体の脅威になるとは思えん』
そんな会話が数秒のうちに交わされた。
ホープが『弱そう』な外観であったことが幸いし、20体の謎ゴーレムは警戒することなく接近していった。
『よし、では私が代表で話してみよう。……』
20体のうちの1体がスポークスマン……スポークスゴーレムとなった。
「我々に何か用か?」
「そうですね、単純な疑問です。どうしてこのような場所にいるのですか?」
まずは単純ではあるが核心をついた質問を投げかけるホープ。
が、スポークスゴーレムはすぐには答えず、
「質問に質問を返すようだが、それはお前も同じであろう?」
とホープに尋ね返した。
これは一筋縄ではないかないと感じ、ホープは具体と抽象の間くらいで答える。
「私は情報収集のためにこの一帯の地質を調べています」
「ふむ。では、このあたりの特徴は?」
「石灰岩の露出したカルスト地形ですね。地下には若干の空洞もあるようで、探せば鍾乳洞も見つかると思います」
「なるほど、地質を調べているというのは嘘ではないようだな」
「それで、最初の質問に戻ります。あなた方はどうしてこのような場所にいるのですか?」
おおよその見当はついているのだが、謎ゴーレムたちがどう答えるかでその後の対応が変わってくる質問だった。
「情報収集のためだ」
これまた抽象的な答えであった。
そしてこれは、謎ゴーレムたちがホープの知性を試しているともいえる。
「情報の種類はどういうものですか?」
なので、ホープも『それなり』の知性を演じる。
「今のところは秘密だ」
「そうですか。では、目的地は? クェント村ですか?」
「なぜそれを?」
「やはりそうでしたか。……簡単なこと。あなた方の進行方向にある人間の居住地といえばクェント村しかありませんから」
「そうか。論理的思考ができるのだな」
「ええ、それなりに」
このことで、謎ゴーレムは多少対応を変えることにしたようだ。
「そうか。……では、お前を作った人物の情報を教えてもらえるか?」
「駄目です。意味がありません。……あなた方の製作者について教えてくださるなら考えますが」
「それはできんな」
「そうでしょう」
このままでは平行線である。
ホープはやり方を変えることにした。
「クェント村もしくはその付近に情報収集……つまり、特定の人物を対象にしているのですか?」
「何? ……そこまで類推できるか。思った以上に論理思考ができるようだな」
「はい。そういう風に作られましたから」
ホープは、少しだけ挑発的な物言いに変えていく。
「特定の人物の知識が狙いなのですね? ……危険を伴わないやり方で知識を得るのでしょうね?」
「お前に話す必要はない」
謎ゴーレムの態度がやや硬化したようだ。
「いえ、私のご主人さまはクェント村と無関係というわけではありませんから」
「何? そうだったのか。我々の邪魔をする気か?」
「それはあなた方の目的とやり方次第です」
「ふん。邪魔をする気だとしても、お前1体で何ができる」
いよいよ雲行きが怪しくなってきたようだ……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20220325 修正
(誤)例の『ワンボックスカー』からゴーレム10体が転移してきました』
(正)例の『ワンボックスカー』からゴーレム20体が転移してきました』
(誤)「私は情報収集のためにこの一体の地質を調べています」
(正)「私は情報収集のためにこの一帯の地質を調べています」
(旧)ろくな素材がない中で助手ゴーレムが欲しいという仁の願いを受けて作られたものだったが
(新)助手ゴーレムを欲した仁が、ろくな素材がない中で精一杯の技術を投じて作ったものだったが




