86-06 『アヴァロン』と蓬莱島と
いろいろと意見が出たが、短期間で実現可能な案が採用されることになった。
それは……。
「俺が『バックドア』を騙す魔導具を作る。それを使って、危険な制御核を持ったゴーレムや自動人形を炙り出そう」
「そんなことが……」
「さすがマキナ殿だ」
かつて、ゴルバート(ギジェルモ)・マルキタスは『魔力模倣機』というものを作った。個人の魔力パターンを模倣する魔導具だ。
原理はわかっているので仁にも作ることができる。
今回は特定の魔力パターンの模倣でいいので、より簡単である。
「これを各国に貸与し、ゴーレムや自動人形のふるい分けをしてもらえばいいだろう」
「該当したものは停止させてもらうわけですね?」
「そうだ。そして制御核を『知識転写』でコピーし、交換する」
「そこが問題ではないでしょうか?」
マキナの説明にカチェアが待ったをかけた。
「『知識転写』でコピーしたら、オリジナルは即消去しないと、国家機密を知っている場合やプライベートな情報を持っている場合があるんじゃないでしょうか」
「なるほど、カチェア君の言うとおりだな」
トマックス・バートマンも、カチェアの意見はもっともだと認めた。
「どのくらいの割合でそういう制御核があると思う?」
「そうですね……確たる根拠はないんですが、7割から8割は機密を持っているのではないでしょうか」
ほとんど動作させていないものなら問題ないのでしょうけど、とカチェアは結んだ。
「いずれにせよ、『世界警備隊』案件ですな」
トマックス・バートマンは難しい顔で言った。
「これは国家機密云々よりも重大な案件だと、各国に通達する必要もありそうですわね」
秘書自動人形シモーヌがトマックス・バートマンに言った。
「そうだな。正式な通達として行おう」
「そうした政治的な配慮はお任せする」
マキナも、トマックス・バートマンの政治的手腕は高く評価している。最高管理官を務めているのは伊達ではないのだ。
「俺は技術的な面からの援助を行おう」
「マキナ殿にそう言ってもらえると心強い」
こうして、当面の対処法が決定された。
次は『謎の黒幕』の特定であるが、なかなかに難しい。
「この『バックドア』の通信機能に指向性はなく、したがってどちら方面に『謎の黒幕』がいるのか、調べられない」
残念だ、とマキナは言った。
「ですが、流通ルートを調査するという手が残っています」
カチェアが言った。
「そうだな。そちらにも、できる限り手を貸そう」
「マキナさん、ありがとうございます」
こうして、『アヴァロン』の方針は決まったのであった。
* * *
「ふう、これでひとまずはよし」
ヘッドセットを脱いだ仁は小さく深呼吸をした。
『デウス・エクス・マキナ3世』の操縦は専用の魔導頭脳『導師』がタイムラグなしに引き継ぐ。
『御主人様、手掛かりはもう1つあります』
「え?」
先程の『アヴァロン』での一幕を知っている老君は、『謎の黒幕』に至る道をもう1つ知っていた。
『10体のゴーレムが逃げた先にある『ワンボックスカー』です。奴らはうまく隠蔽してあると思っているようですが、バレバレです』
「なるほどな。……証拠隠滅されないように泳がせてあるのか」
『はい、御主人様』
せっかくの手掛かりなので、できるだけ有効に使いたいと仁は考えた。
「相手に気が付かれないよう、こっちの手の者を送り込めるか?」
『わかりません。相手の実力が未知数です』
「そうか……」
相手の居場所を特定できなかったことから、老君も慎重にならざるを得なかった。
『ですが、いくつかのアプローチは考えております』
「それは?」
『はい、御主人様。その『ワンボックスカー』の中に転移魔法陣があるのですが、それを描き写せば……』
「相手の本拠地へ行けるわけだな!」
『そういうことです』
「その場合、やり方をじっくり考えないとな」
『はい。おそらく一発勝負ですから』
手の者を送り込んだ時点で感づかれてしまい、『ワンボックスカー』を撤去される可能性が大である。
「付近に動物はいないのか?」
動物が紛れ込んだように見せかけたらいいのではないかと仁は思いついたのだ。
『ほとんどおりませんが、皆無というわけでもないので、いい案だと思います』
「その動物に小さな魔石か魔結晶を食べさせておけばマーカーになるんじゃないか?」
『はい御主人様、それもいいアイデアですね』
動物の場合、地面から直接食物を食べるので、砂や砂利を飲み込むことがある。
そうした際の砂が魔石であったなら、その魔力を追うことができるだろうという考えである。
「あとは……その『ワンボックスカー』は調べたんだろうな?」
『はい、御主人様。材質は青銅と鋼鉄で、動力は一般的なゴーレムエンジンでした。製造国を特定するのは困難です』
「実物を直接調べる必要があるか……」
『はい、御主人様』
「あとは……その『転移魔法陣』を使って、ランド隊20体を送り込んだらどうなる?」
『その作戦も考えてみました。ですがそれは危険も伴います』
「それは?」
『転移先が不明だからです。相手の勢力も不明で、もしもランドが圧倒された場合、こちらの情報が相手に漏れます』
「それはそうだな」
自分が作り上げたものが最強で無敵であるとは仁自身思っていない。
「やはりまずは相手がどこにいるのか、そこからか」
『はい、御主人様』
「よし、その魔法陣を描き写す……のはもうやっているよな?」
『はい』
老君のことだからそうだろうと思っていた仁である。
「ならば、いつでも使えるわけだ」
『はい』
「そうしたら小動物で試してみたいものだが……」
『問題としましては、小動物ではワンボックスカーのドアを開けられないということですね』
「ああ、そうか」
ある程度大型の動物でないと偶然ドアを開けて中に入った、ということはありえないわけである。
「悩ましいな」
『最後の手段として、連中がもう一度やって来るのを待つという手もあります』
「それもあるな」
さてどうするかと、仁は考えるのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日3月24日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20220324 修正
(誤)「そうですね……確たる根拠はないんですが、7割から8割は機密を保っているのはないでしょうか」
(正)「そうですね……確たる根拠はないんですが、7割から8割は機密を持っているのではないでしょうか」
(誤)相手に居場所を特定できなかったことから、老君も慎重にならざるを得なかった。
(正)相手の居場所を特定できなかったことから、老君も慎重にならざるを得なかった。
20260220 修正
(誤)「だが、流通ルートを調査するという手が残っています」
(正)「ですが、流通ルートを調査するという手が残っています」




