86-05 『アヴァロン』での検討会
「ふうむ……なるほど……ここが……そうか……」
『分身人形』であるデウス・エクス・マキナ3世のボディを通じて、仁は問題の『制御核』を解析していった。
「そうか、そういうことか……ふんふん……そして……」
操縦装置であるヘッドセットから流れ込んでくる情報は、あたかも自分の手に持った制御核を解析しているかのように鮮明であった。
仁の知りたい情報が、ゆっくりと明らかになっていく。
特性の広い全属性でなく空間系である光属性の魔結晶を使ったのは、『通信』のため。
もちろん『謎の黒幕』に情報を送るため、そして命令を受信するためである。
通信の魔力波も把握できた。
そして、どうして『知識転写』で正常なコピーができないか。
……ジャミング(妨害)が掛かっている。
ジャミングの方法。『知識転写』の魔力波に共鳴し、反射波を発生することで、情報にノイズを被せ、正確性を阻害する。
つまり、『バックドア』部分の情報をコピーするには、『知識転写』の魔力波形を変更すればよいということになる。
「よし」
およそ1分で、仁は解析を終えた。
そして、マキナとして『アヴァロン』にいる面々に説明を行ったのだった。
* * *
「……ということがわかりました」
「おお!」
「さすがマキナ殿だ!」
トマックス・バートマンもアーノルトも感心することしきり。
だがエイラは、
「……マキナ殿、『知識転写』の魔力波に共鳴して、ということは、この『バックドア』を仕掛けた相手は『知識転写』について詳しいということなのかな?」
という疑問を口にする。
マキナ、そしてそれを操縦する仁はエイラの読みに感心し、その言葉を肯定した。
「そういうことになる。つまり、かなり……いや、一線級の技術と知識を持っているということになるな」
「そうだよな? 強敵だ……」
「この魔結晶……制御核の出どころは追跡したんだろう?」
「しました」
カチェアが説明する。
「フレクの町の発送業者から送られてきたのは間違いありません。そしてその業者に制御核を託したのはトモシデ・ヨダさんたちでした」
そのトモシデ・ヨダたちは今『アヴァロン』にいる。
なのでこの制御核を見せたところ、自分たちの作ったものだと思う、と認めていた。
ただし、『バックドア』を仕込んだ覚えはまったくない、とも言っている。
「うーん……トモシデ殿に会えるかな?」
「ここへ呼びましょうか?」
マキナの言葉に、トマックス・バートマンが気を利かせて秘書のマノンに命じ、トモシデを呼びに行かせた。
* * *
3分後、トモシデ・ヨダがマノンと共にやって来る。
「お呼びでしょうか、閣下」
「トモシデ殿、早速ではあるが、マキナ殿から話を聞いてほしい」
「わかりましたぞ」
そしてトモシデはマキナに向き直り、直接説明を聞いたのである。
「……なるほど……その制御核に刻まれている『バックドア』を誰がいつ書き込んだのかを知りたいわけですな」
「そうです。幸い、ほんの僅かですが魔力の痕跡が残っています。比較用にトモシデ殿の魔力パターンを教えていただきたい」
「喜んで協力します」
そういうわけで、トモシデ・ヨダはマキナからの『精査』を素直に受け入れたのだった。
「……ありがとう。……こうしてみると、この制御核は、トモシデ殿が作ったものに間違いないようだ」
「ええ。糊口をしのぐため、何度かそういうことを行いましたな」
だが、断じてそんな『バックドア』を仕込んだ覚えはないとトモシデ・ヨダは強弁した。
「わかっている。この『バックドア』を書き込んだ者の魔力パターンはトモシデ殿とは違う」
「マキナ殿にはそんなことまでわかるのですか」
「わかる。……これはれっきとした技術だ。『書き込み』には魔力を使うが、その時の『特性』が魔結晶に残っている」
「ははあ……そうなのですね」
とはいえこれは余談なのでマキナはそこで話を元に戻す。
「つまり、この制御核は、フレクの町から『アヴァロン』に到着するまでの間に『バックドア』を仕込まれたということになる」
「マキナ殿の仰るとおりだろうな」
トマックス・バートマンもその意見に賛成だった。というよりも異を唱える者はいない。
「そのルートを調べてもらいたいな」
「手配しましょう」
トマックス・バートマンはマノンに指示を出し、マノンは頷いて同僚の秘書自動人形シモーヌに内蔵魔素通信機で連絡を行った。
マノン自身は書記も兼ねているので、このやり方が効率的なのである。
「さて、そうなると、まず『無効化する方法』を検討したい」
マキナが出席者全員を見回して言った。
「もちろん、『外部から』働きかけて、ということだ。誰か意見やアイデアはないか?」
「…………」
「では、私から」
意見を言う者がいなかったので、トモシデ・ヨダが挙手をしてから口を開いた。
「その『バックドア』の通信に使われる魔力波のみを妨害することができればいいのでは?」
「うん、それはたしかに1つの案だな」
仁やマキナなら可能だが、今の『アヴァロン』の技術ではちょっと難しいが……。
「ええと、『知識転写』というコピー方法では複製できないんですよね?」
今度はカチェアである、
「でしたら、『知識転写』で制御核を複製して、その複製した方を使えばいいんじゃないでしょうか」
「お、カチェア、いいこと言うな。マキナ殿、あたしもそのやり方に賛成だ」
「だが、どの自動人形もしくはゴーレムに使われているかわからないとな……」
「グローマの言うことにも一理あるな。……なら、炙り出してしまえばいいんじゃないか?」
エイラが意見を述べた。
「その『バックドア』に作用する魔力波を作り出せるなら、『謎の黒幕』に先んじて働きかけてしまえばいいんじゃないか?」
「ええと、つまり、エイラが言うのは、そうやって『バックドア』付きの制御核搭載のゴーレムや自動人形を見つけ出して対策を取ればいい、と言うんだな?」
「グローマの言うとおりだぞ」
「なるほど、それはいいかもしれないな」
こうして、対策案が検討されていったのである……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20220323 修正
(誤)『グローマの言うことにも一理あるな。
(正)「グローマの言うことにも一理あるな。




