84-36 作戦、その第1段階
仁は作戦の概要を説明していく。
「まずは『支配の輪』を手に入れる」
「でも、それは簡単じゃないと自分で言ったばかりじゃないか」
「言った。でも『できない』わけじゃない」
要は『研究のため』に拉致したと気取られなければいいのだ。
「まあ、そういう手があると思ってくれ。説明だけ済ませたいから」
「わ、わかった」
「『支配の輪』の解析をして、それに応じて解放作戦だ」
単に頭から外せばいいなら、マキナが配下を投入して解放。
いきなり外すと後遺症が出るなら、まずは全員を麻痺させ、大本を制圧してから対処。
あるいは、操っている大元を占拠してこちらから指示を出し、町から遠ざけてから外す必要があるかもしれない。
「ということになる」
「……」
「ジンが言うんだから、できるんだろうなあ」
「マキナとの共同作戦でな」
実際はどちらも仁の戦力ではあるが、対外的な説得力というものは大事である。
説明もかなり大雑把だが、そこは実際に参加するわけではないので、エイラもベッカーも特に文句はない。
しかも、特等席で経過を見せてくれるというのだから、なおさらである。
* * *
「まずは1人、確保する」
候補は町の外で畑仕事をしている農夫だ。
ちょうど仕事を終えて町に戻るところである。
奇しくも彼は、グローマを連れ去った男であった。
まず、野盗に偽装した『第5列』3体で畑から連れ出し、林の中へ連れ込む。これで視覚的に隠すことができる。
次に睡眠魔法『眠れ』で眠らせる。
操られていても肉体が眠ってしまえばどうしようもないわけだ。
「なるほどなあ」
「手際がいいですね」
その様子は『第5列』から送られてくる映像で逐一見ることができた。
「さて、ここからだ」
サンプル……農夫の頭に嵌められた『支配の輪』。
これが、操縦者への『返信』を行っているのかいないのか。
「……どうやら、フィードバックはないようだ」
『第5列』からの報告で、『支配の輪』は操縦者との相互通信はないものと仁は判断した。
「これで、かなりやりやすくなるな」
「どうするんだい?」
「直接解析するのさ」
エイラからの質問に答えた仁は、捕まえた農夫を眠らせたまま『ハリケーン』に連れてくるよう指示を出す。
そして3分後、『ハリケーン』の船室には、眠ったまま縛られた農夫がいた。
その頭には銀色の『支配の輪』が嵌っている。
そして、万が一にも暴れ出さないよう、礼子がついている。
「よし、調べてみよう。……『分析』……うーん……なるほど」
「い、一度の『分析』でわかるんですか?」
「ジンだしなあ」
ベルリッヒ・ベッカーは驚いたが、エイラは慣れたもの。
「この『支配の輪』だが、嵌めている間は永続的に『催眠』の魔法を掛けるようなものらしい」
「なるほど、それで?」
「外せば『催眠』の呪縛から解き放たれるはずだ」
「危険はないのですか?」
「構造と、使われている魔法から見て大丈夫だろう」
この調査結果は蓬莱島の老君にも送られており、そちらでも判断されている。
そして老君が何も言ってこないということは、そういうことだ。
「それじゃあ外してみよう」
「お父さま、わたくしが」
『支配の輪』を仁が外そうとしたところ、礼子が代わりに行ってくれた。
すぽっと、比較的簡単に外すことができた。
「これでよし。『催眠』の魔法と同じなら、目覚めたら操られていた間のことは覚えているはずだ」
「起こしましょう。『起きよ』」
礼子が覚醒魔法を使うと、農夫の目が開いた。
「……う……あれ……?」
「気が付いたか」
「あれ? 俺、どうして縛られて……ああ、野盗に襲われて……」
「野盗からは助けた。今解いてやる」
礼子に見張らせながら農夫の縄をほどいてやると、
「助けてくれてありがとうごぜえます」
と礼を言われてしまった。
ある意味マッチポンプなので少々居心地が悪いが、これも作戦の一環だ。
「それで、こんなものが頭に嵌っていたが、何か覚えがあるか?」
仁は外した『支配の輪』を農夫に見せてみた。
「これは……」
「覚えがあるか?」
「へえ。……ある日、強引にこれを頭に嵌められた覚えが」
「どこで、誰に?」
「町の中心の建物で、ゴーレムとかいう人形みたいな奴に」
「その後のことは覚えているか?」
「へえ。なんか、頭の中で声がして、その声に逆らえなくて……そうだ、旅の人をさらったりもしましたねえ」
「旅の人!?」
その単語にエイラが飛びついた。
「どんな格好をしていた?」
「ええと、ウラウの町から来たって言ってましたぜ。歳は30前後かなあ。服は……」
説明を聞いたエイラは確信する。
「グローマだ」
「らしいな。エイラが言うんだ、間違いないだろう」
「ええと、お知り合いで?」
「ああ、同僚だ」
「こりゃあ、すまんことをしましたです」
謝る農夫だが、エイラはそれを許した。
「いや、操られていたのなら仕方がない。もう同じことはしないだろう?」
「へえ」
「ならいいさ」
こうして、『支配の輪』についての情報がかなり集まった。
農夫はそのまま保護するが、部屋を分けて作戦の様子はわからないようにしておくことに。
「ここでしばらく過ごしてくれ」
「へえ、わかりました」
町が『頭の輪』を付けた何ものかに支配されていると説明し、農夫も納得した。
それで、おとなしく『ハリケーン』の中にいてくれるようだ。
もちろん、監視兼世話係として、五色ゴーレムメイドの『ルビー22』を付けた。
「さあ、これでよし」
作戦は次の段階に入る。
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本日1月30日(日)は14:00に
『蓬莱島の工作箱』を更新します。
https://ncode.syosetu.com/n0493fy/
お楽しみいただけましたら幸いです。
お知らせ:1月30日(日)は昼過ぎまで不在となります。
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20220130 修正
(誤)礼子に見晴らせながら農夫の縄をほどいてやると、
(正)礼子に見張らせながら農夫の縄をほどいてやると、




