84-37 作戦、その第2段階
作戦第2段階。
それは人質の救出である。
『支配の輪』で操られた人たちも人質といえなくもないが、まずは明らかに監禁されている人々を救うことになる。
具体的には……。
「グローマとカチェアの他に3人くらい見かけたようだ」
仁は、まずはそうした『人質』を救出する、とエイラとベッカーに説明した。
「どうやってだい、ジン?」
「うん。カチェアとグローマが監禁されている場所は大体わかっている。そこへマキナの配下のゴーレムが突入し、救出する。そばに他の人質もいるはずだから、そちらも同時に救出する」
「なるほど」
あとは現地での判断に任せる、と仁は説明した。
「とにかくこれは『世界警備隊』絡みの作戦だからな」
「わかってるよ」
『アヴァロン』に寄ってトマックス・バートマンからの正式な依頼を取り付けてあるからこそだ。
私的な行動ではないというのは対外的に大いに意味がある。
いくら『3代目魔法工学師』であっても、勝手に軍に匹敵する配下を町中で動かすわけにはいかないからだ。
* * *
5月2日の夜明け前……普通の人間なら眠っている時刻……作戦は第2段階に入った。
まず、デウス・エクス・マキナの『アリストテレス』から、配下のゴーレム部隊が降下する。
実際にはランド部隊で、総数100体。
そして彼らとは別に、10体のランド隊が『転送機』で『魔法障壁』の手前まで送り込まれた。
もちろんこちらはエイラたちには内緒である。
100体のゴーレムは街中に散っていく。しかもほとんど音を立てずに。
「す、凄い……これが、デウス・エクス・マキナ殿の戦力……」
「改めて見ても凄いな……」
公国にいた時や『アヴァロン』などで戦闘に巻き込まれたことのあるエイラも、この威容には目を見張っている。
「だが、おそらく魔導頭脳には気付かれているだろうからな」
「それはそうですね。魔導頭脳は眠りませんから」
「半分は陽動なんだよな?」
「そう。エイラの言うとおり、陽動をしておいて、真の目的を隠しているんだ」
真の目的とは、もちろん人質の救出である。
そちらも同型のランド隊なので、傍目には見分けがつかないのだ。
* * *
『魔法障壁』の前に送り込まれたのは10体のランド隊。番号は201から210である。
〈この奥に人質がいるわけだな〉
〈行こう〉
内蔵魔素通信機での会話はコンマ数秒で行える。
10体のランド隊は老君から聞いた監禁場所を目指した。
魔導頭脳『ユーベル』にとっても、これは奇襲であったようで、まったく邪魔されずに10体は監禁場所に到着。
〈カチェア殿とグローマ殿は209と210に任せる〉
〈了解〉
〈202から208は他の人たちを確保してくれ〉
〈了解〉
〈了解〉
リーダーのランド201の指示で、7体は奥へ向かった。
「カチェアさん、グローマさん、起きてください」
「うー……誰だ?」
「あ……もしや、ジンさんかマキナさんのゴーレム?」
「そうです、カチェアさん。ジン様とマキナ様の指示で、お助けに参りました」
「ありがとう!」
「さあ、早くこちらへ」
「は、はい」
カチェアとグローマはそれぞれランド209と210に背負われた。これが一番速い。
そしてそのまま脱出していく。
『魔法障壁』を抜けたあとは、降下したランド隊も護衛に付く。
電撃作戦は大成功、彼らは無事にフレクの町の外まで脱出できたのだった。
そこへ仁の『ハリケーン』が降下してくる。
「おーい、カチェア! グローマ!」
「ああ、助かったんですね……」
「助かったんだな……」
ハッチからエイラが叫び、手を振っているのを見た2人は、ようやく助かったという実感が湧いたようで、へなへなとその場にくずおれてしまった。
「しっかりしてください」
それをランド隊が支え、『ハリケーン』へと運んだ。
「カチェア、グローマ、2人とも無事でよかった」
「ジンさん……」
「ジン殿……」
『ハリケーン』では仁も2人を出迎えた。
「ありがとう、ございます……」
「助けてくれて、ありがとう」
「大変だったな。まずはゆっくり休んでくれ」
ハッチが閉じ、『ハリケーン』は空へと舞い上がった。
カチェアとグローマは船室へと招き入れられ……。
「カチェア! 無事でよかった!!」
ベルリッヒ・ベッカーがカチェアを強く抱きしめた。
「あ、ベ、ベル君……」
ベルリッヒ・ベッカーがこの『ハリケーン』に乗っているとは思わなかったカチェアは、少し頬を染めてベルリッヒ・ベッカーの抱擁に身を任せた。
そしてグローマもまた、エイラに抱きつかれていた。
「無事だったんだな、グローマ!」
「ああ、心配かけたな」
「まったくだよ。気が気じゃなかったぞ」
「……ええと、まだ終わったわけじゃないんだが」
「す、すまん」
「……ごめん」
気まずそうな仁の言葉に、4人はぱっと身を離した。
「ええと、他にも捕まった人がいるようだから、そちらも救出しているところなんだ。それから、現状だが……」
仁は現状とこれまでの経緯を説明した。
「あ、やっぱり『世界警備隊』がジンさんとマキナさんに依頼してくれたんですね」
「そうそう」
「で、急いで駆けつけてきたんだ」
「本当に助かりました」
「……あの手紙、ちゃんと『アヴァロン』に届いたんだな」
「ああ。グローマがちゃんと手を打っていてくれたから、こっちもすぐに動くことができたよ」
「本当に、助かったよ。ありがとう」
カチェアとグローマは、改めて仁に礼を述べたのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20220131 修正
(誤)そちらも同型のランド体なので、傍目には見分けがつかないのだ。
(正)そちらも同型のランド隊なので、傍目には見分けがつかないのだ。
(誤)魔導頭脳『ルーベル』にとっても、これは奇襲であったようで
(正)魔導頭脳『ユーベル』にとっても、これは奇襲であったようで




