84-25 失踪
4月28日、エイラたちは情報集めに取り掛かった。
ウラウの町の中ということで危険はないだろうと判断し、3人で手分けして行う。
「それじゃあ、昼食はホテル……『オテル エトアール』の食堂で食べることにして、それまで別行動だ」
「いいぞ」
「はい」
3人は思い思い……ではなく、前夜打ち合わせたとおりの方向へと別れていった。
* * *
エイラはゴーレムや魔導具系を扱う店巡り。
グローマは魔導系工房巡り。
カチェアは先日購入した制御核を販売した代理店を訪れ、そこから糸を手繰っていくことになる。
「ええと、伝票にある番地は……ここですね」
カチェアは購入伝票に記載された番地のメモを見、街区表示と照らし合わせた。
「大通りを北へ真っ直ぐ行って、中央交差点を右で……」
街区表示どおりに歩き、目的の代理店を発見。
もう店は開いていたので、入ってみることに。
「ごめんください」
「はい、いらっしゃいませ」
中年の店員が対応した。
店内にはもう1人客がいて、そちらは若い店員が対応している。
「私は『アヴァロン』の研究員です。先日お送りいただいた制御核の品質が非常によかったので、製作者さんを知りたくてやって来たのですが。……あ、直接買い入れる、ということではなく、純粋に技術的な興味からです」
カチェアは一気に目的を説明した。
ここで誤解を与えてしまうと話がこじれてしまうからだ。特に金銭が絡む話は明確にしておかねばならない。
「ああ、研究職の方ですか。でしたら、ここではなんですから、奥へどうぞ」
「あ、はい」
カチェアは店員に案内され、店奥の商談室へと向かった……。
* * *
一方、店巡りをしているエイラはというと。
「出てけ!」
「……何だい、ちょっと批判しただけだろう?」
「営業妨害だ!」
「細かいやつめ」
店員と揉めて追い出されること3度。
つい、陳列してある商品に対して批判めいたことを口にしてしまい、店員を怒らせてしまうのである。
「ちぇ、たいして情報が得られないな……」
ぼやきながら、次の店へ向かうエイラであった。
* * *
また、グローマは。
「……ありがとうございました」
魔導具やゴーレムを作っている工房を巡っていたのだが、どこも対応が今ひとつよろしくなかった。
ことごとくが『木で鼻をくくったよう』なのだ。塩対応、と言いかえることもできる。
具体的には、『重要な工程は一切見せてくれない』『ろくに話をしてくれない』状況だ。
「しかし……」
回った4件の工房、その全てが、『自分はアヴァロンの研究員である』と名乗った時から態度が変わったような気がする、とグローマは思った。
もちろん、名乗る前から対応はそっけなかったのだが、名乗ったあとはそれに輪をかけて対応が悪くなったのだ。
「何か理由があるのだろうか……」
考えたが、『アヴァロン』を警戒する理由がわからない。
折から昼近くなったので、一旦合流し、食事をしてから午後の方針を決めようと考えたグローマであった。
* * *
「遅いな……」
「うん」
正午をかなり回ってもカチェアが戻ってこないのだ。
ちなみに午前11時50分にグローマ、12時3分にエイラが、取り決めた食堂にやって来ていた。
「あのカチェアが約束の時間に遅れるなんてな……」
「うん。いつもなら20分前くらいには来ているもんな」
食堂にいていつまでも注文もせず居座っているわけにもいかず、2人は軽食を頼んだ。
軽食なら、カチェアが来てからも付き合いでもう少し何か食べられるからだ。
だが、軽食を食べ終えてもカチェアは戻ってこなかった。
「絶対におかしい」
「何かあったとしか思えないな」
カチェアなら、仮に何かいい情報があったとしても、約束した時間をここまで蔑ろにすることはないだろう、と2人は考えた。
それで、『オテル エトアール』のフロントに『カチェアへ。お前を捜しに行っているから部屋で待っていてくれ。5時には帰る』と伝言メモを頼み、2人はカチェアを捜しに出た。
* * *
「見つからないな……」
「うん」
エイラとグローマは用心のため2人一緒にカチェアを捜している。
カチェアが立ち寄ったと思われる商店を1つ1つ回っているのだが、手がかりは何もなし、であった。
「うーん……」
「やっぱり戻ってきていないか」
午後4時過ぎ、『オテル エトアール』に戻ってきた2人。
少しだけ期待していたが、やはりカチェアは戻っていなかったのである。
* * *
部屋で相談をする2人。
「こうなったら『アヴァロン』へ失踪届と捜索願を出さなきゃな」
「そうなるのか……すぐにか?」
「いや、まだ失踪と決まったわけじゃないから……明日の夕方まで捜して、見つからなかったら……だな。……そうなると、カチェアの捜索は俺たちの手を離れる」
「なんか悔しいな」
「それは同感だ。彼女は俺たちの仲間だものな」
「グローマの言うとおりだ。カチェアはあたしたちの仲間だ。自分たちで見つけたいよなあ」
「そのためにも、情報をまとめてみよう」
「うん……ああ、こういうのってカチェアが得意なんだがなあ」
「そのカチェアがいなくなって、見つけるためだ」
「わかってるよ……」
というわけで、情報整理を始める2人。
「まずは、あの塩対応だよなあ」
「同感だ。……待てよ?」
「どうした、グローマ?」
「対応が悪いのは魔導具に関連した連中だけだよな?」
例えば宿のフロントや一般雑貨を扱うような商人、普通の村人……などは特に対応が悪いとは言えなかったのだ。
「言われてみれば。……うん、確かにそうだな」
エイラもそれには同意だった。
「これがどういうことかの考察は後回しにして、情報をまとめていこう」
「まあ、いいが」
「俺の方は、なんとなくだが、魔結晶の流通ルートが掴めたぞ」
「おお、グローマ、すごいじゃないか。……で?」
「来る時に通ったフレクの町らしい」
「え?」
それを聞き、顔をしかめるエイラ。
「どうかしたか?」
「いや、あたしの方も同じ結論になったんだ」
「つまり、フレクの町が怪しいということか?」
「うん」
「と、なると……」
「慎重にいかないとなあ」
その夜、エイラとグローマは遅くまで打ち合わせをしていたのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20220119 修正
(誤)「これがどういうことはの考察は後回しにして、情報をまとめていこう」
(正)「これがどういうことかの考察は後回しにして、情報をまとめていこう」
(誤)……明日の夕方まで捜して、見つからなかったっら……だな。
(正)……明日の夕方まで捜して、見つからなかったら……だな。




