84-26 29日
4月29日は『森羅』のロロナの誕生日である。
蓬莱島では『仁ファミリー』が集まってお祝いをしている。
「ロロナさん、お誕生日おめでとうございます。乾杯」
仁が代表して乾杯の音頭を取る。
「乾杯!」
「乾杯!」
出席者全員がそれに和した。
「まあまあ、ありがとうございます、皆さん」
ロロナも嬉しそうである。
『森羅』の氏族領では今夜お祝いが行われるというので、蓬莱島では昼間に行っているのだ。
そういうわけなので、ロロナやシオン、ロードトス、リュドミラらが飲んでいるのはノンアルコールの炭酸飲料である。
「母さま、おめでとうございます」
もちろんシオンも出席しており、この後夜にも氏族領でお祝いするわけだ。
「ありがとうね、シオン。……私にとっては、こうして皆さんのお仲間になれたことが一番のお祝いですわね」
そう言ってロロナは笑ったのだった。
ところで、今回はロロナがファミリー入りして初めての誕生日なので、皆プレゼントを用意していた。
「まあまあまあまあ、皆さん、ありがとうございます」
全員からもらったプレゼントは山のようになった。
仁からはマッサージチェア、エルザは快眠マットレス。
ラインハルトは最高級のワインセット(赤・白・ロゼ・スパークリング)。
他のメンバーも、服や靴やアクセサリー類、あるいは花束と、様々な贈り物が。
和気あいあいとした誕生会なのだが、残念ながら主賓であるロロナが、そろそろ氏族領に戻らなければならない。
シオンやロードトス、リュドミラも同様だ。
マリッカは普段工房に籠もっていて外を出歩かないのでそれほど厳しくはないが、今回は一緒に戻ることになった。
「それでは皆さん、今日はありがとうございました」
「ジン、みんな、またね」
「またお会いしましょう」
「た、楽しかったです」
「ジンしゃま、今日はこれで失礼します」
そして5人は転移していった。
また、アーノルト、チェル、フィリシャス、デルフィナも『アヴァロン』に帰らなくてはならないのだが……。
「ジン、ちょっと話があるんだ」
と、アーノルトが仁に話し掛けた。
「どうした?」
「ちょっと耳に入れておこうと思ってね」
「何かあったのか?」
「いや、そうじゃないけど」
「じゃあ、どういうことだ?」
ここでアーノルトは仁に、エイラ、カチェア、グローマらが『制御核』の製造者を探しにクライン王国経由でセルロア王国へ向かったことを説明した。
理由は、その『制御核』の品質が驚異的だったから、ということを説明した。
「制御核……か」
「何か気になることがあるのかい?」
「うん。ショウロ皇国のゴーレムにも、ボディとミスマッチなほど高レベルな制御核が付いていたんでちょっと気になってる」
「なるほどな。その出どころはわかっているのかい?」
「ああ。セルロア王国東部のウラウという町だ。もっともそこは取り扱い店で、製作者は隣町にいるらしい」
仁がなぜここまで知っているかというと、ゴーレムを修理した報告書を出した翌日、もう一度宮城に行き、総務相に尋ね、調べてもらったからである。
おそらくはその昔に『魔法連盟』に害されることをおそれて移り住んだ『仁ファミリー』の子孫の子孫であろうと思ったので、一応わかるなら居場所だけは知っておきたかったのである。
「なるほど、エイラとグローマはその制御核の製作者に話を聞こうというわけか。……カチェアは?」
「あの2人だけだと心もとないというので付いていったんだ」
「まあ、わからなくもないな」
そこで仁は、アーノルトにその製作者たちについての推測を説明しておいた。
「なるほど、アドリアナ式を受け継ぐ一派、か」
「あくまでも可能性だがな」
「いや、参考になったよ」
「エイラたちが帰ってきたら、話を聞かせてもらいたいもんだ」
「そうだね、連絡するよ」
「頼んだ」
そんなやり取りをして、アーノルトは『アヴァロン』へと帰っていったのだった。
* * *
同日、セルロア王国東部。
エイラとグローマはウラウの町を出て北上し、フレクの町に来ていた。
「今日は人が出ているな」
「確かに」
先日、馬車で通りかかった時は寂れた町に見えたのに、今はそこそこ活気があるように見える。
「あの時は、たまたま何かの集まりがあって街道から見える場所に人がいなかったのかな?」
「可能性はあるけど……わからないな」
「さて、どうしようか」
堂々と町へ行くべきか、こっそり行くべきか、悩むグローマ。
だがエイラは、
「グローマとあたしに、こっそり潜入するなんて真似ができると思うかい?」
と言って堂々と向かおうとする。
グローマは慌ててそれを止めた。
「まあ待てって。……それならそれで、保険は掛けておくべきだ」
「保険って?」
「つまり、どちらかがここに残るということだよ」
「それは、捕まるかもしれないという前提でか?」
「そうだ」
グローマは、ここで2人が捕まったら、もはや『アヴァロン』に異常を知らせる術がない、とエイラに説明した。
「一応宿に書き置きは残してきたぞ?」
「だが、誰かがあれを見るのは、我々が未帰還なことを確認してからだろう。つまり明日以降だ。どちらかが捕まらずに戻れれば、今日中に報告できる……かもしれない」
「うーん、そういうことか。それじゃあ、どっちが残るんだ?」
「それはエイラだろう」
「なんでだよ?」
「大差ないとはいえ、僕の方が少しだけこういうことに向いているような気がするからな」
「……む、それは……そうかもしれないが」
エイラは直情径行というか馬鹿正直というか、とにかく真っ直ぐで、策を弄するのが嫌い……というより苦手なのである。
研究者としては問題ないが、こうした潜入の場合には不向きな性格である。
「だから僕が行ってくる。今は……午前11時くらいか。午後3時になっても戻らなかったら、何かあったと判断して宿に戻り、『アヴァロン』に報告してくれ」
「……わかった。でもグローマ、無理はするなよ?」
「ああ。行ってくるよ」
そうして、エイラは適当な岩陰の凹みで待機し、グローマは単身フレクの町へと向かったのである。
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本日1月20日(木)は14:00に
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