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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
81 新技術開発篇
3086/4346

81-27 2人で……

 3月8日。

 朝食後、仁はエルザ、ゴウ、ルビーナらと話し合っていた。

 メルツェはイェニーとアマンダ、それに専用自動人形(オートマタ)のララと連れだち、3人と1体で一緒に買い物に出掛けている。


「まずはルビーナたちの『ナイルⅦ』を見せてもらって、それから俺の『スイフト』を見せようか」

「うん、それでいいわ」

「で、飛ばすのは蓬莱島でいいな」


 このメンバーでなら全く問題はない。

 蓬莱島は既に昼過ぎ。快晴だと老君から連絡が入っている。

 誰も異議を唱えなかったのでそのまま転移門(ワープゲート)を使って蓬莱島へ。

 『ナイルⅦ』と操縦装置は礼子が運んでくれた。


「やっぱりこっちは暖かいわね」


 今日のロイザートは少し冷え込んだので、亜熱帯の蓬莱島にくるとほっとする、とルビーナ。

 ゴウはもっと寒い『ノルド連邦』にいたので寒さには強い。暑がりだが。


「さて、あれが『スイフト』だ」

「わあ!」

「『スワロー』とよく似てますね」

「うん。どうしてもエンジンパワーが足りないので魔法の発動タイミングを倍に上げてある」

「なるほど……。合計したパワーが同じくらいなら、同じ機体で同じ性能が出せるわけですからね」

「そういうことになるな」


「ねえジン様、飛ばして見せて!」

「え? 先に『ナイルⅦ』じゃないのか?」

「う……そう、だけど」

「決めたことは守ろうな?」

「う……はい」


 甘やかせてばかりもいられないと、仁は少し厳しい態度をとった。

 ルビーナもそこはきちんと聞き分けてくれたのである。


*   *   *


「操縦装置は同じにしたわ」

「わかりました。大丈夫です」


 『ナイルⅦ』の操縦装置は『ナイルⅥ』と共通、つまりコクピット型である。専用の認証キーを差し込むことでⅥとⅦを切り替えることができるようになっていた。

 今回もテスト飛行は身体のサイズの関係で礼子が行うことになる。


「では、スタートします」


 気負うことなく、礼子は『ナイルⅦ』を発進させた。大きさも形状も『ナイルⅥ』とほぼ同じ機体だ。

 それに関しては仁の『スワロー』と『スイフト』も似たりよったりである。


「うーん、やっぱり滑走距離が長いな?」

「うん。ジン様が言うとおり、パワーが落ちたからね」


 それでも1メートル級の模型が20メートルの滑走で離陸するというのは十分に優秀である。


 そして、速度や運動性も、仁から見て十分合格レベルだった。


「短時間でよくやったな、2人とも」


 仁が褒めるとルビーナは照れた。


「ええ、ええと、ゴウが半分以上やってくれたのよ。Ⅵと同じにしてもいいところとしないほうがいいところ、とかいって」

「そうか。ゴウ、うまくやったな」

「え、あ、ありがとうございます」


 ゴウもまた照れる。


 そのうちに礼子の操縦で『ナイルⅦ』は着陸した。


「よし、チェックをして異常がなかったら次へ行こう」

「はーい!」


 元気よく返事をしたルビーナは機体に駆け寄り、チェックを開始。

 少しだけ遅れてゴウも機体のチェックを始めた。


「礼子、操縦してみてどうだった?」

「はい、お父さま。改良を加えたのか、『ナイルⅥ』より格段に操縦しやすいですね。これはエンジンの違いだけではないと思います」


 同じような型に見えて、いろいろ工夫されているはずです、と礼子は言った。


「そうか。あの2人が組んでモノづくりをするというのは意外といいのかもな」

「ん、そう思う」

「エルザもそう思うか」

「うん」


 研究所で昼食の用意をしてくれていたエルザだったが、仕込みが終わったらしく、仁のそばにやってきていた。


「2人いれば、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』並み……とは言わないけど、1+1以上のモノを作る、と思う」

「なるほどな」


 自由な発想を得意とするルビーナと、堅実で慎重なゴウ。

 うまくお互いの長所を活かしあえば、大きな業績を挙げられるかもしれない、と仁は思った。


 そんな思いはルビーナの声で破られる。


「ジン様ー、機体に異常はありませんでした!」

「……お、そうか。それじゃあ、俺にも見せてくれ」

「はい!」


 2人がチェックを終えた『ナイルⅦ』を、今度は仁がチェックを行っていく。


「うん……? ……ルビーナ、ゴウ、ちょっといいか?」

「何?」

「何ですか?」

「ここを見てみろ」


 仁は『ナイルⅦ』のノーズコーン先端部を指差した。


「あっ……少し歪んでる」

「おそらく何かがぶつかったんだろうな」


 それが小さな虫でも、超高速でぶつかれば相当な衝撃となる。


「ほんの僅かだが、ここの強度が足りなかったようだな」

「ですね……うう、反省しなきゃ」


 がっくりと肩を落とすゴウ。

 ルビーナも悔しそうだ。


「気が付かなかったわ……! 主翼とエンジン周りばかりに気を取られていて……」

「そういうものさ。まだ2人とも経験不足だ。これからこれから」


 ただし、模型といえども強度は確認すべきだ、と付け加える。


「とくにこいつはエンジンの発熱がないんだから、焼鈍やきなまし材じゃなく加工硬化させた軽銀だって使えるからな」

「あ、そうか……」


 熱による強度低下の懸念があった『ナイルⅥ』と違い、こちらはそうではないわけで、同じように作るにしても材質は見直すことができたのである。

 その辺が2人とも若いがゆえの経験不足といえた。


「失敗を恐れるな。失敗からはたくさんのことを学べるんだから」

「はい、ジン様」

「はい!」

「これからも頑張れ」


 そして、いよいよ仁の機体をお披露目することになる。


*   *   *


「これが『スイフト』だ」

「わあ……やっぱり『スワロー』に似ているわね」

「でもエンジンまわりが少し変わってますね」


 仁は、まずは2人に自由に見させることにした。

 ゴウもルビーナも、なかなかいい着眼点を持って観察している。


「あ、熱対策がほとんどされていない」

「基本的に発熱しないエンジンだからよね」

「ノーズコーンは丈夫にできてるなあ」

「表面がものすごく滑らかね。これも抵抗を減らすためね」

「精度がすごくいいなあ」

「軽量化すべきところと強度を必要とするところ、はっきりわかるわね」


 自分で作り、それを飛ばし、また他人の作ったモノを見て……それら全てを経験として蓄積していってくれるといいな、と願う仁であった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210925 修正

(旧)

「『スワロー』とよく似てますね。こっちはエンジンが2基ですが」

「うん。どうしてもエンジンパワーが足りないので2基付けてみた」

(新)

「『スワロー』とよく似てますね」

「うん。どうしてもエンジンパワーが足りないので魔法の発動タイミングを倍に上げてある」


(旧)「でもエンジンは2基になっているから細かいところが変わってますね」

(新)「でもエンジンまわりが少し変わってますね」


 スワローもエンジン2基でした……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 81-27 2人で…… 更新ありがとうございます。 [気になる点] すごい勢いで、色々吸収していきますね。 [一言] 次回の更新も、楽しみにしております。
[良い点] ルビーナちゃんとゴウくんの共同作業は1+1以上の成果を上げたわけですね。 ホ「オレたちは1+1で200だ。10倍だぞ10倍…すんません、ちょっと撮影止めてもらっていいですか?早よ突っ込めや…
[気になる点] マッハになると圧縮断熱で熱くなるのかな?
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