81-27 2人で……
3月8日。
朝食後、仁はエルザ、ゴウ、ルビーナらと話し合っていた。
メルツェはイェニーとアマンダ、それに専用自動人形のララと連れだち、3人と1体で一緒に買い物に出掛けている。
「まずはルビーナたちの『ナイルⅦ』を見せてもらって、それから俺の『スイフト』を見せようか」
「うん、それでいいわ」
「で、飛ばすのは蓬莱島でいいな」
このメンバーでなら全く問題はない。
蓬莱島は既に昼過ぎ。快晴だと老君から連絡が入っている。
誰も異議を唱えなかったのでそのまま転移門を使って蓬莱島へ。
『ナイルⅦ』と操縦装置は礼子が運んでくれた。
「やっぱりこっちは暖かいわね」
今日のロイザートは少し冷え込んだので、亜熱帯の蓬莱島にくるとほっとする、とルビーナ。
ゴウはもっと寒い『ノルド連邦』にいたので寒さには強い。暑がりだが。
「さて、あれが『スイフト』だ」
「わあ!」
「『スワロー』とよく似てますね」
「うん。どうしてもエンジンパワーが足りないので魔法の発動タイミングを倍に上げてある」
「なるほど……。合計したパワーが同じくらいなら、同じ機体で同じ性能が出せるわけですからね」
「そういうことになるな」
「ねえジン様、飛ばして見せて!」
「え? 先に『ナイルⅦ』じゃないのか?」
「う……そう、だけど」
「決めたことは守ろうな?」
「う……はい」
甘やかせてばかりもいられないと、仁は少し厳しい態度をとった。
ルビーナもそこはきちんと聞き分けてくれたのである。
* * *
「操縦装置は同じにしたわ」
「わかりました。大丈夫です」
『ナイルⅦ』の操縦装置は『ナイルⅥ』と共通、つまりコクピット型である。専用の認証キーを差し込むことでⅥとⅦを切り替えることができるようになっていた。
今回もテスト飛行は身体のサイズの関係で礼子が行うことになる。
「では、スタートします」
気負うことなく、礼子は『ナイルⅦ』を発進させた。大きさも形状も『ナイルⅥ』とほぼ同じ機体だ。
それに関しては仁の『スワロー』と『スイフト』も似たりよったりである。
「うーん、やっぱり滑走距離が長いな?」
「うん。ジン様が言うとおり、パワーが落ちたからね」
それでも1メートル級の模型が20メートルの滑走で離陸するというのは十分に優秀である。
そして、速度や運動性も、仁から見て十分合格レベルだった。
「短時間でよくやったな、2人とも」
仁が褒めるとルビーナは照れた。
「ええ、ええと、ゴウが半分以上やってくれたのよ。Ⅵと同じにしてもいいところとしないほうがいいところ、とかいって」
「そうか。ゴウ、うまくやったな」
「え、あ、ありがとうございます」
ゴウもまた照れる。
そのうちに礼子の操縦で『ナイルⅦ』は着陸した。
「よし、チェックをして異常がなかったら次へ行こう」
「はーい!」
元気よく返事をしたルビーナは機体に駆け寄り、チェックを開始。
少しだけ遅れてゴウも機体のチェックを始めた。
「礼子、操縦してみてどうだった?」
「はい、お父さま。改良を加えたのか、『ナイルⅥ』より格段に操縦しやすいですね。これはエンジンの違いだけではないと思います」
同じような型に見えて、いろいろ工夫されているはずです、と礼子は言った。
「そうか。あの2人が組んでモノづくりをするというのは意外といいのかもな」
「ん、そう思う」
「エルザもそう思うか」
「うん」
研究所で昼食の用意をしてくれていたエルザだったが、仕込みが終わったらしく、仁のそばにやってきていた。
「2人いれば、『魔法工学師』並み……とは言わないけど、1+1以上のモノを作る、と思う」
「なるほどな」
自由な発想を得意とするルビーナと、堅実で慎重なゴウ。
うまくお互いの長所を活かしあえば、大きな業績を挙げられるかもしれない、と仁は思った。
そんな思いはルビーナの声で破られる。
「ジン様ー、機体に異常はありませんでした!」
「……お、そうか。それじゃあ、俺にも見せてくれ」
「はい!」
2人がチェックを終えた『ナイルⅦ』を、今度は仁がチェックを行っていく。
「うん……? ……ルビーナ、ゴウ、ちょっといいか?」
「何?」
「何ですか?」
「ここを見てみろ」
仁は『ナイルⅦ』のノーズコーン先端部を指差した。
「あっ……少し歪んでる」
「おそらく何かがぶつかったんだろうな」
それが小さな虫でも、超高速でぶつかれば相当な衝撃となる。
「ほんの僅かだが、ここの強度が足りなかったようだな」
「ですね……うう、反省しなきゃ」
がっくりと肩を落とすゴウ。
ルビーナも悔しそうだ。
「気が付かなかったわ……! 主翼とエンジン周りばかりに気を取られていて……」
「そういうものさ。まだ2人とも経験不足だ。これからこれから」
ただし、模型といえども強度は確認すべきだ、と付け加える。
「とくにこいつはエンジンの発熱がないんだから、焼鈍材じゃなく加工硬化させた軽銀だって使えるからな」
「あ、そうか……」
熱による強度低下の懸念があった『ナイルⅥ』と違い、こちらはそうではないわけで、同じように作るにしても材質は見直すことができたのである。
その辺が2人とも若いがゆえの経験不足といえた。
「失敗を恐れるな。失敗からはたくさんのことを学べるんだから」
「はい、ジン様」
「はい!」
「これからも頑張れ」
そして、いよいよ仁の機体をお披露目することになる。
* * *
「これが『スイフト』だ」
「わあ……やっぱり『スワロー』に似ているわね」
「でもエンジンまわりが少し変わってますね」
仁は、まずは2人に自由に見させることにした。
ゴウもルビーナも、なかなかいい着眼点を持って観察している。
「あ、熱対策がほとんどされていない」
「基本的に発熱しないエンジンだからよね」
「ノーズコーンは丈夫にできてるなあ」
「表面がものすごく滑らかね。これも抵抗を減らすためね」
「精度がすごくいいなあ」
「軽量化すべきところと強度を必要とするところ、はっきりわかるわね」
自分で作り、それを飛ばし、また他人の作ったモノを見て……それら全てを経験として蓄積していってくれるといいな、と願う仁であった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210925 修正
(旧)
「『スワロー』とよく似てますね。こっちはエンジンが2基ですが」
「うん。どうしてもエンジンパワーが足りないので2基付けてみた」
(新)
「『スワロー』とよく似てますね」
「うん。どうしてもエンジンパワーが足りないので魔法の発動タイミングを倍に上げてある」
(旧)「でもエンジンは2基になっているから細かいところが変わってますね」
(新)「でもエンジンまわりが少し変わってますね」
スワローもエンジン2基でした……




