81-26 ダブる
仁の『新型マギロケットエンジン』のテストは順調であった。
爆発を使った『マギロケットエンジン』には瞬発力は及ばないものの、最大で10G程度の加速度を得ることができたのである。
「やはり『発生基』がない分、効率がいいんだなあ」
だいたい、ゴウとルビーナが作ったものよりも20パーセントくらい効率がいい、と仁は感じ取っていた。
「それでも、向こうの設計で十分なんだけどな」
彼らが作ったエンジンは最大で7〜8Gくらいの加速度が得られそうだと仁は見当をつけていた。
人間が乗ることを考えたらそれだけあれば十分である。
さらに、『爆発』ではないので、振動が少ない。
爆発の場合は衝撃波が音速を超えてしまうので、力が発生している時間が極端に短く、0.2秒間隔でも振動が残っているが、こちらはほとんど感じられない。
「やっぱり風属性魔法の方が扱いやすいか……」
発熱、脈動など、特性的には火属性魔法より風属性魔法の方が扱いやすいことを仁は再認識していた。
熱対策をほとんどしなくていいというだけでも、設計の幅が広がる。
「俺は俺で蓬莱島用のモノを開発するが、向こうはゴウとルビーナに任せるとしよう」
ひとりごちた仁は、『新型マギロケットエンジン』……『風属性マギロケットエンジン(仮称)』の量産試作に取り掛かる。
構造が簡単なため、エンジン自体は15分でできあがる。
これを『スワロー』と同型機に積んで試験を行うことにした。
テストパイロットは今回もスカイ1。
「頼むぞ」
「お任せください」
『火属性マギロケットエンジン(仮称)』よりも数段扱いやすくなっているはずと、仁は安心してテストを飛行を見守る。
「スタートします」
スカイ1はそう宣言すると、エンジンを始動した。
暖機運転をする必要のない『風属性ロケットエンジン(仮称)』はすぐに始動し、機体はするすると滑走を始めた。
「よしよし」
仁の見立てでは、5Gから6Gくらいの加速度である。
およそ200メートルで離陸。30度くらいの角度でぐんぐん上昇していく。
「まずまずだな」
機体とエンジンの確認をして1回目の試験飛行は終了だ。
「どうだった?」
「はい、『スワロー』に比べ、加速は劣りますがエンジンが扱いやすいですね」
「やっぱりな」
『火属性マギロケットエンジン(仮称)』は元々がミサイル用と思われるものだったので、人が乗る航空機には向かないのかもしれない、と仁は思い始めている。
それでも、ここ一番の瞬発力は魅力的だ。
もっともそれも、『力場発生器』を使えば済む話なのだが。
「まあいい。チェックをして、2度めのテスト飛行だ」
* * *
エンジンを置き換えただけ、といってもいいような試作機なので、すべての項目は問題なくクリアできた。
ただ、いくらか異なる項目もある。
まずは最高速度。
『風除けの結界』を使った場合はマッハ3、これは同じだが、使わなかった場合だ。
爆発に比べ瞬発力に欠ける……というか、衝撃波を生じることはないため、音速を超えるのは難しいようで、大気中では時速1000キロ弱……マッハ0.8ほどが限界であった。
次は水中での試験。
『潜れる』機能はあるが、元々そういう使い方は想定されていないため、『スワロー』と同じく、『水中航行可能』というチェックだけ行って終了。
その際に気が付いたこととして、炎を噴射しないので、水が熱せられず、いくらか航跡がおとなしめであった(『スワロー』の航跡は水が部分的に沸騰し、泡立っていた)。
そして宇宙空間での試験。
これも『真空中でも飛べる』というだけで、宇宙における活動は考慮されていないため、参考試験となる。
『スワロー』と比べ、加速が劣るので、宇宙空間に出るまで時間が掛かったが、それ以外は問題なし。
とはいえ、有害な宇宙線や紫外線を防ぐのは障壁のみなので、『ペガサス2』のように仁が乗って気軽に宇宙へ……というわけにはいかない。
それらの試験を全てクリアし、試験機が戻ってきたのは、仁がロイザート時間に合わせた夕食を食べ終わった頃だった。
* * *
夕食後、仁はテストデータを検証する。
「やっぱり加速値は半分くらいか」
そこが一番気になる点ではあった。
疑似とはいえ、爆発に比べてパワーが弱いのは致し方ない、と仁は割り切っている。
その分、魔力素の消費は少ないので、より一般向けかもしれない、と思っていた。
「魔力素の消費が少ない分、魔法の発動間隔を倍にするかな……」
エンジンの強度的には十分すぎる余裕があるので、この案を実行することは可能だ。
そうすれば、理論上は『スワロー』と同じ出力となり、同等の性能を得られる……かもしれないと考えた。最高速は無理かもしれないが。
「そうすると、名前は変えた方がいいな……どうするか」
考えた末、こちらは『アマツバメ』=『スイフト』とした。
試作機はそのまま『スイフト』(無印)として、一般公開用とするのは『スワロー』と同じ。
「まあ、それは明日にしよう」
仁は一旦、エルザやゴウ、ルビーナたちのいるロイザートへと戻ったのである。
蓬莱島は真夜中だが、ロイザート時間では夜である。
頻繁に行き来する場合、『眠る』場所での時間に生活を合わせるのが身体への負担が少ないからだ。
* * *
「ジン兄、おかえりなさい」
「ただいま」
今現在の活動の拠点はロイザートなので『ただいま』である。
「あ、ジン様、おかえりなさい」
「おかえりなさい、ジン様」
「『ナイルⅦ』はどうした?」
「大成功!」
「満足するものができました。ジン様もなにか作っていたんでしょう?」
「そうだな。まあ、メルツェも呼んで、座ってゆっくり話そう」
「はい」
居間に皆を集め、仁は何をやっていたか説明した。
「ジン様も飛行機を……」
「さすがです!」
「『スイフト』ですか……」
ここでルビーナがおずおずと発言。
「あの、ジン様」
「なんだ?」
「言おうかどうしようかと迷ったんだけど……以前、レースをした際にロードトス様がテーパー翼の『スワロー』という機体を作ったことを覚えてる?」
「え? ……あ……」
ルビーナに言われて仁は思い出した。
あの時、ルビーナは『ナイル』……多分1号機……、仁は『ゼロ』、マリッカは『イーグル』という名前の機体で参加したことを。
「ダブったか……」
すでに100機製造の指示も出した後なので、あとでロードトスに一言断りを入れよう、と思った仁であった。
その夜はそれでお開きとし、いろいろやるのはまた翌日、ということになったのである。
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本日9月23日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
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20210923 修正
(誤)彼らが作ったエンジンは最大で7〜8Gくらいの加速度が得られそうだと仁は検討をつけていた。
(正)彼らが作ったエンジンは最大で7〜8Gくらいの加速度が得られそうだと仁は見当をつけていた。
20210925 修正
(旧)
「魔力素の消費が少ない分、エンジンを2基積むかな……」
(新)
「魔力素の消費が少ない分、魔法の発動間隔を倍にするかな……」
エンジンの強度的には十分すぎる余裕があるので、この案を実行することは可能だ。




