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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
81 新技術開発篇
3087/4347

81-28 2人の機体

 チェックの後、仁は『スイフト』を飛ばしてみせた。

 今回のパイロットも『スカイ1』である。


「うわあ、軽快ですね。見ていてもわかります」

「ああ。強化した部材を使ったから、その分重量を軽くすることができたしな」

「ああ、そういうことよね。軽くするといいことが多いわ」

「その分安定が悪くなったり、強風に弱くなったりするけどな」

「それは別途対策できるでしょう?」

「うん、そのとおりだ」


 飛行の様子は老君が『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で追い、大型の魔導投影窓(マジックスクリーン)に映し出してくれているのでよくわかる。

 それを見ながら仁は、ゴウとルビーナに実践講座を行っているのであった。


 そして、この2人のデビューをどう演出しようか、とも考えていたのである。


*   *   *


「勉強になりました!」

「ジン様、ありがとう!」


 『スイフト』の飛行を見せた後、仁たちはロイザートへ戻った。そろそろメルツェたちが戻ってくる頃だからである。


 居間で話をしながらお茶を飲む。


「さて、そろそろ2人も、人が乗れる機体を作ってみてもいい頃だな」

「え? そ、そうでしょうか?」

「ゴーレムじゃなくて……人?」

「そうだ。安全に十分気を配って設計する必要があるが、基本は一緒だ」


 その機体をレポートと共に『アヴァロン』でお披露目するつもりの仁なのであった。


「安全性……」

「そうだ、安全性だ。……自分が乗ることを考えて……いや、自分の家族が乗ることを考えて設計するんだ」

「家族……なるほど」

「だからジン様の作る乗り物は過剰な装備が多いのね……」


 ゴウは考え込み、ルビーナは何か得心がいったような顔をした。


「…………俺の場合は、強度や安全係数もそうだが、緊急用の脱出を考えているな。……武装は……今回2人が作る機体は考えなくていい」


 仁の設計思想の1つは『こんなこともあろうかと』の『こんなこと』に可能な限り対処できるように、である。

 過剰ともいえる武装はそのためだ。

 が、そのせいで一般公開できないものがほとんどなのである。

 常識を遥かに超える数多あまたの作品たち。

 それは一部の限られた者しか知らない……。


 だが仁は、ゴウとルビーナには、そんな七面倒臭い技術者にはなってほしくなかった。

 それで、早い時期から一般へのお披露目を行い、なじませようとしていたのである。


「普通の人間が操縦できるように、という前提で必要なものは何だ?」


 そのため、こうした質問をし、考えさせようとしているのだ。


「操作性?」

「加速度?」

「うん、1つ2つじゃないはずだ。どんどん挙げてみよう」


 人数は少ないがブレーンストーミングの手法である。


「堅牢性」

「安全性」


 重要なのは、多少ピント外れであってもそれを否定しないことである。まずはどんどん意見を出させることだ。


「思いつくままに出してみよう」


「通信」

障壁(バリア)?」

「視界」

「着陸のしやすさ?」

「価格やコスト」

「滑走距離の短さ」

「空中での接触事故回避」


「いいぞいいぞ。もうないか?」


「……探知?」

「えーと、夜間飛行のしやすさ」

「脱出装置は?」

「低速安定性」

「失速しにくさ」

「空調!」

「呼吸も」

「バードストライク対策があった」

「補助機能」


 等、等、等、意見がたくさん出たのであった。


 盛り上がっていたのだが……。


「ただいま戻りました」


 買い物に出掛けていたメルツェ、イェニー、アマンダらが帰ってきたので、ブレーンストーミングは一旦終了だ。

 なお、出た意見は全て礼子が記憶してくれているので問題はない。


「メルちゃん、おばあちゃん、イェニーさん、おかえりなさい」


 ルビーナが出迎えた。


 荷物は衣類らしく、かさ張っているが重くはない。

 もっとも、自動人形(オートマタ)のララが全部持ってくれていたが。

 大半はメルツェ用の春物の服のようで、それらはクローゼットにしまわれる。


 そして改めて皆でお茶会だ。

 その席で、ルビーナとゴウはメルツェに買い物の様子を尋ねた。


「え、ええと、最初はお洋服の仕立て屋さんへ行って……」


 メルツェも、たどたどしいながら報告を行っていく。

 その様子を見て、もうすっかりこの屋敷に馴染んでいるなと感じて仁は安心した。


「おばあちゃんはどうだったの?」

「そうだねえ、いろいろ見て回って楽しかったよ」

「疲れたんじゃない?」

「そりゃあ少しは疲れたさ。でもまだまだ若いつもりだよ」


 アマンダは今年53歳。

 ローレン大陸に住む人類の平均寿命は100歳に届こうとしている。確かにまだ若いのだろう……。


*   *   *


 その後は、ゴウとルビーナが何をやっていたのか、を掻い摘んで説明。

 そうしたらメルツェは我が事のようにはしゃいだ。


「うわあ、2人が飛行機を作るの? 見てみたいなあ」

「メルちゃんがそう言うのなら頑張って作るわ」

「うん。見るだけじゃなく、乗ってもらいたいよ」


 仁はそんな2人を見て微笑んでいた。


 もちろん任せっきりにするつもりはないが、2人が作る飛行機がどんなものになるか、楽しみな仁である。


 その日はずっと、いろいろ意見を交わしていたゴウとルビーナ。


 翌日から試作機を作るつもりらしい、と、仁は感じ取った。

 そして、必要そうな資材をこっそりとゴウの工房に運んでおいてやる。

 その様子を見たエルザは苦笑しながら、


「なんだかんだ言って、ジン兄は甘い」


 と言ったのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。

     https://ncode.syosetu.com/n5250en/

     お楽しみいただけましたら幸いです。


 20210925 修正

(誤)「バードストライク対策があった

(正)「バードストライク対策があった」

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― 新着の感想 ―
>重要なのは、多少ピント外れであってもそれを否定しないことである。まずはどんどん意見を出させることだ。 >「思いつくままに出してみよう」 よっしゃ!大喜利スタートですね! んー…エンジンから風を吹き出…
[良い点] 81-28 2人の機体 更新ありがとうございます。 [気になる点] まあ、久しぶりに?!見所のある弟子ですからねえ。 [一言] 次回の更新も、楽しみにしております。
[一言] 更新お疲れ様です。 >ローレン大陸に住む人類の平均寿命は100歳に届こうとしている ……この平均寿命は、北方民族(旧魔族)込みで、ですか? 人類単独なら、現在の日本人(=地球人)以上なの…
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