81-22 解析してわかったこと
コンダック主導でのゴーレム解析。
「『魔素変換器』は……お、この型は……ロードトス、見てくれないか」
「わかった。ちょっと見せてくれ。……うむ……これは旧型だ」
つまり、400年前、仁が『ノルド連邦』に『魔法工学師』の技術を持ち込む以前の型、ということになる。
必然的に、400から500年前、という推測が成り立つ。
その頃はシオンいわく『暗黒期』であり、記録がほとんど残っていない時代である。
「つまり、この制御核に当時の情報が見つかれば、大発見ということだな!」
興奮気味のコンダック。
だがロードトスは冷静に、
「制御核の解析は慎重にやろう。事前に動力系を切り離しておいたほうがいいだろう」
と助言を行った。
「そうだな。だがまずは、内容ではなく構成や品質を見てみよう」
そしてまず、使われている魔結晶を調べてみる。
「ふむふむ、高品質な『全属性』の魔結晶を使っているな」
「待て、コンダック」
「どうした?」
「ノルド連邦では全属性の魔結晶はほとんど採れないんだぞ?」
「む、なるほど」
クライン王国から購入しているのが現状である。
「この制御核に使われている魔結晶はどこ産だ?」
「……わからんな……ああ、アトキンス、何かわからないかな?」
『乖離』のアトキンスは地質学者であり、鉱物にも詳しい。
「『分析』……うーむ……これは。ノルド連邦産ではないことは確かですね。ならどこかと言われると、難しいですが……セルロア王国産ではないかと」
「クライン王国や旧レナード王国ではなく?」
「そういうことです。僅かに含まれる不純物で判断したのですがね」
通常、天然の魔結晶は微量の不純物を含む。それはクロムや鉄のような金属だったり、塩化物や硫化物のような化合物だったりする。
そしてこの制御核に含まれる不純物を見て、アトキンスはセルロア王国産であると判断したわけだ。
「セルロア王国か……」
『魔導大戦』時に存在した『ディナール王国』の中枢部が独立した国である。
「……当時はどんな政策をとっていたかわからないが、少なくとも我々に対し好意的な国ではなかっただろうな」
まだ『北方民族』が『魔族』と呼ばれ、忌み嫌われていた時代である。
そんな時代にセルロア王国産の魔結晶を手に入れる方法といえば……。
「盗んだか強奪したか、あるいは盗掘か」
いずれにせよ正当な手段ではないだろうなとロードトスは言い、その場にいる全員が頷いたのである。
もちろん、代理人を立てて購入した可能性もあるが、当時の『北方民族』がそんな迂遠な方法を取るとは思えなかった。
「それでは、制御核の解析を行うとしよう」
「ちょっと待て。直接読み取る気か?」
「そうだが、他に方法があるとでも?」
ロードトスの疑問に対し、コンダックは逆に質問を返してきた。
「あるだろう。他の魔結晶に『複写』を取って、そっちを解析するってやり方が」
「へえ? 初耳だな。それはマリッカ様の指導によるものか?」
「そうだ。……そもそもこれは『2代目魔法工学師』が行った手法だ」
「なるほど、興味深いな。確かにそれなら危険もなさそうだ……だが残念ながら『複写』を取れるような魔結晶の持ち合わせがない」
「心配するな。私が持っている。ちょっと待っていてくれ」
ロードトスはコンダックを引き止めておき、風力式浮揚機に積んである魔結晶を取りに行った。
これは修理用・改造用に常備している素材なのだ。
「これに『複写』してくれ」
「わかった。……『複写』」
『複写』は『知識転写』が情報の深さを選択できるのに対し、まるまる複製するだけの工学魔法である。
その分、扱える技術者が多いという利点がある。
ただし、『複写』だけでは『制御核』を改良するような、一部だけの書き換えはできない。
閑話休題。
コンダックはロードトスから受け取った魔結晶にゴーレムの制御核を『複写』した。
所要時間は10秒ほど。十分に手慣れているといえた。
「こっちを解析しよう」
「わかった」
複製の方を解析すれば、まずは安心である。
そして『読み出し』を行うコンダック。
『読み出し』はゴーレムなどの制御核に与えられた指示を「言語的」に読み取る工学魔法だ。
淡く発光する文字が空間を流れていく。
仁が行うそれよりも発動時間が短いので、何度も『読み出し』を掛け直しながら、コンダックは解析を行っていった。
この『読み出し』の特徴は、同席した他者にも文字が読めること。
そしてアトキンスを除き、この場にいる全員が、程度の差こそあれ工学魔法を修めている。
「なるほど、これは……」
「やはり、古い設計だな」
「時代的にみて、間違いなく『ノルド連邦』が迷走していた時代のものだな」
500年前、仁がまだアルスに召喚されていない時代。
北方民族が魔族として知られ、ローレン大陸の住民と反目しあっていた頃。
「まて、この名前は……?」
「設計者だな。……『諧謔』のフィリシャス? ……聞いたことがないな」
「シオン様に聞いてみればわかるかもしれないぞ」
「そうだな」
さらに解析は進んでいく。
「やはり戦闘用のようだ」
「だが、その時代に戦闘用を作る必然性はないのでは……?」
「用途がわからないな」
「いや、待て。ほら、この部分」
「おっ?」
『福音』のアーキスタとサージェラーが、『読み出し』で読み出された情報の中に、思わぬ内容を見出したのである。
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本日9月19日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
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20210919 修正
(誤)「そういうことです。僅かに含まれる不純物でね判断したのですがね」
(正)「そういうことです。僅かに含まれる不純物で判断したのですがね」




