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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
81 新技術開発篇
3081/4343

81-22 解析してわかったこと

 コンダック主導でのゴーレム解析。


「『魔素変換器(エーテルコンバーター)』は……お、この型は……ロードトス、見てくれないか」

「わかった。ちょっと見せてくれ。……うむ……これは旧型だ」


 つまり、400年前、仁が『ノルド連邦』に『魔法工学師マギクラフト・マイスター』の技術を持ち込む以前の型、ということになる。

 必然的に、400から500年前、という推測が成り立つ。


 その頃はシオンいわく『暗黒期』であり、記録がほとんど残っていない時代である。


「つまり、この制御核(コントロールコア)に当時の情報が見つかれば、大発見ということだな!」


 興奮気味のコンダック。

 だがロードトスは冷静に、


制御核(コントロールコア)の解析は慎重にやろう。事前に動力系を切り離しておいたほうがいいだろう」


 と助言を行った。


「そうだな。だがまずは、内容ではなく構成や品質を見てみよう」


 そしてまず、使われている魔結晶(マギクリスタル)を調べてみる。


「ふむふむ、高品質な『全属性』の魔結晶(マギクリスタル)を使っているな」

「待て、コンダック」

「どうした?」

「ノルド連邦では全属性の魔結晶(マギクリスタル)はほとんど採れないんだぞ?」

「む、なるほど」


 クライン王国から購入しているのが現状である。


「この制御核(コントロールコア)に使われている魔結晶(マギクリスタル)はどこ産だ?」

「……わからんな……ああ、アトキンス、何かわからないかな?」


 『乖離かいり』のアトキンスは地質学者であり、鉱物にも詳しい。


「『分析(アナライズ)』……うーむ……これは。ノルド連邦産ではないことは確かですね。ならどこかと言われると、難しいですが……セルロア王国産ではないかと」

「クライン王国や旧レナード王国ではなく?」

「そういうことです。僅かに含まれる不純物で判断したのですがね」


 通常、天然の魔結晶(マギクリスタル)は微量の不純物を含む。それはクロムや鉄のような金属だったり、塩化物や硫化物のような化合物だったりする。

 そしてこの制御核(コントロールコア)に含まれる不純物を見て、アトキンスはセルロア王国産であると判断したわけだ。


「セルロア王国か……」


 『魔導大戦』時に存在した『ディナール王国』の中枢部が独立した国である。


「……当時はどんな政策をとっていたかわからないが、少なくとも我々に対し好意的な国ではなかっただろうな」


 まだ『北方民族』が『魔族』と呼ばれ、忌み嫌われていた時代である。

 そんな時代にセルロア王国産の魔結晶(マギクリスタル)を手に入れる方法といえば……。


「盗んだか強奪したか、あるいは盗掘か」


 いずれにせよ正当な手段ではないだろうなとロードトスは言い、その場にいる全員が頷いたのである。


 もちろん、代理人を立てて購入した可能性もあるが、当時の『北方民族』がそんな迂遠うえんな方法を取るとは思えなかった。


「それでは、制御核(コントロールコア)の解析を行うとしよう」

「ちょっと待て。直接読み取る気か?」

「そうだが、他に方法があるとでも?」


 ロードトスの疑問に対し、コンダックは逆に質問を返してきた。


「あるだろう。他の魔結晶(マギクリスタル)に『複写(コピー)』を取って、そっちを解析するってやり方が」

「へえ? 初耳だな。それはマリッカ様の指導によるものか?」

「そうだ。……そもそもこれは『2代目魔法工学師マギクラフト・マイスター』が行った手法だ」

「なるほど、興味深いな。確かにそれなら危険もなさそうだ……だが残念ながら『複写(コピー)』を取れるような魔結晶(マギクリスタル)の持ち合わせがない」

「心配するな。私が持っている。ちょっと待っていてくれ」


 ロードトスはコンダックを引き止めておき、風力式浮揚機(ブローフローター)に積んである魔結晶(マギクリスタル)を取りに行った。

 これは修理用・改造用に常備している素材なのだ。


「これに『複写(コピー)』してくれ」

「わかった。……『複写(コピー)』」


 『複写(コピー)』は『知識転写(トランスインフォ)』が情報の深さを選択できるのに対し、まるまる複製するだけの工学魔法である。

 その分、扱える技術者が多いという利点がある。

 ただし、『複写(コピー)』だけでは『制御核(コントロールコア)』を改良するような、一部だけの書き換えはできない。


 閑話休題。

 コンダックはロードトスから受け取った魔結晶(マギクリスタル)にゴーレムの制御核(コントロールコア)を『複写(コピー)』した。

 所要時間は10秒ほど。十分に手慣れているといえた。


「こっちを解析しよう」

「わかった」


 複製の方を解析すれば、まずは安心である。


 そして『読み出し(リード)』を行うコンダック。

 『読み出し(リード)』はゴーレムなどの制御核(コントロールコア)に与えられた指示を「言語的」に読み取る工学魔法だ。

 淡く発光する文字が空間を流れていく。

 仁が行うそれよりも発動時間が短いので、何度も『読み出し(リード)』を掛け直しながら、コンダックは解析を行っていった。

 この『読み出し(リード)』の特徴は、同席した他者にも文字が読めること。

 そしてアトキンスを除き、この場にいる全員が、程度の差こそあれ工学魔法を修めている。


「なるほど、これは……」

「やはり、古い設計だな」

「時代的にみて、間違いなく『ノルド連邦』が迷走していた時代のものだな」


 500年前、仁がまだアルスに召喚されていない時代。

 北方民族が魔族として知られ、ローレン大陸の住民と反目しあっていた頃。


「まて、この名前は……?」

「設計者だな。……『諧謔かいぎゃく』のフィリシャス? ……聞いたことがないな」

「シオン様に聞いてみればわかるかもしれないぞ」

「そうだな」


 さらに解析は進んでいく。


「やはり戦闘用のようだ」

「だが、その時代に戦闘用を作る必然性はないのでは……?」

「用途がわからないな」

「いや、待て。ほら、この部分」

「おっ?」


 『福音ふくいん』のアーキスタとサージェラーが、『読み出し(リード)』で読み出された情報の中に、思わぬ内容を見出したのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日9月19日(日)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20210919 修正

(誤)「そういうことです。僅かに含まれる不純物でね判断したのですがね」

(正)「そういうことです。僅かに含まれる不純物で判断したのですがね」

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― 新着の感想 ―
>「だが、その時代に戦闘用を作る必然性はないのでは……?」 これは『戦闘用』ではなく『銭湯用』です。銭湯の管理をする為に作られたものです。硫化水素は温泉から発生したものですね。つまりここは、洞窟温泉で…
[一言] ふと思った事 かつて鉱山に巨大な生物兵器みたいなのが出てきましたよね そうなると、こいつらもその為なんだろうか? 休日ですが、トラブルが起きると出勤です 昨日も今日も休日に呼び出されました…
[一言] 更新お疲れ様です! >『福音』のアーキスタとサージェラーが、『読み出し』で読み出された情報の中に、思わぬ内容を見出したのである。 【今から100年後に魔法工学師が現れる。そして、我らは救…
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