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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
81 新技術開発篇
3082/4342

81-23 ルビーナの発案

 発見された戦闘用ゴーレムは500年ほど前に作られたものだった。

 その制御核(コントロールコア)には、驚かされる内容が書き込まれていたのである。


 『福音ふくいん』のアーキスタとサージェラーが見つけた、その記述。

 それは、このゴーレムを作った『諧謔かいぎゃく』のフィリシャスが、当時の『北方民族』(=魔族)が、何者かに思考誘導されている可能性がある、と感じていたことだ。


「このフィリシャスという技術者は、『デキソコナイ』の影を薄々感じていた、ということなのだろうか」


 ロードトスが重い声で言った。コンダックもそれに同意する。


「おそらくそういうことなのだろうな。……そして、いつか同胞の助けになればと、この戦闘用ゴーレムを作った、ということか」

「だが、こころざし半ばで倒れ、このゴーレムたちは今日まで日の目を見ることはなかったということなのだろう」

「少し寂しい話だな」

 コンダック、ロードトス、ゼダイスである。

 さらに『傀儡くぐつ』のハルナータが思いつきを口にする。


「時代的に、ロロナ様ならそのフィリシャスという人をご存知なのでは?」

「うん、その可能性は高いな」


 500年前というと、シオンやマリッカが生まれた頃である。つまりロロナは成人していたわけで、フィリシャスの方が年上ではあろうが、同じ時代に生きていた可能性が高いというわけだ。


 フィリシャスに関しては『森羅しんら』の氏族領に戻り次第、シオンやロロナに聞いてみる、ということになった。


「これ以上は、ここではやめておいたほうがいいぞ」


 というロードトスの言葉に、コンダックも頷いた。


「そのようだな……」


 こうして、『シトン川調査』の第1回目は終了したのである。


*   *   *


 少し時間は戻って、『シトン川遺跡(仮称)調査隊』が出発した3月7日。

 仁、ルビーナ、ゴウらは、ロイザートの屋敷で『マギロケットエンジン』の見直しを行っていた。


「ジン様、この『マギロケットエンジン』だけど、この形状にする必要あるかしら?」

「どういうことだ?」

「ええと、推進力の元になるのは『爆発』でしょう?」

「そうだな」

「なら、例えば『お皿』の真後で爆発させても、『お皿』は押し出されると思うのよね」

「なるほど」

「そうすれば、エンジン本体は圧力に耐える構造でなくてもよくなる気がするんだけど」


「でもルビーナ、それだと周囲への影響が凄まじいことになるよ?」

「え?」

「今の構造だと真後ろに噴射されるだけだけど、ルビーナのいう形状だとかなり広い範囲に爆風が広がると思う」

「あ、そうか……」

「そういう点もこれからの課題だな」

風力式浮揚機(ブローフローター)って、安全な乗り物なのねえ……」


 今更ながら、風力式浮揚機(ブローフローター)の利点に気がついたルビーナであった。


「例えば、風力式浮揚機(ブローフローター)の補助推進機に『マギロケットエンジン』を使う、という手はありそうだな」


 大幅な速度アップが見込めそうだが、やはり取り扱い注意、である。


「あの、熱くならないように、ってできないんですか?」


 横で黙って話を聞いていたメルツェが意見を言った。的を射た内容ではある。


「それなんだけど、そういう魔法がないんだよ」

「ないんですか……」

「作ればいいんだろうけど、それじゃあ一般向けにならないと思って」

「つ、作れるんですか?」


 魔法を作れると平然と言ってのけた仁に、メルツェは少し引いている。


「まあほいほい新しい魔法を作れはしないが、作れるか作れないかと言われたなら作れるよ」

「そ、そうなんですか……」

「ジン様だもんねえ」

「ジン様ですしねえ」


 ルビーナとゴウはもう馴染んでしまっていた。


「ジン兄、ちょっと気になることがある」


 ここでエルザが発言。


「なんだい?」

「風属性魔法について、なんだけど」

「うん、聞かせてもらおう」

「火属性魔法が、一時的に魔力素(マナ)を気体に変えているようだけど、風属性魔法もその可能性はない?」

「え?」


 エルザは元々風属性魔法が得意だったな、と仁は昔を懐かしく思い出した。


弾丸(バレット)系とか、ブロウ(一撃)系って、そこにある空気を使っていない気がする」

「な、なるほど……」


 言われてみれば、灯台下暗し的な内容であった。


 そもそも仁は風属性の攻撃魔法は使えない。

 使えるのは、工学魔法にも分類される『(ブリーズ)』『強風(ウインド)』『圧力風(ブロア)』である。

 これらは術者の周囲にある空気を動かす魔法であることは間違いない。

 なにしろ、仁が開発した『魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン)』や『風魔法推進器(ウインドスラスター)』はこれらを応用しているからだ。


「つまり、2種類ある」

「なるほど……」


 先入観は怖いな、と仁は自戒した。


「そうすると、弾丸(バレット)系やブロウ(一撃)系は、魔力素(マナ)が擬似的に空気分子を作り出して撃ち出しているわけか」

「そんな気が、する」

「これはもう、試してみるしかないな」


 仁がそう言えば、ルビーナもゴウも大乗り気。


「やろうやろう、ジン様!」

「ジン様、やってみたいです」

「よし」


*   *   *


 そういうわけで、ゴウの工房で実験を行うことになった。

 仁、礼子、エルザ、ルビーナ、ゴウ、メルツェが参加する。もっともメルツェは見学だが。


「さて、実験方法について、提案はあるかな?」


 仁としては自分の案もあったが、ゴウとルビーナの勉強に最適なので2人に振ったのである。


「ええと、まずは『風の一撃(ウインドブロウ)』を使って、周囲の風の流れを調べたらどうでしょう」

「なるほど。ルビーナは?」

「えーっと、『風の一撃(ウインドブロウ)』と『強風(ウインド)』の比較をしたらどうかしら」

「うんうん、どちらも何かしらわかりそうだな」

「ジン様だったらどうするの?」

「そうだな……」


 ここで仁も自分の考えを披露する。


「真空中で『風の一撃(ウインドブロウ)』を使ってみればいいと思ってる」

「あ、そうか。擬似的な空気分子が使われているなら真空中でも効果があるわけよね」

「さすがジン様ですね。でも真空って……それに術者は?」


 ここでエルザも参加。


物理障壁(ソリッドバリア)を張って内部を真空にすればいい。術者はレーコちゃんにお願いする」

「あ、なるほど」

「さすがエルザ様」

「それでいこう」


 仁は皆の意見を合わせ、実験準備を進めていくのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございま


 20210920 修正

(旧)フィリシャスに関しては『ノルド連邦』に戻り次第、シオンやロロナに聞いてみる、ということになった。

(新)フィリシャスに関しては『森羅しんら』の氏族領に戻り次第、シオンやロロナに聞いてみる、ということになった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「ジン様、この『マギロケットエンジン』だけど、この形状にする必要あるかしら?」 (中略) >「なら、例えば『お皿』の真後で爆発させても、『お皿』は押し出されると思うのよね」 (中略)…
[良い点] まさか一番の過激派から絡繰りに気付く者が現れようとは。 牢「ほら、居るだろう。周囲がテンション上げ上げだと却って冷静になるのが」 混「ああ、確かに。周りに酔っぱらいしかいないと特に、な」 …
[一言] >>当時の『北方民族』(=魔族)が、何者かに思考誘導されている可能性がある、と感じていたことだ。 あれ?この人もしかして結構優秀だった!?諧謔なのに!? >>「このフィリシャスという技術…
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