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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
81 新技術開発篇
3079/4341

81-20 発見、しかし

 一方、少し時間は戻る。

 『森羅しんら』のシオンは、コンダックが戻っていった後、『仲間の腕輪』で仁に連絡を取っていた。


「……というわけなのよ」

『なるほどな。確かに『ノルド連邦』にも当時の施設が残っていてもおかしくないからな』

「ええ」

『だが、それが『魔導大戦』時のものとは限らないぞ』

「どういうこと?」

『例えばラルドゥス関連とか、『魔法連盟』とか』

「あ、そうね」

『『魔導大戦』時のものだとしても、『デキソコナイ』たちのものなのか、あるいは北方民族のものか』

「確かに」

『『始祖(オリジン)』のものという可能性だってある』

「そうよね」

『今のところ、情報がなさすぎるから判断はできないが……ロードトスたちを心配する気持ちはわかるよ。こっちでも手を打っておこう』

「ありがとう、ジン」

『いいさ。今のシオンは大おばあ様であると同時に氏族長夫人なんだから』

「そう言われると照れるわね。……とにかくお願いするわ」

『おう』


 そんなやり取りがあったのである。


*   *   *


「老君、ロードトスたちが調査に行っている周辺を調べて、危険があったら教えてくれ」

『はい、御主人様(マイロード)。承りました』


*   *   *


 そして今、マリッカが設計した汎用ゴーレム2体……製作は弟子……が、謎の施設を調査していた。

 ……老君が仁に報告していない、ということは、まあそういうことである。差し迫った危険はない、ということだ。


 2体が進んだ先にはもう1つ扉があった。

 それはほとんど錆びついておらず、いくらかきしみながらであるが、比較的楽に開けられたのである。

 そして、そこにあったものは……。


〈これは……〉

〈かなり旧型だが、戦闘用ゴーレムだな〉


 10体の戦闘用と思われるゴーレムだった。


〈『魔導大戦』時代のものだろうか?〉

〈おそらくはそうだろう〉


 どうやらここが目的地のようだと、2体は『傀儡くぐつ』のニケリスに連絡を取った。


『おお、よくやった。……だが、途中に硫化水素か……』

〈ここのゴーレムの外装は鋼鉄製のようですから、運んでいくと腐食されてしまいます〉

『確かにな……少し待て。方法を考える』

〈わかりました〉


*   *   *


「うーむ……聞いてのとおりだ、ロードトス。どうする?」

「10体のゴーレムか。是非手に入れたいな。貴重な情報を持っているかもしれないしな」

「確かにそうだな、巧妙な隠し通路や硫化水素の罠の奥……相当な事情があったはずだ。だが、どうやって運び出すつもりだ?」

「そうだなあ……『転移魔法陣』の許可をとって、向こうから転移させるか……あるいは硫化水素を無効化するかだな」

「無効化できるのか?」


 硫化水素H2Sは天然での発生もあるため、幾つかの除去方法がある。

 活性炭で吸着する方法や、アンモニアと反応させ硫化アンモニウムと水にしてしまう方法、消石灰で中和する方法などがある。


「うーん……無効化の方は、すぐにはできそうもないな」

「そうだな」

「そうすると転移魔法陣か。許可は氏族長だったな?」

「そうだ。コンダックに頼むとしよう。ちょうど、頼みたいこともあったしな」


 そういうわけで再びコンダックは『森羅しんら』氏族長の下へ転移したのである。


*   *   *


「なるほど、そういうわけね」


 転移したコンダックはシオンに相談した。

 シオンは長年『世界会議』の構成員を務めていたこともあり、『ノルド連邦』での地位も高く、そうした裁量権をもつ1人である。


「そのゴーレム10体だけ? 他に運び出したいものはないのかしら?」

「ない、ということでした」

「わかりました。許可しましょう」

「ありがとうございます」

「……そうね、簡易型の転移魔法陣をあげましょう」


 シオンは奥の棚に掛かった鍵を開け、巻いた皮紙を取り出した。

 大きさはA1くらい、かなり大きめの紙である。

「2枚1組になっているから、広げて地面に固定するだけで使えるわ。これをお使いなさい」


 コンダックはそれを押しいただく。


「あ、ありがとうございます、シオン様!」

「10体を送り出した後は廃棄してちょうだいね」

「そのように伝えます。それから、地質……岩石・鉱物に詳しい者を1名、派遣してほしいそうです」

「わかったわ。……コンダック、一旦それを持って転移し、もう一度戻ってこられるかしら?」

「大丈夫です」

「そう。それなら、まずは転移魔法陣を届けてちょうだい。その間にこちらも人を呼んでおくわ」

「はい、わかりました」


 コンダックは転移魔法陣を受け取って大急ぎで転移し、ロードトスたちのところへ戻った。


「許可が下りました」

「おお、やったな」

「その上、このようなものまで頂いてきました」


 コンダックは転移魔法陣の描かれた皮紙をロードトスに差し出した。


「おお、これはいい」


 皮紙に魔法処理がなされているので、硫化水素にも侵されることはない。


 そこで、『傀儡くぐつ』のニケリスは2体の汎用ゴーレムに、1体が戻ってくるよう指示を出す。


〈了解。すぐ戻ります〉


 汎用ゴーレム『1』が戻ってくることになったのである。


*   *   *


 そして少しの休憩の後、コンダックはもう一度シオンの下へ転移する。


「来たわね。……石に詳しい者を呼んでおいたわ。もう来るでしょう。待っている間、お茶でもどうかしら」

「いただきます」


 シオンに淹れてもらったお茶を飲んで待つこと5分。


「シオン様、お呼びでしょうか」


 ロードトスやコンダックよりもう少し年配と思われる男がやって来た。

 灰色の髪、灰色の目をしており、『森羅しんら』や『傀儡くぐつ』の氏族ではなさそうだ。


「ああ、来てくれたわね。……コンダック、紹介するわ。彼は『乖離かいり』のアトキンス。地質学者よ」

「『乖離かいり』のアトキンスです」

「『森羅しんら』のコンダックです」


 2人は握手を交わした。


「それでアトキンス、事情はわかっているわね?」

「はい。呼びに来た使者の方から聞きました」

「そう。そういうわけで、コンダックと一緒にシトン川の廃坑に行ってほしいの」

「わかりました。コンダック君、よろしく頼む」

「はい、お任せください」


 『北方民族』の気性として、面倒なやり取りは好まない、というものがある。

 アトキンスも同じで、コンダックとともに即現地へと向かったのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210917 修正

(誤)「そういうこと?」

(正)「どういうこと?」

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― 新着の感想 ―
[一言] >『北方民族』の気性として、面倒なやり取りは好まない、というものがある。 そんなだから、穏健派が意見翻してディナール侵略に賛同しても深く追求しなかったのですね……。 一方、少し時間は戻る…
[一言] >面倒なやり取りは好まない 真面目に考えるなら、当然かもしれませんね 北方は慣れてても寒い そんな中、外でのんびりおしゃべりする文化が育つとは到底思えない 外で行う作業も多いだろうし、そうな…
[一言] >>というわけ 老「詳細はこちらに」つマギクリスタル 仁「手回しが良いな・・・」 >>危険があったら教えてくれ 仁「片付けてからじゃ無いからな?」 老「・・・」(;・3・)~♪ 礼「何時の…
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