81-16 発見、それは……
『シトン川遺跡(仮称)調査隊』が出発したのは3月7日。
半日の準備で出発である。
こうしたフットワークの軽さは『北方民族』の特徴である。寿命が長いからのんびりしているということはない。
そしてもう1つ。
『森羅』のコンダックは転移魔法を使えるのである。これは大きい。
一緒に転移できる重さはおよそ100キロ、大きさでいえば、自分を中心にした直径2メートルの球体内。転移可能な距離はおよそ1000キロ。
これにより、自分以外に1人を転移で運ぶことができるし、必要な物資や足りないものを補充できる。
なので移動についてはかなり気楽であった。
使ったのはロードトスが新たに作った大型風力式浮揚機。
10人乗りで、イメージとしては『マイクロバス』が近いかもしれない。
「さすがロードトスだ。速いな」
「時速100キロ以上出ているんじゃないか?」
「ああ。120キロだ」
「この大きさでそれはすごい。今日中に着いてしまうな」
『森羅』の氏族領と目的地であるシトン川河口まではおよそ600キロ、5時間で到着できる計算だ。
実際、途中で休憩をはさみながら、一行は6時間半で目的地に到着した。
その日は野営の準備をして終了となる。
準備の大半は、ロードトスが連れてきた少女型自動人形の『桃子』が行ってくれた。
「楽な遠征だなあ」
「そりゃ、これだけ装備があればな」
『傀儡』のハルナータが言い、『森羅』のコンダックが反応する。
今回使っているのは10人乗りの大型風力式浮揚機なので、荷物もたっぷり積め、物資に余裕があるのだ。
なので耐寒装備をたっぷり用意してきたため、野営が楽、というわけである。
大型の天幕は断熱性の高い生地で作られているし、暖房の魔導具は酸素を消費しないので酸欠になりにくい。
柔らかな床敷きと厚手の寝袋があれば、寒い夜も快適に過ごせる。
加えて、食料も十分なので遠征というよりもレジャーでキャンプに来ている気分だ。
「緊急性のない調査行というのはいいものですね」
これまで2度ほど遺跡の調査をしている『福音』のアーキスタはしみじみと言った。
「そういえば、前回の調査ってどうだったんだ?」
ロードトスが尋ね、アーキスタは照れくさそうに答えた。
「それが、見掛け倒しといいますか、中は空っぽでしたよ。……その分、雪虎の群れが住み着いていて苦労しましたけどね」
「雪虎か。退治したのなら毛皮がいい稼ぎになったろう?」
「まあそうも言えますね」
雪虎の毛皮は丈夫で保温性もよく、実用的である上、ローレン大陸に持っていくと、現状ではこちらでの5倍以上の値が付くのである。
可搬式の暖炉を囲んでの談笑。夜は更けていく。
魔獣から守る『障壁発生器』もあるので、就寝中の見張りは『桃子』に任せ、全員ぐっすりと休んだのであった。
* * *
調査が開始されたのは翌朝から。
付近は平原の中に大岩が突き出ているような地形である。
イメージとしては『カルスト』だろうか。
日本で言えば山口県の秋吉台である。
秋吉台は山地ど真ん中と言っていいような場所だが、ここは河口付近であることが異なっているが。
そんな場所を一行は探索していった。
真っ先に目に付いたもの。
それは、古びた扉らしきものが付いた、岩でできた建物のような物であった。
どうやら、天然の露岩を削って作った小さな家のようだ。
「これかな?」
「うむ、聞いていたものと似ているな。規模は思っていたより小さいが」
「ここからどうするかだが」
「私が調べてきます」
立候補したのは『桃子』。ロードトスの自動人形である。
「うむ、それじゃあ頼むか」
「はい」
というわけで『桃子』は古びた扉に手を掛けた。そして……。
桃子が渾身の力を込めると、軋みながら扉が開いていく。
50センチほど開いたところで、桃子は手を止めた。
開口部から中を覗き込む。
「中は……広いですが行き止まりですね」
「えっ!?」
意外な報告に、一同呆気にとられる。
だが、さらなる報告があった。
「テーブルと椅子の残骸があります。それから、奥の壁に何か書かれています」
「読めるかい、桃子?」
「はい。ところどころ崩れていますが……『シ*ン鉱山は採算がと*なくなったために閉山*ました』とあります」
「ふむ……『シトン鉱山は採算がとれなくなったために閉山しました』……か」
どうやらここは鉱山の入り口か何かだったらしい、と一行は察した。
そこで、扉をもう少し開け、全員で中に入ってみると、どうやらここは鉱山の管理室のような場所だったらしい。
テーブルと椅子の残骸は、事務的な仕事をしていた名残りであろう。
「だけどここは鉱山の入り口じゃなさそうだな」
ロードトスが言った。
「ここはあくまでも管理施設で、鉱山は別の所にあったんだろう」
「ですね。まあ、そんなに遠くではないと思いますが」
「探してみますか?」
「そうだな。せっかく来たんだから。それに、何が採れていたのかも知りたいし」
というわけで、付近に鉱山の入り口だった名残りがないか、手分けして探すことにした。
同じ氏族の者同士、2人1組で探していく。
それほど遠くにあるはずがないと思って探していると、30分ほど後に『福音』のアーキスタとサージェラーの2人がそれらしいものを見つけたのである。
「ここじゃないでしょうかね?」
「どれどれ」
「どこだどこだ」
「見つかったのかー?」
アーキスタが声を上げると、付近にいたコンダックとゼダイスがすぐに反応し、次いで少し遠くにいたロードトスとハルナータもやって来た。
そこはドーム状に盛り上がった岩の基部で、明らかに人工的に塞いだ跡が残っていた。
とはいえ、700年という歳月のため半ば砂に埋れ、半ば草が生い茂っていて、余程気をつけていても気が付かないような状態である。
それを見つけられたのは、アーキスタもサージェラーも魔法技術者で、『地下探索』が使えたからに他ならない。
「どうする? 入り口の土や岩をどけてみるか?」
「ここまできたら、やらない手はないだろう」
全員一致で、旧鉱山を調べてみることに決まったのである。
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