80-39 集合
「さて、貴重なお話を伺えたのはよかったが、それはそれとして」
最高管理官トマックス・バートマンが場を切り替えるようにして言った。
「アーノルト殿は『魔導大戦』について、これまでに欠けていた情報をお持ちのようだ。そこで臨時講師として『魔導大戦』の話を講義してもらう、というような話でいいのですな?」
「はい」
ここで仁が口を出す。
「そういうことでしたら、この機会に『北方民族』の方々にも協力していただいて、テキストにまとめたらどうでしょうか」
「なるほど、それはいいですな」
「エレナさえよければ、この後『ノルド連邦』へ飛んで、現地で話をまとめるのもいいかなと思うんだけど」
「ええ、構いませんわ」
「よし」
ここまで来たら思い立ったが吉日と、いっそのこと関係者全員を集めてデータをまとめてしまえ、と思った仁である。
そこで、礼子に頼んで老君からヴィヴィアンとグースへ連絡を入れてもらい、とりあえず蓬莱島に集合、と伝えてもらうことにした。
同時に、マリッカと『長老』にも声を掛けておいてもらう。
この際なので、少しでも当時の情報を持っている者を集められるだけ集めてしまおうと決めた仁であった。
* * *
「それじゃあ、まとめが終わったらまた来ますので」
「ジン殿、よろしくお願いしますぞ」
エイラやカチェアたちに会わずに発つのは少々気が引けたが、そこはフィフィさん……フィオネ・フィアスに言付けを頼んでおいた。
そして『ハリケーン』は『アヴァロン』を飛び立ったのである。
一路『ノルド連邦』を目指す。
「そうしたら、アンやロル、レファにも声を掛けておこうかな」
彼女らもまた、『魔導大戦』時に作られた自動人形なので、なにがしかの情報は持っているはずであった。
そうした僅かな情報でもいいから集めてしまおう、というわけである。
今のところ、候補者としては……。
アーノルト、チェル、アン、ロル、レファ、エレナ、『長老』、『森羅』のシオン、マリッカ、ロロナ、そしてヴィヴィアンとグースである。
さすがの『北方民族』にも、『魔導大戦』当時のことを知っている者はもういないので、伝え聞いていると思われるシオン、マリッカ、ロロナを候補に挙げたわけだ。
ロロナは『仁ファミリー』ではないが、シオンの実の母であるし、付き合いも長いので、招待客として蓬莱島に招いてもいいと思っている。
「あとはどうだろうなあ……」
時代を知っているという可能性であれば、各地に散らばる『始祖』の魔導頭脳も何かしら知っているかもしれないが、基本的に人類の営みには無関心なので、情報を得られるかどうかは怪しいものだ。
そこで、それは『魔素通信機』を利用し老君に情報収集してもらうことにした。
そこまでの準備をしつつ、『ハリケーン』は『ノルド連邦』を目指したのである。
* * *
『ハリケーン』は『森羅』氏族の飛行場に着陸した。
「ジン、この前ぶりね」
「やあ、シオン」
微笑みながら仁たちを出迎えたのはシオン。
「ええと、聞いていると思うけど……」
「ええ、母さまも呼んであるわ。すぐに発つの?」
「時間は有効に、かな」
「わかったわ」
そういうわけでシオンは一旦家に戻り、身支度を整えたロロナとともに出てきたのである。
「ジンさん、4日ぶりね」
「ロロナさんもお変わりなく」
「まあ、4日じゃね」
そんな軽い挨拶を交わし、2人を乗せた『ハリケーン』は空へと飛び上がった。
そのまま南を目指す。
「そういえば、黙って出てきてよかったのか?」
と仁が問えば、
「今更ね。ジンと出掛けるなら誰も文句は言わないわよ。あと、ちゃんと『魔導大戦の詳細な歴史的記録を作る』という話はしてあるし」
「それならいいんだ。それじゃあ、蓬莱島へ行こう」
「ええ」
ということで、『ハリケーン』の転移門を使い、蓬莱島へと移動する一行。
アーノルトとチェルは既に『仲間の腕輪』を持っているので問題なく。
ロロナはシオンと手を繋いでの転移になる。
もちろん、『しんかい』経由で蓬莱島へ。
ロロナは今回が初めてなので、
「ようこそ、蓬莱島へ」
と、いつものセリフをのたまう仁であった。
* * *
「初めて来ましたが、素敵なところですね」
マリッカと『長老』、それにヴィヴィアンがまだ到着していなかったので、仁は研究所の前庭でシオン、ロロナとティータイムにしていた。
給仕は礼子が努めてくれている。
ちなみに、アーノルトとチェルは、老子の案内で研究所内を見学中だ。
「夕焼けが綺麗ね」
「そうね、母さま」
朝からあちらこちらへと飛び回っていたので、蓬莱島はもう夕暮れが迫りつつある。
暮れなずむ空を見上げながらのお茶の時間は、ロロナにとって至福のひとときだったようだ。
何しろ3月になったばかりでは、『ノルド連邦』はまだ大半が雪に閉ざされており、外気温が氷点下の日が続いているのだから。
さすがに北回帰線上にある蓬莱島でも風が冷たく感じるようになった頃、
『御主人様、皆さんお揃いです』
との知らせが老君から入った。
「お、そうか。シオン、ロロナさん、中へ入りましょう」
「ええ」
向かうのは食堂兼会議室だ。
「え……」
仁たちを待っていたのは『仁ファミリー』ほぼ全員だった。
ロイザートにいるはずのエルザもいる。例外はロードトスとリュドミラであるが、既に顔を合わせている。
仁がどうしたのかと聞くと、『新メンバーに挨拶だけでもと思って』という答えが返ってきたのである。
「アーノルトさん、チェルさん、これからよろしくね」
「アーノルト、チェル、よろしくな」
「アーノルトさん、チェルさん、よろしく!」
「あ、こちらこそ」
「……よろしくお願いします」
とにかく、そういうわけでアーノルトとチェルは、期せずして『仁ファミリー』全員との対面をしたのであった。
* * *
ひととおりの挨拶が済むと、エルザ、ハンナ、ラインハルト、ベルチェ、ルイス、ビーナ、マーサ、ミーネ、リシア、サキ、マルシア、ロドリゴ、トア、ステアリーナ、ミロウィーナらはそれぞれの持ち場へと帰っていった。
残ったのはヴィヴィアンとグース。
つまり、仁、ヴィヴィアン、グース、アーノルト、シオン、ロロナ、マリッカ、『長老』ターレスの8人と、礼子、アン、ロル、レファ、チェル、エレナの6体が食堂に残ったわけだ。
この8人と6体、それに老君とで『魔導大戦』の真実をまとめることになる。
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本日8月22日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
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20210822 修正
(誤)「それならいんんだ。それじゃあ、蓬莱島へ行こう」
(正)「それならいいんだ。それじゃあ、蓬莱島へ行こう」
(誤)
つまり、仁、礼子、アーノルト、チェル、エレナ、シオン、ロロナ、マリッカ、『長老』ターレスの9人が食堂に残ったわけだ。
(正)
つまり、仁、礼子、ヴィヴィアン、グース、アーノルト、チェル、エレナ、シオン、ロロナ、マリッカ、『長老』ターレスの11人が食堂に残ったわけだ。
(誤)この9人で『魔導大戦』の真実をまとめることになる。
(正)この11人で『魔導大戦』の真実をまとめることになる。
(旧)アーノルト、チェル、アン、ロル、レファ、『長老』、『森羅』のシオン、マリッカ、ロロナ、そしてヴィヴィアンである。
(新)アーノルト、チェル、アン、ロル、レファ、エレナ、『長老』、『森羅』のシオン、マリッカ、ロロナ、そしてヴィヴィアンとグースである。
20210823 修正
(旧)
つまり、仁、礼子、ヴィヴィアン、グース、アーノルト、チェル、エレナ、シオン、ロロナ、マリッカ、『長老』ターレスの11人が食堂に残ったわけだ。
この11人で『魔導大戦』の真実をまとめることになる。
(新)
つまり、仁、ヴィヴィアン、グース、アーノルト、シオン、ロロナ、マリッカ、『長老』ターレスの8人と、礼子、アン、ロル、レファ、チェル、エレナの6体が食堂に残ったわけだ。
この8人と6体、それに老君とで『魔導大戦』の真実をまとめることになる。




