80-36 ようこそ・・・
ひととおり『島基地』の説明を終えると、国王ボザールは難しい顔になった。
「ふむう……なかなか扱いの難しい基地のようだな……確かに、ジン殿の言うように『アヴァロン』に管理を任せるのが得策か……」
「そうですね、陛下。ただ、任せる期間を区切って、状況が変わらなければ更新するのはどうでしょうか」
「おお、それはよい」
『島基地』に頼らなければいけないような事態……今の所はそれがどういう事態かはわからないが……になったなら、管理をセルロア王国に戻してもらう、ということになる。
「陛下、期間は1年とし、毎年契約を更新する、でよろしいでしょうか」
宰相が提案する。
「いいだろう。『アヴァロン』との交渉は宰相に任せる」
「承りました」
「ついてはジン殿、『アヴァロン』に行くことがあったら、この件のフォローを頼みたい」
「わかりました」
そうした話がまとまり、この日の打ち合わせは終了した。
* * *
この夜も王城に泊まっている仁たち。
泊まり慣れてきた貴賓室で、仁は寛いでいる。
「……ユミィとヴェラを譲ってもらえてよかった」
「調査の対価ですけどね」
「正直、こっちにも興味があるし、情報の価値は計り知れないから、お金や資材よりユミィとヴェラの方がずっといいしな」
仁が直したので仁を主人として認識している、という説明をしたらあっさりと譲ってくれた国王ボザールであった。
もっとも、持ち主のいない(=主人不在の)『拾得物』という扱いをするなら、仁に半分くらいは所有権がある、ともいえるわけだが。
仁としては素材をもらう以上に、こうした報酬の方がありがたいのだった。
「さて、明日以降はどうしようかな」
独りごちる仁。
「アーノルトを『アヴァロン』へ連れて行くのがいいか、『懐古党』本部へ連れて行くのがいいか、あるいは蓬莱島か……」
「お父さま、今後のことを考えたら、蓬莱島がいいと思います」
「やっぱりそうかな」
「はい。お父さまはもうアーノルトさんを『ファミリー』に加えることに決めてらっしゃいますよね?」
「うん」
「でしたら、転移門や転送機などの説明は早めに済ませておいたほうがよろしいかと思います」
「それもそうだな」
礼子に背中を押され、仁は翌日、アーノルトを蓬莱島へ連れて行って『仁ファミリー』に紹介することにしたのである。
『アヴァロン』へはその後、である。
「あ、その場合、セルロア王国に提出する報告書はどうするかな」
「老君に相談すれば、適当な記録を作ってくれますよ」
「そうだよな」
こうして、翌日は『アヴァロン』へ行く前にまず蓬莱島へ行き、アーノルトを『仁ファミリー』に迎える、ということに決めた仁であった。
* * *
月が変わり、3月1日となった。
午前8時、仁たちは国王ボザール、宰相ダインらに見送られ、王城を発とうとしていた。
「それでは、お世話になりました。『アヴァロン』への連絡はお任せください」
「うむ、ジン殿、頼んだ」
仁がアーノルトを連れて『アヴァロン』へ行くと話したら、とりあえずセルロア王国としては『島基地』の管理を任せたい、という意向があることを伝えておいてほしい、と頼まれたのだった。
また、宰相がまとめたごく簡単な資料も預かった。
その後、日を改めて宰相ダインが正式な詳しい交渉を行い、契約を締結する、という流れになるわけだ。
昨日のうちに『アヴァロン』にはセルロア王国から連絡してもらってある。
『ハリケーン』は早春の空に浮かび上がった。そしてエゲレア王国の南、エリアス王国西の海上を目指す。そこに『アヴァロン』があるからだ。
セルロア王国首都エサイアとの時差は僅かなので、気にする必要はない。
時速200キロ弱で飛んでいく『ハリケーン』。距離は350キロほどなので、およそ2時間後に『アヴァロン』到着……と傍目からは見えるはずだ。
だが。
「アーノルト、チェル、俺の最後の秘密を打ち明けようと思う」
「ジン?」
「ジン様?」
「目的地に着くまで2時間くらいあるから、その間に俺の拠点に案内しよう」
「え?」
「まあ、疑問はもっともだが、時間が惜しい。まずは付いてきてくれ」
仁は『ハリケーン』内にある転移門室へアーノルトとチェルを招き入れた。
「これは……小型の転移門だね。ジンは、転移魔法陣だけじゃなく、これも持っていたのか!」
「そういうことだな。2人とも、礼子の手を握ってくれ。礼子、頼む。……よし、行こう」
仁が所有する転移門は、基本的に仁の魔力パターンでしか起動しない。
しかし仁が作った自動人形、ゴーレムは、仁の魔力パターンを持っているので問題なく転移門を使えるわけだ。
そして身体的接触があれば、他人も転移門を利用できるのだ。
「……ここは?」
『ハリケーン』の転移門から移動した先は『しんかい』の中。
「ここは『しんかい』っていう中間基地なんだ。万が一、敵に利用された場合でも、ここで食い止められるようにな」
「なるほど」
「用心深いのですね」
「まあな。で、こっちからもう一度転移する」
* * *
そして仁、礼子、アーノルト、チェルは蓬莱島地下の転移門室に出現した。
「さあ、こっちだ」
仁が先に立って案内する。
階段を上り、一旦研究所の外へ。
そして。
「ようこそ、蓬莱島へ」
いつものセリフを口にする仁である。
「蓬莱島?」
「……太陽の位置が随分変わりました。ここはかなり東にあるのですね?」
チェルは冷静に状況分析をしていた。
「そう。ここは、エサイアとは3時間40分ほどの時差がある」
「なるほどな」
『ようこそ、アーノルトさん、チェルさん』
「い、今の声は?」
「ここ蓬莱島を統括管理する魔導頭脳、『老君』さ」
そしてそのタイミングで、老子、ソレイユ、ルーナらが。また、ルビー、アメズ、ペリド、アクア、トパズら5色ゴーレムメイドのリーダーが。
ランド1が、マリン1が、スカイ1が。
『職人1』、アン、ロル、レファが……。
蓬莱島の自動人形、ゴーレムたちの主だった者たちが姿を見せたのである。
「こ、これはすごい……」
「アンさん……それに、他の青髪の自動人形も……」
驚くアーノルトとチェルに、仁は順に紹介していくのであった。
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本日8月19日(木)は14:00に
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